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気象研究所研究開発課題評価報告

放射収支の監視システムの高度化と気候変動要因解明に関する研究

中間評価

評価年月日:平成29年2月6日
  • 副課題名1 気候変動(放射収支)・大気環境監視のための観測システムの構築
  • 副課題名2 観測データから放射収支へ影響を与えている要素の評価と変動特性の解明

研究代表者

山崎明宏(気候研究部 第三研究室主任研究官)

研究期間

平成26年度~平成30年度

中間評価の総合所見

pdfファイル:153KB

研究の動機・背景

地球温暖化が顕在化するなか、気候変動の監視と実態把握、気候変動予測の不確実さの軽減が望まれている。「地球観測の推進戦略」(平成16年12月27日、総合科学技術会議)において、推進すべき項目として地球温暖化分野の中のアジア・オセアニア域の包括的な観測で雲・エーロゾルに係わる観測を実施することが述べられている。また、「平成26年度における我が国における地球観測の実施方針」(平成25年7月29日、文部科学省)においても、気候変動メカニズム解明のために放射過程、雲物理・降水過程の解明の必要性が述べられており、衛星等の観測に加えて精密な地上観測の実施が必須である。また、その中で地球観測連携拠点(温暖化分野)の検討を踏まえ、放射収支メカニズム等の解明を進めるために、放射観測の標準化、検定基準の確立の必要性が述べられている。 気候モデルにおける温暖化予測を不確実にしている最大の要因の一つは、放射収支が正確に再現できていないことによる。このため、放射収支に影響を与えるエーロゾルが日射を直接反射・吸収する効果(直接効果)及び雲・氷晶核として働き雲の特性を変え間接的に放射収支に影響を与える効果(間接効果)の実態を監視し、正確に評価できるようにすることが切望されている。

気象庁は現業官署と言うこともあり、地球環境監視業務を長期間継続して実施可能である。気象庁では、地表面放射収支の変化を監視する精密日射放射観測を2010年3月より開始したが、気候変動をひき起こす変化は10年間で1~2W/m2程度と非常に小さく、全日射量の監視だけでは大気要素(エーロゾルや雲)により変動する地表面日射量の変化を捉えることは難しい。大気要素毎の影響は異なる波長分布として現れるため、分光観測と大気要素の同時観測を実施していく必要がある。そのための基盤となる測器の開発、校正技術の確立、解析手法の開発を行う必要がある。また、現状では、放射収支を精度よく再現できている化学輸送モデル、気候モデルはなく、これらの改良のためにも放射及びそれに影響を与える大気要素の精密な観測は検証や同化で使うためのデータとして意義がある。

研究の成果の到達目標

全体目標

日射・放射のエネルギーとスペクトルデータの観測技術の開発、及び、雲・エーロゾルの推定技術の開発を行い、大気放射場の変動とその要因を監視することを可能にする。そして、大気放射場変動の要因を明らかにする。

