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雲の微物理過程の研究

 雲はとても身近な存在であり,みなさんも馴染み深いものだと思います.雲は天気を左右するだけではなく,気象災害を引き起こす原因となったり,気候変動にも大きな影響を与えていることがわかっています.しかし,実のところ,雲には未解明な部分が多く残されています.特に,雲の中で起こっている微物理過程には不確実性が多分にあります.

 一般的に「雲をつかむ」という言葉は,物事が漠然としていてとらえどころがないとか,非現実的という意味で使われます.これは,「雲」が「漠然としたもの」であって,実際に「つかむことができない」と認識されているためです.しかし,現代の気象学では,そんな雲の謎を解き明かし,まさに「雲をつかもう」としているのです(荒木,2014).天気予報の精度向上に限らず,気象災害を引き起こす顕著気象や地球温暖化の高精度予測のためには,雲の中で何が起こっているのかを理解し,「雲をつかむ」ことが非常に重要です.ここでは,雲の中で起こっていることに着目し,人類がこれから「雲をつかむ」ためには何が必要かについて議論をします.

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雲の中で起こっている微物理過程

 雲は,小さな水や氷の粒子が集まって形成されています.これらの粒子が太陽光を散乱し,可視化されたものを私たちは雲として認識しています.雲は時として組織化し,数百kmの雲システムや,さらに大きい台風などを作ります.しかし,ひとつひとつの雲のなかを覗いてみると,そこでは数多くの雲粒子たちのドラマが繰り広げられているのです(第1図).

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第1図 雲・降水の微物理過程の概念図.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 雲を0℃よりも気温の高い層と低い層でわけて考えると,それぞれ液体の雲粒子による「暖かい雲」と固体の雲粒子を含む「冷たい雲」と呼ぶことができます.上空ほど気温は下がりますので,0℃高度よりも上の雲を冷たい雲と呼ぶことにします.

 まず,暖かい雲に着目すると,液体の雲粒(くもつぶ・うんりゅう)が生まれるとき,気体の水である水蒸気が液体の水になります.小さな雲粒は周囲の水蒸気を取り込んで成長し(凝結成長),大きくなります.雲粒の大きさは,だいたい半径0.001〜0.01 mmです.人間の髪の毛の代表的な半径は0.05 mmですので,雲粒はその5分の1程度の大きさであると考えてください(第2図).雲粒の落下速度は1秒あたり1 cm程度ですが,大気中にはそれを超える上昇流がいたるところに存在しているため,雲粒は落下できず雲は空に浮かんでいるのです.雲粒が凝結成長で大きくなって,その重さで落下できるようになると,落下速度の異なる他の雲粒と衝突・併合して成長し,雨粒となります.雨粒の代表的な大きさは半径約1 mmで,シャープペンシルの芯(半径0.25 mm)の約4倍の大きさです.ある程度大きくなった雨粒は空気抵抗を受けるため,おまんじゅうのように潰れた形になります(第3図).よく水滴をモチーフにした頭の尖ったキャラクターがいますが,あのような形の雨粒は雲の中には物理的に存在しません.成長し過ぎて大きくなり過ぎた雨粒は,空気抵抗に耐えられなくなって分裂します.このように,くっついたり離れたりを何度も繰り返して地上に落下したものが私たちの見ている雨なのです.

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第2図 典型的な雲粒と雨粒の大きさ.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.
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第3図 落下する水滴.井上創介さん提供.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 一方,冷たい雲の中を見てみると,雲粒子同士のやりとりはよりいっそう複雑になります.通常,水は0℃で凍りますが,雲の中には0℃よりも気温の低い高さに多くの液体の雲粒が存在していることが観測事実からわかっています.冷凍庫の製氷皿などでは,製氷皿に接しているところから安定した氷の結晶構造を形成することができるため,0℃くらいで水は固体になることができます.しかし,雲の中では水滴は他に接しているものがないため,なかなか凍ることができません.このような水滴は過冷却雲粒と呼ばれ,マイナス20℃の雲の中でも多く観測されています.

 これらの過冷却雲粒は雲の中の上昇流でマイナス約40℃の環境に達すると,水滴の中に安定した結晶構造を作ることができるようになり,氷の粒子(氷晶)が発生します.過冷却雲粒が凍結するのではなく,水蒸気から直接発生する氷晶もあります.この氷晶も水滴と同様に,周囲の水蒸気を取り込みながら大きく成長していきます(昇華成長).氷晶が大きくなって落下するようになると,過冷却雲粒とぶつかります.すると,過冷却水滴はぶつかったとたんに氷晶の表面で凍結します.このようにして氷晶が成長することを雲粒捕捉成長と呼んでいます.雲粒捕捉成長で成長した氷粒子は雲粒付結晶と呼ばれ,回転して落下しながら雲粒捕捉成長を続けると丸い形になります(第4図).このような粒子のうち,直径5 mm未満のものは霰(あられ),それより大きくなると雹(ひょう)と呼ばれます.

