TOP > 研究への取り組み > 評価を受けた研究課題 > 全球大気データ同化の高度化に関する研究(中間評価)

気象研究所研究開発課題評価報告

全球大気データ同化の高度化に関する研究

中間評価

評価年月日:平成25年10月21日

研究代表者

青梨和正  (台風研究部 第1研究室)

研究期間

平成23年度~平成27年度

  • 副課題名1 データ同化手法の高度化に関する研究
  • 副課題名2 衛星データ同化技術の高度化に関する研究

中間評価の総合所見

pdfファイル:124KB

研究の動機・背景

ゾンデ観測をはじめとする直接観測データや衛星観測データなどの様々な観測データの情報を数値予報モデルに取り込み、高精度の初期値を作成する過程を「データ同化」という。これは、高精度の解析場(環境場)を作成するとともに、数値予報モデルの予報精度を大きく左右する重要なプロセスである。世界の主要な数値予報センターでは、データ同化技術を高度化し、多種多様の新しいリモートセンシングデータや衛星観測データを数多く同化して、数値予報の精度を飛躍的に向上させている。

近年、衛星観測データは、その種類・量とも急激に増加している。そのため海外の数値予報センターでは研究機関や衛星データ作成機関と密接に連携して開発体制を大幅に拡充している。一方、気象庁においては、全球大気データ同化はこれまで専ら予報部数値予報課で開発が行われ、気象研究所は関与してこなかった。現状では欧米の数値予報センターに比べて、利用している衛星データの種類・量の面で大きく差をつけられていると同時に、様々な新しい観測データを同化するために必要なデータ同化手法自体の高度化も遅れている。

そこで、気象研究所においても数値予報課と連携しながら、数値予報課の全球大気データ同化システムを導入し、台風研究部と気象衛星・観測システム研究部が協力して全球大気データ同化の高度化に関する研究を実施する。研究実施に際しては、数値予報課の開発計画と調整しながら、効率的に進める。これにより、現業数値解析予報において、熱帯気象をはじめとする全球的な環境場の解析精度の向上と、台風予報を含む全球的な予報成績の向上に大きく寄与することができる。平成22年度は、その準備としてフィージビリティスタディを行い、感度ベクトルによるデータ同化、非晴天域(雲・降水域)の衛星輝度温度データの同化、多チャンネルサウンダの主成分分析を用いた同化等について、秋季気象学会(京都)にて発表をおこなった。なお、領域データ同化とは、理論的には共通する部分があり可能な範囲で協力しながら進めるが、実装の面では共通する部分は少ないため、全球大気データ同化を独立した研究計画とする必要がある。

研究の成果の到達目標

全体の到達目標

本研究は、現業数値予報の全球大気データ同化システムの改善を目的とする研究課題であり、できるだけ多くの研究成果を現業数値予報システムに業務化して解析・予報精度の向上に寄与することを目標とする。予報精度向上のみならず全球の環境場の精度向上、特に熱帯域の環境場・台風域の解析精度向上に寄与し、気候解析への応用も期待される。

副課題ごとの到達目標
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究
  • 観測誤差共分散行列
  • 予報誤差共分散行列を最適化することにより、観測データの分布状況や精度に対応したデータ同化を行う。
  • 4次元変分法で、より多くのデータを同時に同化するためのデータ同化ウインドウの拡張と、モデルの誤差を考慮した方法(弱い拘束条件)により、精度を向上させる。
  • 観測誤差相関を適切に考慮して、既存の観測データの持つ多くの情報を有効に利用する。また、解析精度を向上させるための観測データの利用方法を改善する。
  • 雲域
  • 降水域及び陸域の輝度温度データの直接同化に必要な同化システムの拡張を行う。
  • 特別観測データや台風ボーガスデータを利用して、そのインパクト試験や感度解析を行い、熱帯擾乱を精度良く解析して予報精度を向上させる。
(副課題2)衛星データ同化技術の高度化に関する研究
  • 数千チャンネルあるハイパースペクトル赤外サウンダの放射輝度温度の情報を損なわずに効率的に同化するため、主成分分析を用いた同化手法を開発する。
  • 現在の現業システムで同化している衛星の放射輝度温度データは、海上の晴天域に存在するデータのみであるため、モデルに与える情報として不十分であり偏りもある。雲域
  • 降水域及び陸域に存在する輝度温度データを同化して、バランスの良い環境場を解析して予報初期値の精度を向上させる。
  • 衛星搭載のアクティブセンサー(雲レーダー
  • 降水レーダー)によるデータの同化技術の開発により、海洋上の積雲対流域や強雨域などを正確に把握する。
  • 衛星打ち上げ前の模擬データを使用した観測データ同化シミュレーション実験(OSSE:Observing System Simulation Experiment)により、衛星打ち上げ後の速やかな利用を可能とすることを目指す。具体的には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げ予定のEarthCARE衛星やGPM衛星等を対象とする。