(副課題1)気候変動(放射収支)・大気環境監視のための観測システムの構築

大気放射収支とその変動要因を監視するために

① 日射・放射観測の高度化と連続観測システムの構築

② 雲・エーロゾルの推定技術の高度化

を実施する。

(副課題2)観測データから放射収支へ影響を与えている要素の評価と変動特性の解明

副課題1で開発された観測システムで得られたデータを元に、大気放射場の季節年々変動とその要因を解明する。

1.研究の現状

(1)進捗状況
(副課題1)気候変動(放射収支)・大気環境監視のための観測システムの構築
  • 全天分光日射計の開発、検定法の改良を進めた。
  • 放射計データからの雲物理量の推定法の開発・改良を行った。
  • 太陽周辺光の分布画像を撮る手法の開発を進めた。
  • EarthCARE搭載ライダーと放射計を使ったエーロゾルの推定アルゴリズムの開発を進め、導出された値から大気放射収支を評価するための解析アルゴリズムの開発を行った。
(副課題2)観測データから放射収支へ影響を与えている要素の評価と変動特性の解明
  • 過去の放射計データ及び光学特性測定データの解析を進め、エーロゾル特性の時空間変動を解析した。
  • スカイラジオメータとライダーデータを解析し、エーロゾルの時空間変動を解析した。
(2)これまで得られた成果の概要
(副課題1)気候変動(放射収支)・大気環境監視のための観測システムの構築
  • 光学特性測定装置の測定値(多波長散乱・吸収係数)を補正し、一次散乱特性を推定する方法を論文にまとめ投稿し、掲載された。散乱係数に対する、角度打ち切り、光源分布のずれの補正を行い、一次散乱アルベド(SSA)が誤差0.002以下で推定できることなどを示した。
  • 上記の方法で得られた体積粒径分布を用いてPM2.5の推定する方法を開発した。値は、系統的に差があるが、相関は高かった(相関係数=0.96)。
  • 開発中の分光日射計について、気体吸収の少ない1225,1627,2200nmで通常のLangley法とNISTランプ、積分球による検定結果の比較を行った。NISTランプではLangley法の値と-1.6, -2.7, -7.1%の差、積分球ではLangley法の値と1.1, -3.4, -4.5%の差を確認した。NISTランプと積分球の測定時のバラツキ、輝度の不安定性を考慮した不確定性は、NISTランプで2.6, 3.4, 7.4%、積分球で4.8, 5.9, 25.8%であった。積分球を使った検定では、分光日射計の感度が低く、不確定性が大きい結果を得た。
  • グレーティング方式の分光放射計による直達・散乱フラックスの観測値を計算するフォーワードモデルを構築した。
  • スカイラジオメータの940nmチャンネルを用いた可降水量の推定方法について論文にまとめ投稿し、掲載された。
  • スカイラジオメータの可視域レンズ交換後、検定定数の経年変化は小さく、新しいレンズは以前のレンズに比べ劣化が大きくないことを確認した。
  • スカイラジオメータの波長1225nm干渉フィルター(半値全幅10nm)の透過率測定を行った結果、ブロッキングに問題があり波長675nm程度まで透過していることが判明した。このままでは1225nm測定に問題があるため、干渉フィルターの交換を実施し、新しい干渉フィルターを使った連続観測を開始した。
  • スカイラジオメータによる日射の多波長・輝度分布観測から、エーロゾル組成の構成情報を推定する手法を開発した。硫酸塩、水溶性、黒色炭素、ダスト、海塩の構成比を推定したが、黒色炭素を過大評価する傾向が見られた。水溶性と黒色炭素の内分混合や、ダストの非球形性等、より現実的なエーロゾルの状態を考慮する必要性が示された。
  • リモートセンシングに最善な水溶性と黒色炭素の内部混合粒子について、気象衛星観測システム研究部、環境・応用気象研究部の協力を得ながら調査を行った。その結果をもとに球状の内部混合の計算コード、データベースを構築した。さらに、非球形粒子のデータベースの作成を進めている。
  • スカイラジオメータとライダーの地上観測から、粒子の非球形性を考慮しながらエーロゾルの光学特性の鉛直分布を推定する手法を開発し、論文にまとめ投稿し、掲載された。
  • 北海道滝川市で行ってきたグライダーによるエーロゾルの鉛直分布観測の結果を比較材料にすることで、スカイラジオメータとライダーの地上観測からエーロゾルの鉛直分布を推定する手法を改良した。
  • エーロゾルの全球3次元分布の観測を目的として、2018年度打ち上げ予定のEarthCARE衛星に搭載される高波長分解能ライダーと多波長イメージャーの観測から、エーロゾルの組成(水溶性、黒色炭素、ダスト、海塩)の鉛直分布を推定するアルゴリズムを開発した。そして、海上、陸上を想定した数値実験を行った結果、良好な推定結果を得ることが出来た。
  • EarthCARE衛星用に開発した上記アルゴリズムをCALIOP、MODIS用に修正し、アフリカのバイオマスバーニング、中東のダストの事例でテストした。結果は、良好で、それぞれの特徴をよく表すエーロゾル組成が得られた。
  • スカイラジオメータの観測から、エーロゾル、オゾン全量、可降水量を同時に推定する手法を開発した。また、スカイラジオメータの観測から、雲の光学特性を推定する手法を開発した。
  • 地上設置及び衛星搭載の放射計データからの雲物理量の推定法改良の一環として、地上測器や衛星観測の品質向上に必要となる雲スクリーニング手法の改良のため、機械学習による多変量解析手法を応用したアルゴリズムを開発した。また、アルゴリズムを実際の衛星データ(MODIS)に適用して雲スクリーニング出力結果を検証し、妥当な精度が得られることを確認した。なお、雲スクリーニング手法の開発は、ひまわり8/9号の雲種識別プロダクト改良作業の一環として、衛星センターと共同で実施している。
