気象研究所研究開発課題評価報告
積雪変質モデルを用いた積雪層に関する研究
事前評価
研究期間
平成29年度~平成30年度
事前評価の総合所見
1.研究の動機・背景
(1)現状と問題点
なだれ注意報の基準が確立された年代は古く、初めて技術的調査が行われた1980 年代にまで遡る。その後、一部でなだれ注意報の運用改善の取り組みが行われたが、その後は見直しがほとんどなされていない状況となっている。
また、なだれ注意報の発表基準が物理的な根拠に基づいてないとの指摘がある点、隣接府県(予報区)との発表基準の整合性が十分に取れていない点、及び積雪の実況値が入手困難であるという点で、運用に課題が残っている。
(2)研究の必要性、緊急性
なだれ注意報の基準及び運用については、(1)現状と問題点に示した状況・問題がある。一方で雪氷学の分野では、モデルを用いた積雪深や積雪層の構造の解析(予測)に関する研究が進んでいる。最新の積雪変質モデルを用いて積雪層の把握に取り組む研究を行い、なだれ注意報の運用改善の可能性を探ることは、適切な防災気象情報の運用に資するため緊急的に行う必要性がある。
(3)研究の目的
気象研究所で開発された積雪変質モデルを用い、過去の積雪層(時系列)の構造を調査し、積雪層の雪質や安定度から、なだれ注意報の運用の改善を検討することを目的とする。
2.研究の概要
2.1 全体の概要
- なだれ及び積雪層の知識、先行研究の把握・確認。
- 積雪変質モデルの理解及び習熟。
- 積雪変質モデルを用いた、過去の積雪層の資料作成。アメダスデータを用い、積雪変質モデルによる積雪層(雪質、安定度)の把握。積雪実況値との比較。
- 総観場、環境場(気温、降水)の解析。
- なだれ注意報の運用の改善手法を検討。
3.成果の到達目標
3.1 全体の到達目標
現在用いている、なだれ注意報の運用の改善手法を確立することを成果の到達目標とする。
4.見込まれる研究成果の施策への活用見込み・学術的な意義
なだれ注意報の将来的な運用の改善が見込まれる。また、なだれ注意報基準の見直しの方法が高度化される可能性がある点についても、有効な研究成果となる。
5.効率的な実施への工夫
管区イントラにページを開設し、参考資料や検討内容を参加官署で共有すると共に気象研究所の助言・指導を受けながら効率的に実施する。
6.研究年次計画
平成29年度
(1)研究に関わる期初知識の習得
- なだれ及び積雪層の知識を取得する。
- 関連する先行研究内容を習得する。
(2)積雪変質モデルの理解及び習熟
- 積雪変質モデルの内容の理解と利用の習熟を行う。
- モデル結果の可視化について習得・習熟する。
(3)積雪変質モデルを用いた過去の積雪層の資料作成
- 過去の2積雪期について、アメダスデータにより、積雪変質モデルを用いて計算を行い、積雪層の雪質や安定度の把握を行う。
(4)総観場、環境場(気温、降水)の解析
- (3)で計算した、2積雪期について、総観場、環境場の解析を行い、気温場や降水の把握を行う。
(5)なだれ注意報の運用方針改善の検討
- (3)と(4)の資料となだれ注意報発表状況から、なだれ注意報の運用の改善を検討する。
平成30年度
(3)積雪変質モデルを用いた過去の積雪層の資料作成
- 平成29年度に実施した以外の3積雪期について、アメダスデータを用いて、積雪変質モデルを用いた計算を行い、積雪層の雪質や安定度の把握を行う。
(4)総観場、環境場(気温、降水)の解析
- (3)で計算した、3積雪期について、総観場、環境場の解析を行い、気温場や降水の把握を行う。
(5)なだれ注意報の運用方針改善の検討
- 平成29 年度の検討結果を踏まえ、(3)と(4)の資料となだれ注意報発表状況から、なだれ注意報の運用の改善を検討する。
(6)研究成果のまとめ
- 成果報告書(管区発行)の原稿を作成する。
- イントラを活用し、研究結果について台内での知見共有及び管内共有を行う。