1.研究の現状

(1)進捗状況
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究

①データ同化手法の高度化

誤差共分散行列の最適化研究として、3つのアプローチで研究を進めている、1つ目は、予報誤差の誤差共分散行列に対する感度解析結果に基づく最適化であり、4次元変分法全体の随伴演算子を含むスキームを構築し、サイクル試験等を行った。2つ目は、アンサンブルによる背景誤差共分散行列の表現を行うアンサンブルカルマンフィルタの研究であり、気象庁数値予報課で開発中の局所変換アンサンブルカルマンフィルタ(LETKF)の気象研究所計算機への移植とそれによる研究、及び、より一般的なアンサンブルカルマンスムーザによる同化システムの構築とそれによる研究を行った。3つ目は、4次元変分法の同化窓の延長であり、同化窓を現行の6時間から27時間に延長したシステムを構築して研究を進めた。また、接線形性やモデル誤差を考慮するために、弱拘束複数のサブウィンドウについての研究を開始した。

雲や降水の情報を持った非線形性の強い観測データの同化や背景誤差共分散行列の適切な時間発展のために、基本場更新を4次元変分法に導入し、サイクル試験等を行った。

数値予報モデルのバイアスを同化システムで取り扱うために、変分法バイアス補正を拡張したモデルバイアス補正スキームを構築した。

②観測情報の利用拡充のための研究

観測データの解析場や予報場への線形インパクト評価研究を行った。従来の随伴演算子による手法の他に、前方演算子で計算する新しい手法を構築し評価を行った。

同化システムの解析誤差の推定として、物理法則や観測データとの整合性に課題がある従来の手法を同化理論に基づいて発展させた新し手法を構築した。

観測システムシミュレーション実験(OSSE: Observing System Simulation Experiment)の手法として知られている3つの手法(NR-OSSE, EnDA-OSSE, SOSE-OSSE )を構築し、これらの比較研究を開始した。

水物質に関する情報をもつ非晴天域輝度温度データなどの直接同化に必要な同化システムの拡張、それによる実験を実施。

観測誤差相関をもった観測の同化システムでの取り扱いとして、感度解析に基づいた誤差共分散散行列の最適化スキームによって、予報精度を維持するように観測誤差膨張係数を自動調整する研究を開始した。

③特別観測データのインパクト試験による性能評価

THORPEX Interactive Grand Global Ensemble (TIGGE)やYear of Tropical Convection (YOTC)のデータを利用して、気象庁全球モデルによる台風進路予報の誤差を解析した。

数値予報課と連携して、TIGGEやYOTCデータから疑似観測データを作成して全球4次元変分法で同化できるシステムを開発し、気象研究所NAPEXで実験できる環境を構築した。

気象庁全球モデルによる台風進路予報の誤差解析の結果、北西進する台風に対して北上バイアスがあることが確認された。単純モデル、気象庁非静力学モデルを用いて、力学的、熱力学的観点から北上バイアスの原因を調査した。

台風の初期位置を精度よく解析する手法として、台風位置ずれ補正スキームを開発した。

YOTCの特別観測によるドロップゾンデデータを用いて観測システム実験を行った。

地球観測衛星によって実際に観測された放射輝度温度を用いて、アンサンブル予測で表現される台風の検証を行った。

(副課題2)衛星データ同化技術の高度化に関する研究

①高度な衛星データ同化手法の開発

ハイパースペクトル赤外サウンダの放射輝度温度を効率的に同化するため、輝度温度の主成分を用いた同化手法を開発した。開発した手法を、気象庁全球数値予報システムに組み込んで同化実験を行い、従前の観測チャンネルでの同化手法と比較した。主成分を同化することで効率的な同化が可能であることを確認した。他センサーとの共存でより適切にハイパーサウンダデータを同化するために、最適な観測誤差推定に関する実験を行った。予報誤差低減の解析への感度や観測誤差感度を利用する複数の方法で実験を行い、現業システムとの比較を行った。