  • 日射の輝度分布を測定するための全天カメラとその解析手法を開発した。
  • ダイナミックレンジ120dBのloglinear出力のカメラによる太陽周辺光の分布画像撮影試験を実施した。その結果、linear出力だけの設定で周辺光を太陽の中心から約1度~10度角度のところで測定できることを確認した。
  • 2018年度打ち上げ予定のEarthCARE衛星に搭載される高波長分解能ライダーと多波長イメージャーによるエーロゾル観測を利用した大気環境監視のため、同衛星搭載のセンサーを複合利用した放射量推定プログラムを作成した。特に今年度は、大量の衛星観測及び衛星輝度シミュレーションのデータを効率的に取り扱えるようにするためのプログラム部分を引き続き開発・改良した。
(副課題2)観測データから放射収支へ影響を与えている要素の評価と変動特性の解明
  • 副課題1で開発した方法をつくばの2002年~2013年のデータに適用し、エーロゾル一次散乱特性のトレンドと気候値について論文にまとめ投稿し、掲載された。多くのエーロゾル光学特性が有意なトレンドがあることが示された。消散係数、吸収係数は減少、SSAは増加傾向にあること(大気中のエーロゾルが減り、吸収性エーロゾルの割合が減少)、吸収係数のオングストローム指数が増加傾向にある(吸収性エーロゾルのうちFresh BCが減り、植物燃焼起源や二次生成有機エーロゾルの割合が相対的に増加)ことなどが示された。
  • 北京と福岡で測定した光学特性データ(多波長散乱・吸収係数)のデータから一次散乱特性を推定し、両観測点の比較を行った。消散・散乱・吸収係数は、平均値で福岡が北京の約5分の1くらいである。SSAは、両地点とも0.8~0.95であった。吸収係数のオングストローム指数が両地点とも明瞭な季節変化をしているが、北京の値がやや小さい。また、夏季に1より小さい値が頻繁に観測された。粗大粒子の割合は、北京では1年を通して多かった。
  • 消散係数及び吸収係数のオングストローム指数(Alph_ext、Alph_abs)は、それぞれエアロゾルの粒径分布及び吸収成分に関係している。これらとSSA、複素屈折率の虚数部(ImRF)の関係を福岡と北京のデータを使って調べた。Alph_absとAlph_extには、正の相関があった。すなわち、Alph_absが小さいとき大きな粒子を多く含むことを意味する。Alph_absとImRFの関係は、Alph_absが小さいとき、ImRFは小さく、Alph_absが大きいときはImRFが大きい傾向があった。また、波長依存はAlph_extに依存していた。
  • エーロゾル測定データを消散係数(Cext)で大雑把に分け、SSA、Alph_ext、Alph_absの関係を調べた。Cextが大きいほど、SSAが大きい(吸収の割合が少ない)傾向があるが、それぞれのCextの大きさに対して、Alph_extが大、Alph_absが小、または、Alph_extが小、Alph_absが大のとき、SSAが大きくなる。前者は黄砂粒子に、後者は二次生成粒子に対応していると思われる。Alph_extを固定して見てみると中程度のAlph_absでSSAが最小値なり、最小値を示すAlph_absはAlph_extとともに大きくなる結果を得た。
  • スカイラジオメータ(気象研)とライダー(環境研)の過去2年分のデータから、エーロゾル光学特性の鉛直分布の季節変動を導出した。年間を通して、境界層内でエーロゾル消散係数のピークが見られた。春季には、黄砂やロシアの森林火災起源のエーロゾルの移流にともなって、自由大気において消散係数のピークが見られた。これにより、境界層内のエーロゾルと区別して、黄砂や森林火災起源のエーロゾルの光学特性を得ることが出来た。
  • 1976~2008年のエーロゾル光学特性の変動を入力とした一次元大気境界層モデルを用いて、エーロゾルが大気境界層へもたらす影響について、地表面状態が異なる場合に関して感度実験を行った。土壌が湿っている場合は、エーロゾルの長期変動は、日最大気温の増加傾向を作るが、土壌が乾燥している場合は、日最大気温を減少させる傾向を作った。日最低気温、平均気温に関しては、どちらの場合も、増加傾向をもたらした。エーロゾルが放射過程を通して大気境界層へ与える影響は、地表面の状態にも依存する可能性が示された。
  • 2012~2013年のスカイラジオメータ(気象研)とライダー(環境研)のデータから解析したエーロゾル光学特性の鉛直分布を使って、エーロゾルによる大気の加熱率を導出した。さらに、これらを入力値とし、大気境界層モデルを用いた感度実験を行った結果、エーロゾルの鉛直分布が大気境界層の構造へ影響を与えることが分かった。
  • マウナロア観測所で検定したスカイラジオメータの基準器と観測点(福岡、宮古島、南鳥島)設置スカイラジオメータ及び気象庁環境気象大気混濁度観測業務で石垣島に設置したスカイラジオメータの比較検定観測を行い、検定定数を転写することで観測精度を維持した。
  • 平成27年度末に気象庁環境気象大気混濁度観測業務において石垣島で開始したスカイラジオメータ観測の観測技術とデータ解析の技術協力と、ハワイ島マウナロア観測所での検定観測に関わる技術指導を行った。
  • 過去の放射計データ及び光学特性測定データの整備を行っている。
  • スカイラジオメータとライダーの複合解析によるデータ解析を進めている。
(3)当初計画からの変更点(研究手法の変更点等)

