気象研究所研究開発課題評価報告
LETKFを利用した広島の大雨の調査
事前評価
評価年月日:平成29年2月17日(書面開催)
研究期間
平成29年度~平成30年度
事前評価の総合所見
1.研究の動機・背景
(1)現状と問題点
- 平成26年8月の広島豪雨では、線状降水帯により大規模な大雨災害が発生した。平成27年度~28年度の地方共同研究において、広島豪雨や平成18 年に発生した線状降水帯について、いくつかの知見が得られたが、まだ、実況監視項目に結びつく知見を得るまでに至っていない。
(2)研究の必要性、緊急性
- 平成26年8月の広島豪雨では大規模な大雨災害が発生しており、気象台として、広島豪雨や広島県で発生した大雨についての知見を数多く、取りまとめていく必要がある。
(3)研究の目的
- 線状降水帯を含む大雨の発生機構について、データ同化やアンサンブル予報、感度実験の結果から新しい知見を得ること。
- 局所アンサンブル変換カルマンフィルター(LETKF)を用いたデータ同化アンサンブル予報実験や感度実験の結果の解析で得られる「線状降水帯を含む大雨の発生要因とその要因と最も関連性のある気象要素」を整理する。そして、予警報作業時に利用できるよう実況や予想図上の着目点をワークシートなどにまとめ、防災・減災に役立てる。
2.研究の概要
2.1全体の概要
- 広島地方気象台では、広島県の顕著な大雨事例を決定論的な予報を用いて解析を行い、大雨発生に寄与する要因について整理する。また、アンサンブル予報や感度実験などで得られる大雨発生に寄与する情報についても検討を行う。
- 気象研究所では、データ同化実験やダウンスケール実験、感度実験を行い、それらの結果を地方官署に送付し、解析の支援を行う。
3.成果の到達目標
3.1全体の到達目標
- 広島県の顕著な大雨事例(3時間雨量 100ミリ以上)について、アンサンブル予報を用いて解析を行い、大雨発生の判断基準の作成を目指す。
- それらの整理を行い、現業作業にフィードバックするように努める。
4.見込まれる研究成果の施策への活用見込み・学術的な意義
- 研究成果の施策への活用として、本研究で得られる知見や着目点を予報現業に適用し、防災・減災に活かす。具体的には、広島県に発生する大雨の模式図を作成する。
- 学術的な意義として、線状降水帯などの広島県で発生した大雨の発生・維持機構の解明に近づくことができる。
- 地方官署の職員が積極的に大雨事例の解析作業に取り組むことにより、その作業で得られたスキルを、普段の現業作業にも活かせるようになる。
- アンサンブル予報の理解を深め、将来、現業での利用法の検討を行なう。
5.効率的な実施への工夫
- TV 会議システムを利用して気象研究所担当官と研究の進捗状況の連絡を密にとるようにする。
6.研究年次計画
平成29年度
- 研究所から提供を受けた広島県の顕著な大雨事例のLETKF を用いたデータ同化アンサンブル予報実験や感度実験の結果の解析を行う。
- その解析結果から、実況や予想図上の着目点を抽出する。
- 模式図を作成する。
- アンサンブル予報の理解を深め、将来、現業での利用法の検討を行う。
平成30年度
- 研究所から提供を受けた広島県の顕著な大雨事例のLETKF を用いたデータ同化アンサンブル予報実験や感度実験の結果の解析を行う。
- その解析結果から、実況や予想図上の着目点を抽出する。
- 模式図を作成する。
- ワークシートの作成、とりまとめを行う。
- アンサンブル予報の理解を深め、将来、現業での利用法の検討を行う。