②雲域・降水域及び陸域での放射輝度温度同化技術の開発

赤外サウンダの雲域での輝度温度を同化する手法として、1DVARを開発した。この1DVARで、雲域の判定および雲の上に対する温度・水蒸気のリトリーバル実験を実施した。その結果から、雲域における赤外サウンダデータの利用手法や、期待できる効果について検討を行なった。また、気象研開発の赤外サウンダ用高速放射モデル(MITRAN)を利用して、現業で使われている放射モデルRTTOV(v10.2) RTTOVの改良が可能性を検討した。

静止衛星搭載の赤外イメージャの雲域での輝度温度同化手法で、厚い単層雲域同化を、MTSATや他衛星の利用に向けた開発・研究を行うとともに、現業的なデータ作成・取得を本庁・衛星センターに協力しながら行なった。また、より一般的な雲(多層雲、薄い雲)を対象とした輝度温度同化を行うために、モデルの再現性や誤差特性の調査を行った。

マイクロ波センサーの雲域・降水域及び陸域での輝度温度を同化するため、海上や陸上の降水域でのマイクロ波放射計データの前方計算値が、観測値からバイアスを持つ問題を研究した。この成果に基づき、マイクロ波放射計データの降水域における前方計算値のバイアス補正法を開発した。

③アクティブセンサーによるデータの同化技術の開発

衛星搭載風ライダーのOSSEを実施するため、副課題1の②で構築されたSOSE-OSSEを用いた環境の構築を行った。環境応用部に依頼して真値代替場と整合したエアロゾル場を作成し、情報通信機構(NICT)と協力して衛星搭載風ライダーの疑似風データを作成した。

アンサンブル同化システム(EnVA)環境で、Joint-simulatorなどの衛星シミュレーターを実施できるようにした。さらに衛星搭載降水レーダーについて、観測値・モデルシミュレーション値を観測空間で比較した。

(2)これまで得られた成果の概要
(2)-1 全体

以下に述べる2つの副課題に沿って研究を推進した。全体として当初の目標に沿った研究を遂行し、一部に遅れは見られるものの概ね期待した成果が得られた。

(2)-2 副課題ごと
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究

① データ同化手法の高度化

誤差共分散行列の最適化の研究として、誤差共分散行列が予報誤差に与える影響を夏冬1か月ずつの期間で評価した。評価結果に基づいて誤差の最適化を行ったシステムで、数事例について解析、予報試験を実施し、実際に予報精度が向上することを確認した。また、感度解析を利用した最適化スキームによる背景及び観測誤差分散について、“静的な最適化“と”動的な最適化“の2つの解析、予報サイクル試験を実施し、前者ではサイクルの進行とともに予報精度が劣化する傾向が見られること、後者は前者に比べて劣化の進行が抑制されることがわかった。

数値予報モデルのバイアスを同化システムで取り扱うために、変分法バイアス補正に類似したモデルバイアス補正スキームを開発し、降水フラックス、モデルの各物理過程の加湿、加熱率を説明変数として試験した。降水フラックスを説明変数とすることで、定性的に妥当なバイアス補正の鉛直プロファイルが得られることがわかった。

非線形性の強い観測データや物理過程を同化システムで取り扱うために、基本場更新スキームを導入し、サイクル試験を実施し精度評価を行った。解析、予報精度は、観測データを真とした検証では改善、解析場を真とした検証では予報初期や熱帯で改悪という結果を得た。また、予報初期期間における対初期値検証の妥当性は、線形誤差成長の仮定とモデルバイアスの影響の大きさに依存するため、ゾンデだけでなく、輝度温度観測を真とする検証も行い、整合的な評価を行った。

背景誤差の改善とより多くの観測データを同化するために、27時間の同化窓のシステム(現システムは6時間)を構築し、計算負荷、収束性について初期評価を行った。同化窓を未来方向に拡張した場合について、サイクル実験を実施し、解析、予報精度が顕著に向上することがわかった。この結果は、同化窓拡張による観測情報の増加が接線形仮定の劣化に比べて十分大きく、このようなシステムではモデル誤差を考慮しなくても、解析や予報の精度が向上することを示している。この結果は、再解析やOSSEの真値代替場として応用研究につながるものである。また、弱拘束について見通しの良い解析解を導出した。