なし

(4)成果の他の研究への波及状況

他省庁予算

  • 地球一括計上(地球環境保全試験研究費)「分光日射観測とデータ同化によるエーロゾル・雲の地表面放射収支に与える影響監視に関する研究」(サブ課題名:地上分光日射観測によるエーロゾル・雲の地表面放射収支への影響監視)において、開発中の波長域0.35~2.5μmが測定可能な分光日射計、直達分光日射計及びスカイラジオメータの校正をNOAAマウナロア観測所で実施し、Langley法により良好な検定データを取得することができた。

共同研究

  • JAXA委託研究「EarthCARE衛星搭載ライダー・イメージャーを用いたエーロゾル・雲の推定アルゴリズム開発(PI:国立環境研究所)」の枠組みにおいて、国立環境研究所の研究者と共同で、衛星観測からエーロゾルの組成の鉛直分布を推定する手法を開発した。
  • JAXA共同研究契約「GCOM-C1エーロゾル検証データ提供のための放射観測システムの高度化」において衛星センサー校正用の積分球を利用したスカイラジオメータと分光日射計の検定定数の決定を行った。波長が長い分光日射計の積分球による検定は、感度が弱く不確定性が大きいことを確認した。

科学研究費補助金

  • 科研費基盤(A)「エアロゾル地上リモートセンシング観測網による数値モデルの気候変動予測の高度化」の課題において、SKYNET、AD-Net地上観測網のスカイラジオメータとライダーを使ったエーロゾルのデータの複合解析を行っている。
  • 科研費基盤(B)「マルチスケール大気放射モデルを用いた全球雲解像放射エネルギー収支の定量化」の課題において、放射伝達計算手法の開発・改良した。また、高解像度力学モデルにおける雲層内での微細な熱放射エネルギー収支の評価を可能にした。
  • 科研費基盤(B)「衛星搭載アクティブ・パッシブセンサーデータの複合利用による全球エアロゾル解析」の課題において、CALIOP(ライダー)とMODIS(分校放射計)を使ったエーロゾルの複合解析を行っている。
  • 科研費基盤(B)「瞠目的手法による大気境界層内の鉛直混合が雲・大気質・放射場に及ぼす影響解明」の課題において、地上ライダーとスカイラジオメータを使ったエーロゾルの複合解析を行った。
(5)事前評価の結果の研究への反映状況

