文字のサイズを変更できます:小さい文字サイズ|標準の文字サイズ|大きい文字サイズ 最終更新日:2019年12月26日
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#関東雪結晶 プロジェクト
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雲のこと
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顕著現象の報道発表一覧
顕著な大気現象が発生した際に速報的に解析を行い,報道発表をしています.
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〒305-0052
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気象庁気象研究所
台風・災害気象研究部
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南岸低気圧に伴う雪研究

 近年,南岸低気圧の通過に伴って非雪国である関東甲信地方などで発生した大雪災害が社会的に注目されています.2014年2月には記録的な大雪が2度発生し,特に2月14〜15日には観測史上の最深積雪を大幅に超える積雪深が各地で観測されました.これに伴い,関東甲信地方の各地で雪崩や雪の重みによる建物被害,交通障害,人身事故が多発しました.
 南岸低気圧による降水・降雪予測,これに伴う気象・雪氷災害予測は,山間部だけでなく都市部を含めて社会的影響が非常に大きく極めて重要ですが,多岐に渡る要因が複雑に関係しており,実態把握やメカニズムの理解,高精度予測,適切な災害対策が求められています.
 ここでは,荒木@気象研台風二研が現在取り組んでいる南岸低気圧に伴う雪研究,これまでに開催した研究会や各種講演情報,関連する成果等の情報を載せています.

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2014年2月15日の衛星SuomiNPPによる可視画像.

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2014年2月15日8時過ぎの埼玉県深谷市.荒木(2014)より.

現在取り組んでいる研究課題

これまでの研究課題

開催した研究集会

気象研究ノート「南岸低気圧による大雪」

 気象研究ノート「南岸低気圧による大雪」が日本気象学会より2019年12月27日に発刊されました.239号「I:概観」では先行研究のレビューや南岸低気圧による大雪に関わる基礎的な事項,大雪の気候学的特徴など,240号「II:マルチスケールの要因」では大気循環場,総観・メソ,雲・降水過程に注目した研究,241号「III:雪氷災害と予測可能性」では積雪物理や雪氷災害,予測可能性の研究,今後の展望について紹介しています.
 目次などの詳細は気象研究ノート「南岸低気圧による大雪」のページをご覧ください.

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報道発表

受賞

  • 日本雪氷学会 関東・中部・西日本支部 論文賞受賞(2017年度)

     公益社団法人 日本雪氷学会 関東・中部・西日本支部より,2017年度論文賞を受賞しました(2018年5月17日).受賞論文は「荒木健太郎, 2018: 低気圧に伴う那須大雪時の表層雪崩発生に関わる降雪特性. 雪氷, 80, 131-147」です.
     この賞は,雪氷学における研究ならびに技術開発に寄与し,今後さらなる発展が見込める論文の主著者である若手研究者に対する顕彰です.

    選定理由(日本雪氷学会より):
     2017 年 3 月 27 日に南岸低気圧に伴う大雪により栃木県那須町の山岳域で表層雪崩による災害が発生した。一般に表層雪崩の発生要因としての短時間大雪の重要性が指摘されているが、南岸低気圧に伴う関東甲信地方の山岳域での短時間大雪については解析例が少なく理解が不足していた。そこで本論文では、本表層雪崩の事例について、短時間大雪の発生メカニズムについて事例解析を行うとともに、那須における短時間大雪の際の気象場や降雪の特性について統計解析を行った。
     その結果、南岸低気圧に伴う雲からの雪が地形性上昇流で発生した下層雲に作用し(Seeder-Feeder メカニズム)、局地的に短時間大雪をもたらしていたことを高分解能数値シミュレーションにより明らかにした。また、那須で大雪となる気圧配置は西高東低の冬型が 63%、低気圧が 30%であり、いずれも日降雪時間が長いほど日降雪深が大きいことを示した。さらに、低気圧による降雪の場合には例外的に短時間で大雪になることがあり、これらの事例の多くは閉塞段階の低気圧が関東付近を通過していた際に起こっていたことを明らかにした。
     本論文での事例解析では、気象庁アメダス、国土交通省水文水質データベース、気象庁の一般レーダーによる全国合成レーダー、地上気象観測、高層気象観測、地上天気図、メソ客観解析といったさまざまなデータの解析ならびに気象庁非静力学モデルを用いた数値実験が行われており、多角的な視点から短時間大雪の事例が客観的かつ詳細に分析されている。また、数値実験の結果より、地形の影響は山岳域での降雪種にも影響を及ぼし、弱層形成の要因となりうるという点まで踏み込んで考察が行われている。
     これらの成果は観測例の少ない太平洋側の山岳域での短時間大雪のメカニズムを理解する上で非常に有用であり、雪崩防災へも大きく貢献するものである。さらに、本論文の主著者は雪氷学分野の若手研究者として積極的に学術雑誌への投稿を行っている。
     以上の理由により、荒木健太郎氏を、論文賞の受賞候補者に選定した。

  • 日本雪氷学会 関東・中部・西日本支部 活動賞受賞(2016年度)

     公益社団法人 日本雪氷学会 関東・中部・西日本支部より,2016年度活動賞を受賞しました(2017年5月15日).授賞理由は「市民科学による雪結晶観測を通した雪氷知識普及の功績」です.
     この賞は,雪氷学の幅広い発展と知見において,雪氷研究の教育・普及活動に顕著な貢献を行った会員の活動に対して与えられるものです.

    選定理由(日本雪氷学会より):
     荒木会員は2016年度から気象研究所「#関東雪結晶 プロジェクト」を立ち上げ,関東甲信の市民を対象に降雪時の雪結晶の写真を募集し,首都圏の降雪現象の実態解明に関する研究を行っている.本プロジェクトにおいて荒木会員はスマートフォンを用いたごく簡易な雪結晶の観測手法を確立し,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通した観測協力の呼びかけ等により多数の市民が雪結晶観測に参加している.特に,2016年11月24日の関東降雪事例では5,100枚以上の雪結晶画像が集まり,世界で初めての市民参加による超高密度広域雪結晶観測が行われた.本プロジェクトの話題は新聞やTV,ラジオ,科学雑誌やwebニュース等の多くのメディアに取り上げられ,これにより雪結晶に関する知識や簡易観測手法が非常に多くの国民に広く普及された.さらに,荒木会員は2016年12月10日に関東・中部・西日本支部主催のシンポジウム「関東の大雪に備える」の企画・運営で中心的役割を果たし,雪結晶を中心とした雪氷学の知識普及を行った.荒木会員は2017年2月11日の北信越支部との共催の積雪観測&雪結晶観察講習会でも講師を行い,この他にも多くの一般向け講演や著書,SNSでの情報発信で雪氷知識普及を行っている.これらの雪氷学に関する教育・普及活動は顕著であり,活動賞に値するため選定した.

講演資料

論文等の成果

関連情報