同化窓延長について、接線形性の維持やモデル誤差の考慮のために、同化窓を複数のサブウィンドウに分割する手法について、見通しの良い解析解を導出した。

アンサンブル予報から流れに依存した背景誤差情報を作成し利用する同化システムの構築を開始。前段として4次元変分法の最小値探査方向を粒子として解析インクメントが再現されること、この粒子によって張られる部分空間は非常に小さいことから、観測情報がその構成には必須であることがわかった。

粒子近似による同化手法の研究について、一般的な形のアンサンブル・カルマンスムーザを構築した。十分に並列化したコーディングを行うことで、Tl319解像度での計算が8nodeでも25分程度で実行可能である。また、変分法バイアス補正についても実装している。初期試験として、4DVARとのインクリメント構造、評価関数のコストの比較、単発の解析、予報実験による精度比較を行った。予報精度では2日目以降、南半球を中心に精度向上が見られた。鉛直方向の局所化スキームとして、衛星輝度温度等、非局所的な観測のためのスキームを定式化した。

気象研究所が保有する計算機システムに対して,全球アンサンブル同化システム(EnsNapex)と全球アンサンブル同化システム(GSM-LETKF)の移植を完了した。移植したシステムを用いて、週間アンサンブル計算ルーチンの長期積分を行いアンサンブルスプレッドや相互相関係数についての解析を行った。また、全球アンサンブル同化システムと現業で使われている全球変分法同化システム(Napex)の同化および予報結果を相互比較し、台風予報に与える影響などの調査を行った。

② 観測情報の利用拡充のための研究

解析誤差の推定について、予報誤差の情報をデータ同化理論に基づいて同化する手法を開発してサイクル試験を実施し、観測データや背景場とも整合し、かつ予報誤差を小さくする場が構築されることを示した。

OSSE (Observing System Simulation Experiment)研究については、SOSE (Sensitivity Observing System Experiment)とEnDA (Ensemble Data Assimilation)によるOSSEシステムを構築し、ゾンデ、輝度温度データのOSSEを実施した。また、TRMM衛星や極軌道衛星軌道で視線風の鉛直プロファイルを観測した場合等の仮想観測データについて解析、予報精度へのインパクトを評価した。SOSEによって生成した真値代替場は、風ライダーのOSSE(副課題2参照)へも提供している。また、ネイチャーラン(Nature Run)を使ったOSSE(NR-OSSE)についても、実験システムを構築し、NRと疑似観測の生成を行った。

降水域の輝度温度データの直接同化のために、雲凝結物質を制御変数に加えた同化システムについて、降水フラックスを放射計算で考慮するように拡張した。また、雲凝結物質の背景誤差共分散行列を粒子近似で表現した場合のインクリメント構造を解析した。

各観測データの予報精度への寄与を、夏冬一カ月ずつの期間について、4D-Var自体の随伴演算子を用いる手法で評価した。この結果、期間平均では概ねすべての観測データ種別が予報精度改善に寄与していること、15時間と27時間予報に対する寄与は類似していること、寄与の確率的な振る舞い、海外数値予報センターと比較すると衛星観測の利用に課題があること、などがわかった。同手法のモジュールや導入手順を説明したイントラページを作成し、気象研究所、数値予報課の開発者に公開した。また、

評価結果に基づいて同化するデータを再選択することで、実際に解析、予報精度が向上することをサイクル試験で確認した。これは真値代替場の生成やデータ同化システムの確率的振る舞い等の研究に発展するものである。また、副課題2で進められている主成分による赤外超多チャンネルセンサについても評価できるように拡張した。

観測データが解析場や予報場に与える寄与を直接計算する新しい手法を構築した。また、上記の随伴演算子に基づく手法の精度評価や、大気基準振動の各モードへの寄与を評価できるように同手法を拡張した。

観測誤差相関の同化システムでの取り扱いについては、間引き、観測誤差膨張、相関の顕わな考慮の3つの手法があるが、観測誤差膨張について、感度解析に基づいた誤差共分散散行列の最適化スキームによって、予報精度を維持するように観測誤差膨張係数が調整できることがわかった。