気象庁の環境気象大気混濁度観測業務において、平成27年度よりサンフォトメータからスカイラジオメータへの観測業務転換を開始した。スカイラジオメータの導入では、機器設置とデータ解析に係る技術協力を行い、平成30年度以降に予定している新しいエーロゾル情報提供への準備を進めている。ひまわり8/9号から導出されるエアロゾルプロダクトは、開発した雲判定アルゴリズムが使用される予定であり、これによりプロダクトの精度向上が図られることになる。雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE)プロジェクトでは、国立環境研究所と協力し衛星観測からエーロゾルの組成の鉛直分布を推定する手法を開発した。また、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)と 気候変動観測衛星(GCOM-C)プロジェクにおいては、衛星の地上検証のためにスカイラジオメータのデータを提供している。このように所内外の雲・エーロゾル、衛星関連の研究者との情報交換や連携を強化して、研究を進めている。

2.今後の研究の進め方

(副課題1)気候変動(放射収支)・大気環境監視のための観測システムの構築
  • 全天分光日射計の検定法の改良を進める。
  • 地上設置及び衛星搭載の放射計データからの雲物理量の推定法の開発・改良を引き続き行う。
  • 太陽周辺光の分布画像を撮る手法の開発を引き続き進める。
  • EarthCARE搭載ライダーと放射計を使ったエーロゾルの推定アルゴリズムの開発を引き続き行う。更に、それにより導出された値から大気放射収支を評価するための解析アルゴリズムの開発を行う。
  • より現実的な大気場に対応した放射伝達計算コードの開発・改良を行う。
(副課題2)観測データから放射収支へ影響を与えている要素の評価と変動特性の解明
  • 引き続き過去の放射計データ及び光学特性測定データの解析を進め、エーロゾル特性の時空間変動を解析する。
  • 引き続きスカイラジオメータとライダーデータを解析し、エーロゾルの時空間変動を解析する。

3.自己点検

(1)到達目標に対する進捗度

研究はほぼ当初計画のとおりに実施されている。

(2)研究手法の妥当性

概ね妥当である。

(3)成果の施策への活用・学術的意義

気象庁の環境気象大気混濁度観測業務において、スカイラジオメータの導入と石垣島への設置についての技術的指導を行った。また、石垣島に設置したスカイラジオメータは、気象研究所の基準器と比較検定することで検定定数を転写し、観測精度を維持している。また、GOSATやGCOM-Cの検証で使われているスカイラジオメータも同様に比較検定することで観測精度を維持し、衛星観測データの検証に大きく貢献している。ひまわり8/9号から導出されるエアロゾルプロダクトは、開発した雲判定アルゴリズムによって精度向上が図られる。

(4)総合評価

研究はほぼ当初計画のとおりに実施されている。

4.参考資料

4.1 研究成果リスト
(1)査読論文 :8件

1. Kudo, R., T. Nishizawa, and T. Aoyagi, 2016: Vertical profiles of aerosol optical properties and the solar heating rate estimated by combining sky radiometer and lidar measurements. Atmospheric Measurement Techniques, 9, 3223-3243.

2. Nishizawa, T., N. Sugimoto, I. Matsui, A. Shimizu, Y. Hara, U. Itsushi, K. Yasunaga, R. Kudo, and S. W. Kimo, 2016: Ground-based network observation using Mie-Raman lidars and multi-wavelength Raman lidars and algorithm to retrieve distributions of aerosol components, J. Quant. Soectrosc. Radiat. Transfer., doi:10.1016/j.jqsrt2016.06.031.

3. Ohyama, H., Kawakami, S., Tanaka, T., Morino, I., Uchino, O., Inoue, M., Sakai, T., Nagai, T., Yamazaki, A., Uchiyama, A., Fukamachi, T., Sakashita, M., Kawasaki, T., Akaho, T., Arai, K., and H. Okumura, 2015: Observations of XCO2 and XCH4 with ground-based high-resolution FTS at Saga, Japan, and comparisons with GOSAT products. Atmospheric Measurement Techniques, 8, 5263-5276.

4. Uchiyama, A., 2014: Method to retrieve single-scattering properties of aerosols using multi-wavelength scattering and absorption coefficient data measured by integrating nephelometer and absorption photometer.. Journal of the Meteorological Society of Japan, 92A, 71-91.