 過冷却雲粒の少ない,もしくは存在しない環境で氷晶が昇華成長を続けると,成長した結晶同士が併合した雪片(せっぺん)が形成されます(第5図).これがいわゆるぼたん雪です.併合成長で大きくなった雪片は,直径が数cmから10 cmに及ぶこともあります.水滴の衝突併合成長と同様に,氷晶の併合成長でも氷晶同士の落下速度が異なることが重要です.樹枝状の結晶,雲粒付結晶,その他の組み合わせで雪片は作られやすいという特徴があります.

 これらの様々な氷粒子が落下しながら0℃高度よりも下で融解したものが雨になります.日本の降水の大部分はこのような冷たい雲のプロセスが関わっていると考えられています.一方,地上付近の気温が低い場合,氷粒子は融解せずに落下して地上に達します.これが私たちの知っている雪なのです.

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第4図 雲粒付結晶.石坂雅昭さん提供.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.
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第5図 雪片.石坂雅昭さん提供.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 また,雲が上空にいくつかの層にわかれて存在している場合,上空から落下した粒子がその下にある層の粒子と作用し,地上での降水・降雪が強化されることがあります.暖かい雲の場合は衝突併合成長,冷たい雲の場合は併合成長や雲粒捕捉成長が起こり,雲の中の粒子が効率よく成長できるようになるのです.まるで上空の雲は種をまいていて(シーダー),それより下の雲は種をまかれている(フィーダー)ことから,このようなメカニズムはシーダー・フィーダー効果と呼ばれています.シーダー・フィーダーのメカニズムは,冬季の日本海側での降雪をもたらす地形性の雲や,温帯低気圧の北側の雲などに見られることがわかっています.

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第6図 シーダー・フィーダー効果の概念図.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

雲を通して世界を変える大気中の微粒子:エアロゾル

 ここまで雲粒子が成長するプロセスを見てきましたが,実は雲粒や氷晶が発生するときに大きな役割を果たしているものがあります.それは,エアロゾルと呼ばれる大気中に存在する微粒子です.エアロゾルの種類は多岐に渡っていますが,その発生源で分類すると,ひとつは自動車や工場からの排ガスなど,人間活動によって発生する人為起源エアロゾルがあります.もうひとつは,黄砂などの鉱物粒子・土壌粒子,海から発生する海塩粒子,火山活動によって発生する粒子など,自然界で発生する自然起源エアロゾルです.実は,このエアロゾルが核となって雲の粒子が発生する事がほとんどなのです.このような雲形成のプロセスを核形成と呼んでいます.発生する粒子が液体の雲の場合,そのエアロゾルは雲凝結核と呼ばれ,氷晶の場合は氷晶核と呼ばれています.代表的な雲凝結核としては水溶性の海塩粒子や硫酸塩粒子(第7図),氷晶核としては固体の鉱物粒子や花粉などの生物由来の粒子(第8図)がが知られています.

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第7図 海塩粒子と硫酸塩粒子の電子顕微鏡写真.財前祐二さん提供.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.
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第8図 鉱物粒子(アルミノシリケイト)とスギ花粉粒子の電子顕微鏡写真.左は財前祐二さん,右は岩田歩さん提供荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 ここで,空気の塊であるパーセルくんに,核形成のしくみを説明してもらいます(第9図).まず,水蒸気を満足いくまで摂取したパーセルくんは飽和した状態になります.このとき,パーセルくんの湿度(相対湿度)は100 %です.しかし,エアロゾルが全く存在しない環境では,パーセルくんはかなり大量の水蒸気を含んでも凝結しません.実際,このような環境で不純物を含まない水蒸気から液体の水滴が形成されるのは,湿度が数百%に達したときなのです.しかし,現実にはそのような湿度は観測されません.それは,エアロゾルの存在によって湿度が100 %を少し超えた(過飽和)だけで水滴が発生するからです.雲粒の核として働くエアロゾルが存在している場合,湿度が101 %以下でも雲粒が形成されます.核形成の能力の高いエアロゾルが存在していれば,湿度が100.1 %でも水蒸気が凝結して雲粒が発生します.パーセルくんがおつまみ(エアロゾル)を食べると,すぐに限界を超えて水が溢れてしまうとイメージしてください.