③特別観測データのインパクト試験による性能評価

TIGGEデータを用いて台風の進路予測精度の国際比較を行った。2008年から2010年に発生した台風を対象として検証したところ、気象庁とヨーロッパ中期予報センターとの間に、5日予測においてリードタイムにして1日程度の差があることが分かった。台風進路予報誤差の原因を、初期場と数値モデルとに切り分ける試みとして、全球大気データ同化システムを用いて、ECMWFの初期値から予報実験を行った。その結果、初期値をECMWFの初期値に交換することで進路予測誤差が大きく減少する事例があった。そのような事例では、水平解像度がT42程度の総観規模擾乱の表現が重要であることが分かった。これらの知見は、台風進路予報向上のための高度なデータ同化システム構築に向けて重要な情報となると考えられる。

台風進路予測における北上バイアスに関して、力学的な観点からは南北方向に傾斜した渦が台風渦の北上に寄与することが分かった。熱力学的な観点からは、台風のコア領域ではない、渦中心から300km程度離れた非軸対称な熱源が台風渦の北上に寄与することが分かった。特に北上バイアスが顕著であった2009年の台風第17号(PARMA)を対象に、気象庁非静力学モデルを用いて実験を行った結果、水平解像度10kmの実験では、北上バイアスが見られなかったが、降水が台風中心付近に偏り過ぎるという問題点が見つかった。水平解像度2kmの実験では、計算機資源の関係から十分な予報時間を確保できなかったが、降水の分布はTRMM/PRと対応が良かった。これらの知見は、北上バイアスの改善に寄与するものである。

第一推定値の台風中心位置が観測位置とずれている場合、ボーガスデータや特別観測データを同化することで第一推定値の持つ台風の非対称構造が壊れ、進路予報が悪化する事例がある。この問題を解決するために、気象庁全球モデルで採用されているリデュースドガウス格子に対応した波格子、格子波変換ツールを使用して、位置ずれ補正スキームを作成した。この位置ずれ補正スキームを使って、2009年8月~11月の4か月間の予報実験を行った。モデル面で位置ずれ補正を行うため、台風の近くに地形がある場合は地形の位置もずらしてしまう。そこでHsiao et al. (2010, JAS) を参考に、台風中心から約500km以内に500mより高い地形がある場合は台風位置ずれ補正スキームを適応しない。予報実験の結果、5日予報で進路予報誤差が4%程度減少することが分かった。

2010年に太平洋で行われた台風特別観測、ITOPのドロップゾンデ観測データと全球大気データ同化システムを用い、観測データの台風進路予報へのインパクトを調査した。実験の結果、ドロップゾンデ観測の台風進路予報へのインパクトは小さかった。解析の結果、ドロップゾンデ観測は台風中心付近で行われており、台風進路予報に重要な台風周辺の環境場の改善が得られなったことが分かった。データ同化における観測データの高度利用という観点からは、データ同化に使用するモデルの水平解像度に応じて同化される観測データの量が大きくことなることが分かった。今回のように台風中心付近の観測を活かすためにはメソモデル等水平スケールの細かいモデルでデータ同化することが重要であろう。

(副課題2)衛星データ同化技術の高度化に関する研究

①高度な衛星データ同化手法の開発

AIRSデータを対象に開発を行った。一次元変分法によるシミュレーションの結果を踏まえ実際の観測データでも効率的なデータ同化の可能であることが確認できた。ただし、バイアス除去等品質管理が必要で、現業同化システムでの効果を確認するための作業を行っている。

実際のAIRS観測データを使ってリトリーバルを行い、中上層気温に感度のあるチャンネルを対象とした主成分解析を利用することで、リトリーバル精度の劣化を抑制しながら少ないチャンネル数でリトリーバル可能であることがわかった。観測データを使った1DVARの結果を踏まえて、現業システムに準ずる解析予報システムに基づいて、実際の観測データを使った全球4DVAR実験を行った。主成分を利用することで少ないチャンネル数で効率的なデータ同化が可能であることは分かったが、十分な解析精度は得られず、予報精度改善への効果も不十分だった。原因のひとつとして考えられるのが各チャンネルの誤差の設定で、予報誤差への寄与や感度などを利用した適切な誤差の設定手法について検討している。