5. Uchiyama, A., A. Yamazaki, R. Kudo, E. Kobayashi, H. Togawa, and D. Uesawa, 2014: Continuous Ground-Based Observation of Aerosol Optical Properties at Tsukuba,Japan(Trend and Climatology). Journal of the Meteorological Society of Japan, 92A, 93-108.

6. Uchiyama, A., A. Yamazaki, and R. Kudo, 2014: Column Water Vapor Retrievals from Sky-radiometer(POM-02) 940nm Data. Journal of the Meteorological Society of Japan, 92A, 195-203.

7. Irie H., T. Nakayama, A. Shimizu, A. Yamazaki, T. Nagai, A. Uchiyama, Y. Zaizen, S. Kagamitani, and Y. Matsumi , 2015: Evaluation of MAX-DOAS aerosol retrievals by coincident observations using CRDS, lidar, and sky radiometer inTsukuba, Japan. Atmospheric Measurement Techniques, 8, 2775-2788.

8. 酒井哲, 内野修, 森野勇, 永井智広, 赤穂大河, 川崎健, 奥村浩, 新井康平, 内山明博, 山崎明宏, 松永恒雄, 横田達也, 2014: 佐賀のライダーとスカイラジオメータによって検出された桜島の火山灰の高度分布と光学特性. 日本リモートセンシング学会誌, 34, 197-204.

(2)査読論文以外の著作物(翻訳、著書、解説):

なし

(3)学会等発表
ア.口頭発表

・国際的な会議・学会等:1件

1. Kudo, R., T. Nishizawa, A. Higurashi, N. Sugimoto, and E. Oikawa, Development of ATLID-MSI synergy for retrieving the vertical profiles of aerosol components, EarthCARE Workshop 2014, 2014年9月, 東京都


・国内の会議・学会等:11件

1. 山崎明宏, 分光型日射計による精密放射観測装置の開発について, 2016年度福岡から診る大気環境研究所研究会, 2016年9月, 福岡県福岡市

2. 山崎明宏,石田春磨,工藤玲,内山明博,居島修,高野松美, 分光型日射計による精密放射観測装置の開発, 日本気象学会2016年度春季大会, 2016年5月, 東京都渋谷区

3. 工藤玲,スカイラジオメータによる雲,エアロゾル,水蒸気,オゾンの推定,日本気象学会2016年度春季大会,2016年5月,東京都渋谷区

4. 泉敏治, 内野修, 酒井哲, 永井智広, 森野勇, 山崎明宏, 弓本桂也, 田中泰宙, 眞木貴史, 赤穂大河, 奥村浩, 新井康平, 松永恒雄, 横田達也, 佐賀のライダーで高度 2 km 以下に観測された高濃度のオゾンとエアロゾル (2)ミーライダーの解析と全球エアロゾルモデルとの比較, 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市

5. 工藤玲, 岩渕弘信, 全天カメラによる日射の輝度分布測定, 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市

6. 工藤玲, 青柳曉典, 西澤智明, エアロゾルの鉛直分布が大気境界層へ与える影響, 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市

7. 工藤玲, 西澤智明, 能動・受動型センサーの複合利用によるエアロゾル光学特性のリモートセンシング, 第33回レーザセンシングシンポジウム, 2015年9月, 東京都

8. 泉敏治, 内野修, 酒井哲, 永井智広, 森野勇, 山崎明宏, 弓本桂也, 田中泰宙, 眞木貴史, 赤穂大河, 奥村浩, 新井康平, 松永恒雄, 横田達也, 佐賀の可搬型ライダーで高度 2 km 以下に観測された高濃度オゾンとエアロゾル(2)ミーライダーの解析と全球エアロゾルモデルとの比較, 第33回レーザセンシングシンポジウム, 2015年9月, 東京都大田区

9. 工藤玲, 青柳曉典, 西澤智明, ライダーとスカイラジオメータの複合解析によるエアゾルの鉛直分布の季節変動, 日本気象学会2015年度春季大会, 2015年5月, 茨城県つくば市

10. 工藤玲, 西澤智明, 日暮明子, 杉本伸夫, 及川栄治, EarthCAREのATLID-MSI複合エアロゾルプロダクトの開発, 日本気象学会2014年度秋季大会, 2014年10月, 福岡県福岡市

