TOP > 研究への取り組み > 評価を受けた研究課題 > 気象レーダーを用いた噴煙の汎用的解析手法に関する研究(事前評価)

気象研究所研究開発課題評価報告

気象レーダーを用いた噴煙の汎用的解析手法に関する研究

事前評価

評価年月日:平成29年2月17日(書面開催)

研究期間

平成29年度~平成31年度

事前評価の総合所見

pdfファイル:142KB

1.研究の動機・背景

(1)現状と問題点

現在、気象庁(地方気象台)の火山現業では、噴煙の高さの観測を目視で行っており、曇天時や雨天時など、視程の悪い状況では観測することが出来ない。2014 年の御嶽山噴火や2016 年の阿蘇山噴火などにおいても、現業による噴煙高度の目視観測は出来なかった。

そのような現状の中、気象レーダーを噴煙高度の推定に利用すべく、気象研究所では気象庁地震火山部火山課と共同で、観測部で作成されたレーダー3 次元データの検証を行っているところである。しかし、現状では自動でエコーの高さを計算することは出来ても、気象レーダーによって観測されたエコーが気象現象なのか火山現象なのかの判断については、自動で判別することは出来ず、人の手を介する必要がある。

また、気象研究所では次世代の気象レーダー(MP レーダー・高速スキャンレーダー)を用いた噴煙の即時把握技術の開発を行っており、気象研究所中期計画終了年度である平成30 年度に一度とりまとめを行う計画ではあるが、実用化には更に時間を要すると考えられる。

(2)研究の必要性、緊急性

気象庁では噴煙の高さを移流拡散モデル(JMA-RATM)の初期値(のパラメータ)として利用しているが、噴煙の高さが目視で得られないときは衛星や他のデータを利用する必要がある。気象衛星ひまわりは噴煙高度を得る良い手段であるが、(気象由来の)雲が卓越するような場では、衛星で噴火をはっきりとは確認出来ず、そのようなケースにおいては、気象レーダーにおける解析技術が重要となる。

また、現在は(比較的大きな)噴火イベントが発生した場合、気象研究所において気象レーダーによる解析を行い、噴火予知連絡会への報告等を行っているが、日常的に起こっている規模の噴火事例への対応は特段行っていない。事例の蓄積と言う点からも、汎用的な解析技術が確立されることが望ましい。

悪天時における気象レーダーの解析技術については、今後、重要性を増していくと考えられるが、現時点で地方官署にその技術を求めるのは困難である。気象研究所では、研修などを通じて気象レーダーを用いた火山噴煙の解析について講義することはあるが、一度の授業で教えることには限界があり、継続した指導体制の下、技術を確立していくことが必要である。

(3)研究の目的

本共同研究の目的は、地方官署(現業)における気象レーダー網を用いた汎用的な噴煙解析技術の確立である。また、これらを通じた(まだコミュニティの規模としては小さい)気象レーダーを用いた火山噴煙解析分野の裾野を拡大することである。

2.研究の概要

2.1 全体の概要
  • 平成29~30 年度には、気象研究所による解析方法を使い、桜島などの噴火事例による事例解析などを行う。
  • 平成31 年度には、気象レーダーによる即時的解析手法をとりまとめる。検討の際には、OJT も行う。また、手法の限界についても取りまとめる。

3.成果の到達目標

3.1 全体の到達目標
  • 汎用的な火山噴煙解析手法の確立(ツールの作成)

4.見込まれる研究成果の施策への活用見込み・学術的な意義

  • 気象レーダーによる汎用的な火山噴煙解析ツールを用いることにより、日常的に噴煙解析を行うことが可能になれば、気象庁内の噴煙解析技術の底上げ(スキルアップ)につながる。
  • 気象研究所では、気象レーダーを用いて噴煙高度を高度に推定する手法の開発を行っているが、地方共同研究を行うことで、気象研究所で開発中の手法についても、(現場からの)フィードバックが得られる。
  • 降灰予報の安定的な予測への寄与という意味でも、事例の蓄積は重要である。
  • 火山学会での気象レーダーを用いた解析的研究は、(MP レーダーなどの)最先端の技術を得て、新たにスタートしたところであるが、コミュニティの規模が小さい。本共同研究は、学術的な意味での裾野拡大も目指している。本地方共同研究を経てスキルアップした職員が、(気象レーダーを用いた)次世代の火山監視業務の中心的な役割を担うことを期待している。

5.効率的な実施への工夫

  • 気象研による講習は、可能な限り、重点研究の出張等と併せて実施する。

6.研究年次計画

平成29年度
  • 解析手法の講習(メール等によるサポート)
  • 手法の検討
  • 開発環境の構築
  • 噴火事例の解析
平成30年度
  • 解析手法の講習(メール等によるサポートは随時)
  • 手法の検討
  • 噴火事例の解析
  • OJT
平成31年度
  • 手法の検討
  • OJT
  • 手法のとりまとめ


All Rights Reserved, Copyright © 2003, Meteorological Research Institute, Japan