②雲域・降水域及び陸域での放射輝度温度同化技術の開発

気象研究所で独自に開発したAIRS/IASI赤外サウンダ解析用高速放射モデル(MITRAN)について、最新の吸収線データベースに対応するバージョンアップを行い、またモデル大気層の100層化およびオゾン・水蒸気以外の主要大気分子の吸収線についての前方計算を可能とする改良・整備を実施した。全球同化システムの解析値を初期値とし、MITRANを用いた晴天海域に対する冬季40日間の全球温度・水蒸気プロファイルについての1DVAR解析を行なった。

この晴天海域の1DVARリトリーバル結果を利用し、雲域の判定および雲の上に対する温度・水蒸気のリトリーバル実験を実施した。気象研全球同化システムによる2008年12月-2009年2月の50日間の解析値と赤外サウンダAIRSの輝度温度データを用いた温度・水蒸気プロファイルについて全球1DVAR解析を実施した。解析する気圧高度を600hPaより上空に限定するアルゴリズムを組み込むことで、陸域および下層雲域の解析が可能となり、解析対象地域は晴天海域のみの場合の約4倍になることがわかった。さらにこの結果を利用して、一部地域に対する詳細なAIRSデータ解析を実施した。解析高度範囲を限定することでAIRSデータ本来の空間分解能を生かしたリトリーバルが可能となり、これまで衛星観測からでは明瞭でなかった氷雲周辺や鉛直方向の詳細な水蒸気分布や氷過飽和度などの推定が可能であることがわかった

静止衛星搭載の赤外イメージャの雲域での輝度温度同化手法を開発し、同化実験を行った。雲量8割以上の中上層雲データを選択することにより、小さいながらも予報を改善することを確認した。当初は赤外窓チャンネル(IR1)だけを同化してきたが、水蒸気チャンネル(IR3)を追加した。これにより水蒸気をトレーサーとして利用することにより風情報を取り出すことが期待できる。しかしIR1とIR3は雲の射出率が異なるため、新たにバイアス補正処理などが必要となり、適切な説明変数の検討を行っている。また将来の現業利用に向けて、MTSATの全天候輝度温度プロダクト(ASR)の開発を気象衛星センターに、MeteosatのASRデータの現業的な取得・デコードを数値予報課に依頼し、必要な情報交換を行っている。

より一般的な雲に対しては、モデルの再現性や同化システム対応可能性について、基礎調査を行っている。ECMWFの数値予報システムを用いて詳細に調査した結果、海上では全データの85%が、観測値とモデル計算値とのズレ(O-Bの絶対値)が10K以内に納まること、O-Bの標準偏差は雲の影響に応じて増大すること、O-Bの頻度分布はこの雲に応じた標準偏差で規格化することによって、ガウス分布に極めて近くなることを示した。そして雲の影響を表すパラメータを新たに開発し、これを用いてO-B標準偏差を推定するテーブルを作成することにより、適切な観測誤差の設定や品質管理へ応用できることを示した。その他、線形推定理論を用いていくつかの典型的な大気分布において雲域輝度温度データがどのような情報量をもつかを推定したり、実際のECMWFの同化システムにハイパーサウンダデータを1点だけ同化しシステムの応答(O-Bの正負によって雲が正しく増減するか)を調べた。

降水域のマイクロ波放射計輝度温度の同化のため、放射伝達モデルの対流性の雨の粒径分布を変えてマイクロ波放射計輝度温度を計算する前方計算実験を行なった。具体的には、雨についてのZ-R関係の係数aを変更した。また、この前方計算の結果のLook-Up Table (LUT)を使って1998年のTRMM Microwave Imager (TMI)の37 GHzのTB depressionから降水強度を推定した(Rain37)。この降水の推定値をPRと比較することで、Z-R関係の係数aの 「最適値」を探索した。この結果、Rain37が、陸上では10 mm/h以下の降水で約50 %、10 – 20 mm/hで30-40%程度変わることがわかった。平均的にみると陸上のRain37がPRに近くなるaの「最適値」は、90-110程度であった。但し、固体降水の厚さや、降水のタイプによるRain37対PRの変動がみられた。

