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気象研究所研究開発課題評価報告

環境要因による局地気候変動のモデル化に関する研究

事前評価

評価年月日:平成25年12月24日
  • 副課題1 都市キャノピーモデルの高度化
  • 副課題2 地上観測値の空間代表性に関する研究

研究期間

平成26年度~平成30年度

研究代表者

藤部文昭(環境応用研究部長)

事前評価の総合所見

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1.研究の目的

多様な土地利用状態を反映した高精度の気候情報を提供し,ヒートアイランド等の緩和方策の検討や地上観測所の適切な維持運用に資する。

2.研究の背景・意義

(社会的背景・必要性)

平成25年に「ヒートアイランド対策大綱」が改訂され,ヒートアイランド対策として「人の健康への影響等を軽減する適応策の推進」が新たに追加された。例えば熱中症の予防に向けた「暑さ指数の予報値提供」や,暑熱緩和策として「緑のカーテンの取組」など微気候的な対策が例示されている。このような対策の効果的な推進のため,都市や街区の気象に関するきめ細かい情報の提供が求められている。

また,2013年9月にIPCC第5次評価報告書の第1作業部会報告書が採択され,地球温暖化が進みつつある状況が確認された。これを受け,気候変動に関するより精緻な情報の提供が必要である。

(学術的背景・意義)

気候モデルの高分解能化・精緻化が世界的に進められる中,都市気象モデルについても物理過程の多様化や高精度化が要請されている。また,都市気象モデルに装備された都市キャノピーモデルと,地域気候モデルに装備されている陸面モデル(SiBなど)をシームレスに融合し,都市圏広域の気候を現実的に再現できるモデルを構築することが課題になっている。

長期的な気候変動の監視や,地域気候モデルの精度評価に当たり,地上気象観測データの品質や代表性の確保が必要である。そのため,観測データに対する環境条件や観測手法の影響を定量的に評価することが求められる。

(気象業務での意義)

地球環境・海洋部のヒートアイランド監視業務に対しては,これまでもNHMへの都市キャノピーモデル導入などの形で関わってきており,今後もモデルの高度化が要請されている。特に,地域気候モデルに組み入れる都市キャノピーモデルの提供が期待されている。

観測部では,気候変化の監視の観点から地上気象観測における周辺環境の評価が進められており,これを支援する微気候的な知見の提供が求められる。

3.研究の目標

(副課題1)都市キャノピーモデルの高度化

都市キャノピーモデルを改良し,領域気候モデル等の精度向上に資する.

(副課題2)地上観測値の空間代表性に関する研究

観測環境等に対応した地上気温等の観測値の変動実態を明らかにし,観測運用およびモデル検証の向上に資する.

4.研究計画・方法

(副課題1)都市キャノピーモデルの高度化

都市キャノピーモデルを,緑地やビル群など多様な土地利用状態の混在を反映できるものにグレードアップするとともに,降雪期への拡張を図る。緑地による暑熱環境緩和効果の影響等について評価する。

(副課題2)地上観測値の空間代表性に関する研究

(1) モデル出力との比較に基づく地上観測値の空間代表性の評価

地上気温等の観測点について,観測値と領域気候モデルの計算結果との比較,および観測所情報の利用により,空間代表性を評価するとともに,それに影響する環境因子(地形,土地利用状態,周辺環境など)を見出す.

(2) 観測所周辺の微気候の実態解明.

本庁構内で継続している観測や,観測部等による観測(北の丸,測器センターなど)のデータを利用し,ミクロな気象変動の実態を解明する.

5.特筆事項

(波及効果)
  • 都市キャノピーモデルの高度化は,地域(メソ)モデルにおける地表面過程の向上への貢献が見込まれる。また,夏季暑熱に関する情報の精緻化をはじめとして,都市ヒートアイランドの理解の進展への貢献が期待される。
  • 地上観測値の空間代表性に関する研究は,都市内露場における地上気温の診断精度向上への貢献が期待される。
(特記事項)
  • 都市キャノピーモデルの開発は,地域(メソ)モデルの開発課題と情報共有しながら進める。その成果は地球環境・海洋部におけるヒートアイランド監視業務への貢献が見込まれる。
  • 地上観測値の空間代表性に関する研究は,大気境界層の研究(a5)との情報交流のもとに進め,また,気象測器検定試験センターと連携を図りつつ進める。その成果は観測部における地上気象地点の周辺環境の評価に対する基盤的知見を与えることが期待できる。


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