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第9図 核の有無とエアロゾルの核形成能力の違いの概念図.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 エアロゾルが豊富に存在している環境で発生する雲として,航跡雲という雲があります.第10図は,ヨーロッパ沖の低い雲をとらえた気象衛星可視画像です.直線やジグザグした形の雲が多くみられますが,これは海上を進む船から排出されたエアロゾルが雲凝結核として働いて形成された航跡雲です.沖のほうでは雲と雲の間隔がある程度大きいですが,海岸に近い海域では船が多数航海していたため,航跡雲が発達して白く濃い雲が広がっています.このように,雲粒子の核として働くエアロゾルの存在によって,雲の形成プロセスは大きくコントロールされているのです.

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第10図 2003年1月27日,ヨーロッパ沖の下層雲.NASA EOSDISの気象衛星Aquaによる可視画像.
荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.
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第11図 エアロゾルの直接効果と間接効果.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

 エアロゾルによって雲はその性格や人生を大きく変えられてしまいます.これにより,雲が大気に及ぼす影響が変わってきます.このことが,地球温暖化予測においても大きな影響を与えています.エアロゾルが気象を変える効果は,直接効果と間接効果のふたつに分けられます(第11図).人間活動によって排ガスが増えたり,砂漠化が進んで鉱物・土壌粒子が大気中に放出されやすくなるなど,人為起源エアロゾルが増加した場合を考えてみます.直接効果は,エアロゾルが太陽からの放射を直接的に散乱・吸収し,地球上の熱収支を変えることを指します.大気中のエアロゾルが増加すると,地表面に達する太陽からの放射が減少し,地球を寒冷化させる日傘効果があることが知られています.

 一方,間接効果はエアロゾルが核形成を通して雲を変質させ,それによって大気へ影響を及ぼすことを指しています.暖かい雲について考えてみると,雲凝結核として働く大気中のエアロゾルが増加すると,そのぶん発生する雲粒が増えます(第12図).すると,大気中にある水蒸気量が同じであれば,雲凝結核が多い場合には互いに水蒸気を奪い合ってなかなか大きな粒子に成長できなくなります.すると,雲が濃くなって太陽光を反射しやすくなります.このようにエアロゾルが雲の光学特性を変化させることを第一種間接効果と呼んでおり,地球の寒冷化に寄与していると考えられています.また,雲凝結核が増えれば大きさの小さい雲粒同士が衝突併合成長しにくくなるため,降水量は減り,雲は長寿命化します.このようにエアロゾルが雲・降水に及ぼす影響は第二種間接効果と呼ばれており,地球上の水循環に影響を与えています.

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第12図 暖かい雲におけるエアロゾルの間接効果.

 しかし,雲凝結核や氷晶核として働くエアロゾルについて,どのような粒子がどのような核形成能力を持っているか,詳しいことはまだわかっていないことが多くあります.性質の異なるエアロゾルが混合した状態になると,核形成の能力が変わることがあるのです.また,これらのエアロゾルがどのような時空間分布をしているのかについては,まだほとんどわかっていないのが現状です.このようなエアロゾルの間接効果の不確実性が,地球温暖化予測の不確実性にも繋がっています.

日本の大雪にエアロゾルが及ぼす影響

 2014年2月には,関東甲信地方を中心に記録的な大雪が2度発生しました.この大雪により多数の建物被害,交通障害,人身事故等が発生し,社会的に大きな影響がありました.関東甲信地方という非雪国での降雪は,南岸低気圧と呼ばれる日本の南岸を発達しながら通過する温帯低気圧に伴って発生する事が古く知られていますが,その詳細なメカニズムは未だ理解されているわけではありません.そこで,現在,気象研究者と雪氷研究者が協力して関東甲信地方で大雪をもたらす雲をつかもうと研究を進めています(荒木ほか,2015).これらの大雪の概要については,荒木(2014)を参照してください.本講演では,特に関東甲信地方で大雪をもたらした雲のなかでは何が起こっていたのかに着目して,最新の研究結果の一部を紹介します.

 2014年2月の大雪は8〜9日と14〜15日の2度起こりましたが,特に後者の事例では最深積雪が山梨県甲府で114 cm,河口湖で143 cmなど,観測史上の最深積雪を大きく塗り替えるような雪が観測されました.ここでは特にこの事例について取り上げます.太平洋側である関東甲信地方では雪の観測点がそもそも少ないため,国土交通省や自治体,消防などから積雪観測を収集し,前1時間差の積雪深差を降雪量として計算した総降雪量を第13図に示しています.気象庁アメダスに加えて,国土交通省の雨量計によって観測された総降水量もあわせて示しています.この図から,総降雪量の多い地域は山梨県〜東京都や埼玉県の西部,群馬県や栃木県の山沿いの南東斜面にかけて多いことがわかります.一方,総降水量でみると雪の少なかった千葉県などで大きな値と示しており,この事例では関東甲信地方の中で大雪と大雨の地域が隣り合う状況だったことが伺えます.

