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気象研究所研究開発課題評価報告

立山カルデラ新湯周辺の火山活動と水位変動に関する調査

事前評価

評価年月日:平成29年2月17日(書面開催)

研究期間

平成29年度

事前評価の総合所見

pdfファイル:145KB

1.研究の動機・背景

(1)現状と問題点

立山カルデラにある新湯は、爆裂火口の底から熱湯が湧き出している火口湖で、昭和初期から長らく満水状態を保っていたが、2014 年6 月に干上がりが確認されて以来、数日~数ヶ月の周期で満水と干上がりを繰り返すようになった。このようなタイプの間欠泉は大変珍しく、観測された事例がほとんどない。

一方、弥陀ヶ原火山では、近年、地獄谷周辺で熱活動が活発化している。これを受けて、気象庁は2016 年12 月、弥陀ヶ原火山を常時観測火山に追加した。また、火山防災協議会では、今後、ハザードマップや噴火シナリオの作成等が予定されている。しかし、これらに関連して行なわれた観測機器の設置や現地観測・学術調査などは、地獄谷周辺に限られており、弥陀ヶ原火山の一部である立山カルデラ地域については、過去から現在に至るまで、火山学的な調査・観測はほとんど行なわれてこなかった。このため、新湯に関しても、火山活動の履歴はほとんどわかっていないが、1858 年の安政飛越地震の際に、鳴動や煙が上がったという記述、冷水から熱水の池に転じたという記述が残っていることから、火山活動があった可能性が疑われている。

(2)研究の必要性、緊急性

弥陀ヶ原火山は平成28 年12 月1日に常時監視火山となった。しかし、立山カルデラ地域については、観測データの蓄積がほとんどなく、監視に関する知見がほとんどないのが現状である。よって、当該地域の火山活動を調査することは、弥陀ヶ原火山の監視に資するものと考えられる。

間欠泉については、これまで火山噴火と類似した噴出現象や震動現象、地殻変動、周期性が観測されており、火山噴火の天然の実験場として、しばしば研究の対象となっている。このため、新湯の水位変動の調査を行うことは、噴火メカニズムの一端を理解するためのデータを与えてくれることが期待される。

なお、間欠泉は、数年ほどで、噴出を停止してしまうものも多く、早急に観測を行う必要がある。

(3)研究の目的

立山カルデラ地域の現在の火山活動の把握。新湯の水位変動のメカニズム解明。

2.研究の概要

2.1 全体の概要
  • 各種申請書類の提出(~6 月まで)
    特別地域内工作物の新築協議書、国指定天然記念物の現状変更等許可申請書、行政財産使用許可申請書、行政財産使用料減免申請書、有峰林道特別通行許可申請書、有峰材料運搬道路通行許可申請書、入域届、未許可ソフトウェア利用申請書(SAC)
  • 防災科学技術研究所から傾斜計を借用するための手続き(~6 月まで)
  • 水位計購入
  • 機器設置場所事前調査
  • 立山カルデラの火山活動調査・新湯周辺に地震計、傾斜計、水位計を設置し、観測を行なう(10 月末まで、途中データ回収とバッテリー交換のために、数回現地入り)
  • 地震波解析ソフト(SAC)を使用して、地震回数の時間変化や周波数解析を行なう。これにより、地震が水位変動のどのタイミングで静穏化・活発化しているのか、周波数がどのように変化しているのか、地殻の膨張収縮とどのような関係性があるのかを調査する。(1 回目のデータ回収以降)
  • 調査研究原稿作成(12 月上旬締め切り)

    ※なお、地震計は気象研究所の物品を使用する。

3.成果の到達目標

3.1 全体の到達目標
  • 新湯の水位変動の原因解明。
  • 立山カルデラ地域の現在の火山活動の状況把握。

4.見込まれる研究成果の施策への活用見込み・学術的な意義

  • 新湯を含む立山カルデラ周辺の現在の火山活動について基礎資料として活用。
  • ハザードマップや噴火シナリオ作成時の検討材料としての活用。
  • 火山噴火のメカニズム解明。

5.効率的な実施への工夫

新湯は中部山岳国立公園特別地域に位置し、新湯そのものが国指定天然記念物に指定されている。また、新湯を含む立山カルデラ一帯は砂防工事区域となっており、一般の立ち入りが規制されているほか、入域できる期間も、6 月から10 月までと限られている。このことから、観測期間の確保のため、6 月までに申請書類を提出し、許可を受ける必要がある。特に、文化庁の許可は申請から数ヶ月を要する。6 月当初からの観測を踏まえ、各種申請書類については年度当初の提出を計画する。

6.研究年次計画

平成29年度
  • 各種申請書類の提出
    特別地域内工作物の新築協議書、国指定天然記念物の現状変更等許可申請書、行政財産使用許可申請書、行政財産使用料減免申請書、有峰林道特別通行許可申請書、有峰材料運搬道路通行許可申請書、入域届
  • 地震解析ソフト利用申請手続き
  • 傾斜計借用手続き(防災科学技術研究所)
  • 水位計購入
  • 現地事前調査
  • 地震計、傾斜計設置
  • 水位計設置とデータ回収
  • データ回収とバッテリー交換
  • 立山カルデラ地域の噴気地帯調査
  • データ解析及び取りまとめ(1 度目のデータ回収以降)
  • 観測機器撤収(10 月下旬)
  • 調査研究原稿作成(12 月上旬締め切り)


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