11. 内野修, 森野勇, 北島俊行, 小木昭典, 川波英里, 酒井哲, 永井智広, 山崎明宏, 内山明博, 菊地信弘, 吉田幸生, 奥村浩, 新井康平, 松永恒雄, 横田達也, GOSAT SWIRから導出されたエアロゾル光学特性と地上観測との比較, 日本気象学会2014年度秋季大会, 2014年5月, 神奈川県横浜市


イ.ポスター発表

・国際的な会議・学会等:5件

1. Kudo, R., T. Nishizawa, T. Aoyagi, Y. Fujiyoshi, Y. Higuchi, M. Hayashi, A. Shimizu, and K. Aoki, Remote sensing of aerosol optical properties and solar heating rate by the combination of sky radiometer and lidar measurements, International Radiation Symposium 2016, 2016年4月,ニュージーランド,オークランド

2. Oishi, Y., H. Ishida, and T. Y. Nakajima, The impact of the use of different satellite data as training data against GOSAT-2 CAI-2 L2 cloud discrimination, 2016 AGU Fall Meeting, 2016年12月, アメリカ, サンフランシスコ

3. Ishida, H., Y. Ota, M. Sekiguchi, and Y. Sato, Incorporation of Three-dimensional Radiative Transfer into a Very High Resolution Simulation of Horizontally Inhomogeneous Clouds, 2016 AGU Fall Meeting, 2016年12月, アメリカ, サンフランシスコ

4. Oishi, Y., H. Ishida, and T. Y. Nakajima, Verification of new cloud-discrimination algorithm using GOSAT TANSO-CAI in the Amazon, 2015 AGU Fall Meeting, 2015年12月, アメリカ, サンフランシスコ

5. Kudo, R., T. Nishizawa, A. Higurashi, N. Sugimoto, and E. Oikawa, Development of ATLID-MSI synergy for retrieving the vertical profiles of aerosol components, 2014 AGU Fall Meeting, 2014年12月, アメリカ, サンフランシスコ


・国内の会議・学会等:7件

1. 工藤玲,地上日射量の長期変動に対するエーロゾルの影響,第14回環境研究シンポジウム,2016年11月,東京都

2. 工藤玲,西沢智明,日暮明子,及川栄治,杉本信夫,CALIPSO-MODIS複合解析によるエアロゾルプロダクトの開発,2016年度秋季大会,2016年10月,愛知県名古屋市

3. 石田春磨,太田芳文,関口美保,佐藤陽祐, 高解像度大気モデルにおける広帯域赤外フラックスの3次元放射伝達計算, 日本気象学会2016年度秋季大会, 2016年10月, 愛知県名古屋市

4. *石田春磨, 大石優, 中島孝, SVMを応用した雲判定アルゴリズムにおける誤判定修正及び特徴量選択方法の構築 , 日本気象学会2016年度春季大会, 2016年5月, 東京都渋谷区

5. 石田春磨,森田啓太郎,大石優,中島孝, 多変量解析手法を応用した多波長センサー用雲判定アルゴリズムの開発 , 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市

6. 内山明博, 山崎明宏, 工藤玲, 石廣玉, 陳彬, 地上でのエアロゾル光学特性の連続観測2(福岡と北京の比較), 日本気象学会2015年度春季大会, 2015年5月, 茨城県つくば市

7. 工藤玲, 青柳曉典, 西澤智明, エアロゾルの長期変動が大気境界層へ与える影響, 日本気象学会2014年度春季大会, 2014年5月, 神奈川県横浜市

(4)投稿予定論文

Ishida, H., Y. Oishi, K. Morita, K. Moriwaki, and T. Y. Nakajima, 2016: An appropriate way to apply support vector machine to cloud detection of satellite data for realizing high utility. Remote Sensing of Environment, (revised).

Uchino, O., T. Sakai, T. Izumi, T. Nagai, I. Morino, A. Yamazaki, M. Deushi, K. Yumimoto, T. Maki, T. Y. Tanaka, T. Akaho, H. Okumura, K. Arai, T. Nakatsuru, T. Matsunaga, T. Yokota, 2016: Lidar detection of high concentrations of ozone and aerosol transported from Northeast Asia over Saga, Japan, ACP, (revised).



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