 大雪の状況をさらに詳しく調べるために,気象庁が現業で天気予報にも用いている気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)による数値実験(数値シミュレーション)を行いました.再現された総降雪量や総降水量を観測結果と比較すると,わずかな違いはありますがよく対応していることがわかります(第13図).

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第13図 2014年2月14日3時〜15日12時に観測された総降雪量(cm:左上),総降水量(mm:右上)と,数値実験によって再現された総降雪量(mm:左下),総降水量(mm:右下).

 数値実験の結果から当時の大気の場を見てみると,南岸低気圧が接近する前に関東甲信地方の南海上で沿岸前線と呼ばれる天気図上に現れない小さなスケールの前線があることがわかりました(第14図;荒木,2015a).この沿岸前線の北側では,地上で北寄りの冷気が張り出していて,沿岸前線を強化していました(Cold-Air Damming;荒木,2015b).大気下層の暖かく湿った空気が南東風に乗って沿岸前線上で持ち上げられ,関東甲信地方に大雪をもたらした降雪雲を形成していたのです.

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第14図 数値実験によって再現された沿岸前線と降雪雲.左は地上気温(℃:塗分け)と海面気圧(hPa:等値線),右は高度2.5 kmにおける降水物質の混合比(g kg-1,重さと考えてよい).矢印はそれぞれの高さにおける水平風を意味する.

 また,降雪期間中は南岸低気圧から広がった高度8〜12 kmの上層の氷の雲と,大気下層の暖かく湿った空気が沿岸前線や山地の南東斜面で強制的に持ち上げられて発生した高度2〜4 kmの下層の氷の雲の二層構造が出来ていました.ここで,前述のシーダー・フィーダー効果による氷粒子の雲粒捕捉成長や併合成長が促進され,山地での降雪量が増えていたことが数値実験結果からわかったのです.

 水のみで出来ている暖かい雲におけるエアロゾルの第二種間接効果についてはある程度議論されていますが,氷晶核が降雪に及ぼす影響についてはほとんどわかっていません.そこで,数値予報モデルの中で,氷晶が発生する割合を0.1倍,10倍にした実験を行い,氷晶核として働くエアロゾルの数が変わった場合に雪をもたらす雲や降雪量にどのような影響があるかを調べました(第15図).

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第15図 雪と雨の総降水量について,氷晶核数を0.1倍にした実験と10倍にした実験結果から氷晶核数を変えなかった実験結果を引いたもの.

 その結果,地域によって違いはありますが,10 mm以上の降水量に相当する降雪量,20 mm以上の降水量の変化が確認されました.これは,氷晶核数の変化によって雪粒子の数が変化し,それが融解して発生する雨の量や消費される水蒸気量の違いによって生じたものでした(Araki and Murakami, 2015).わずか1日半程度の現象に対して,これだけの降水量・降雪量の違いがみられるということは,気候変動などを議論する上で氷晶核の扱いによって結果が大きく変わってくることを示唆しています.

雲をつかむために今後必要な研究

 ここまでの議論を踏まえ,私たち人類が今後さらに雲について理解し,「雲をつかむ」ために必要な研究をまとめたものが第16図です.まず雲の微物理過程の理解をさらに深めるプロセス研究が必要です.このためには,室内実験などを通して,理想的な環境で様々なエアロゾルがどのような状況でどのように核形成をするのかを調べることが求められます.核形成だけではなく,発生した粒子がどのように成長していくかについてもさらなる研究が必要です.また,実際に雲の中でどのようなことが起こっているのか,観測によるアプローチも重要です.これまで航空機・ゾンデ・気象衛星・レーダーなどによる雲・降水粒子の観測が行われてきていますが,それに加えてエアロゾルの時空間分布についても実態把握することも望まれます.プロセス研究によってわかった物理法則を数値予報モデルに組込み,数値計算される雲が実際に観測された雲と整合的かどうかなどを議論していけば,数値予報モデルを高度化することができます.これらが全てできれば,エアロゾル・雲・降水を上手く考慮した高度な予測手法を確立することができ,気候変動予測や気象災害予測の高精度化が期待できます.

 私たち人類は,まだ本当の意味で「雲をつかめている」わけではありません.現状では,人類はまだ小さな子供が空に手を伸ばしている程度なのかもしれません.しかし,私たち人類が地球環境と上手く付き合っていくためには,雲を理解し,高精度な予測をするために進んでいかなくてはなりません.人類が「雲をつかもうとしている話」は,これから先もまだまだ続いていきます.

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第16図 「雲をつかむ」ために今後必要な研究の概念図.荒木(2014)「雲の中では何が起こっているのか」より.

関連情報

2015.07.18「雲の中では何が起こっているのか 雲・降水の微物理過程」荒木健太郎

2015年度名古屋大学地球水循環研究センター公開講演会「ふたたび雲をつかむ話」


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