TOP > 研究成果について > ケーブル式海底地震計の開発

ケーブル式海底地震計の開発

巨大地震の監視に大きな役割を果たしているケーブル式海底地震計は、気象研究所での研究開発により、世界で初めて実用化できるようになりました。

日本付近の大地震の多くは海域で発生するので、海底で地震を観測して地震活動を監視することは重要なことです。まずはブイ方式の海底地震観測が行われるようになりましたが、1回の設置で10日間程度の観測しかできませんでした。そこで、海底ケーブルの先端に地震計類を設置して観測する研究を、米国がカリフォルニア沖で行いましたが、故障が続出して3年で放棄されてしまいました。

このように技術的な困難さが予想されましたが、1973年根室半島沖地震の発生もあり、気象庁はケーブル式海底地震計の開発を行うことを決定し、気象研究所において特別研究「海底地震常時観測システムの開発」を1974年度より開始しました。プロジェクトの遂行では、気象庁の研究会議に東京大学、海上保安庁、日本電電公社等の方々にも参加していただき、この分野の最高の頭脳と技術を結集して研究が進められました。

海底ケーブル1本に複数の地震計と津波計が繋がっている大規模な観測システムは世界でも初めての試みでした。装置の開発で担当者が最も苦労したのは、地震計センサー等のメカニズムでした。耐圧容器内の狭いスペースに高性能のセンサーを納め、設置の際に受けると予想される強い衝撃にも耐えなければなりません。地震計を遠隔操作で水平にし、固定する装置も必要でした。そのために試作や本製作の各段階で厳しい性能試験、衝撃試験、振動試験、電気的試験を数えきれないほど繰り返しました。1978年8月に、大規模地震の発生が懸念され、対策がとられつつあった東海沖に海底ケーブルの敷設を完了し、得られたデータは翌1979年4月から気象庁の地震観測業務に組み入れられました。地震計4点を含むこのシステムは現在でも正常に観測を続けています。

その後、気象庁では同様のケーブル式海底地震計を1985年に房総沖、2008年に御前崎沖から志摩半島沖に設置しました。大学や他の研究所でも他の海域に整備がすすめられました。 2011年東北地方太平洋沖地震による津波被害を受け、東日本太平洋側の日本海溝・千島海溝沿いでは、ケーブル式の地震計・津波計から成る大規模な海底地震津波観測網が防災科学技術研究所により整備されつつあります。気象研究所の成果は、国民の命と財産を守るためのプロジェクトにもつながっています。

参考値:
ルートの最大水深:2200m
ケーブル長:154km


詳しい整備の報告については、技術報告第4巻をご覧ください。

東海沖の海底地形と海底地震常時観測システム

東海沖の海底地形と海底地震常時観測システム


All Rights Reserved, Copyright © 2003, Meteorological Research Institute, Japan