マイクロ波放射計データの前方計算値のバイアスについて調査するため、TRMM衛星のマイクロ波放射計とレーダデータと前方計算の輝度温度対降水強度の対応を比較した。その結果、海上では、各チャンネルで上記観測値と前方計算値の間にバイアスがみられたこと、各チャンネル間でバイアスに相関があること、37GHZのバイアスを使って19GHz等のバイアスを補正すると、降水強度のリトリーバル値の弱い降水の過大評価が緩和されることがわかった。陸上では、地上気温の高い(低い)領域で非降水域の輝度温度が前方計算で過小(過大)評価されることがわかった。次に、海上や陸上でのマイクロ波放射計の輝度温度を指標として、マイクロ波放射計データの前方計算値のバイアスを解析した。このマイクロ波放射計の輝度温度を使ったバイアスの補正法を開発し、マイクロ波放射計データからの降水リトリーバルアルゴリズムに導入した。

③アクティブセンサーによるデータの同化技術の開発

気象研究所に導入した計算機に衛星シミュレーターを導入した。メソ気象モデルの計算結果(水平解像度2km)に対し、衛星シミュレーターを使って輝度温度、レーダー反射因子、後方散乱係数などを計算し、既存の衛星観測との比較を行った。

TRMM衛星搭載の降水レーダーPRに対して、気象庁非静力学モデル(5km)結果から衛星シミュレーターを用いて計算したレーダー反射因子と、観測反射因子を比較した。氷粒子からの寄与が大きすぎるという先行結果を裏付ける結果が得られ、これはモデルが過剰に氷粒子を生成しすぎていることを示している。また水粒子による反射因子は、モデル・観測とも降水を予測している領域では、観測とモデル計算値との差がガウス分布を示しており、これは有効に同化できる可能性があることを示唆している。

実装が比較的容易な衛星搭載ドップラー風ライダー(DWL)を対象として、OSSEのシステム構築、評価方法の確立、衛星機関や同化関連機関との連携強化を行っている。副課題1②のSOSEから作成した風や気圧の真値代替場から、情報通信機構(NICT)のライダーシミュレータを用いて、視線方向(LOS)の風を算出した。LOS風に対する品質管理や観測誤差設定を行う解析前処理を作成し、4次元変分法でLOS風を同化するように拡張した。衛星1軌道分のLOS風を同化したところ、概ね真値代替場に近づく結果が得られた。

(3)当初計画からの変更点(研究手法の変更点等)
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究

① データ同化手法の高度化

近年のアンサンブルを用いたデータ同化手法の発展状況を鑑み,4次元変分法に加え,アンサンブルカルマンフィルタを用いた全球同化システムを用いた研究計画を追加した.本年度および来年度は同化システムの気象研への移植,基礎研究を行う.全球アンサンブル同化システムを用いることにより,副課題1「同化システムの高度化に関する研究」および,副課題2の「衛星打ち上げ前の模擬データを使用した観測データ同化シミュレーション実験」への貢献が期待できる.また,変分法とアンサンブルを組み合わせた次世代の同化システムの構築を視野に入れた基礎的な研究を目指す.

(4)成果の他の研究への波及状況
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究

① データ同化手法の高度化

本研究計画のために本庁数値予報課から研究所に移植した「全球大気データ同化実験システム」(MRI-NAPEX)は、本課題以外にも全球モデルの放射過程の改良に向けた研究(気候研究部)等でも利用されている。

② 観測情報の利用拡充のための研究

観測データインパクトの評価結果は、国際風ワークショップ、将来の観測網構築検討、THORPEX関連の会議での気象庁から発表資料としても提供した。また、数値予報課のシステムでも動作確認されている。

③特別観測データのインパクト試験による性能評価

台風の初期場の不確実性の調査、さらにその改善点を調査することは世界気象機関及び気象庁が推進するTHORPEX研究に資するものである。また、これらの研究成果は「台風強度に影響する外的要因に関する研究」における最適観測に関する研究にも貢献する。

(副課題2)衛星データ同化技術の高度化に関する研究

②雲域・降水域及び陸域での放射輝度温度同化技術の開発

雲降水域での衛星利用は、数値予報課においても重要課題となっているものの、開発要員の不足によりまだ手がつけられていない。気象研において研究・開発したシステム・情報は、数値予報課での開発・現業化に大いに貢献する。

赤外サウンダの放射計算コードの独自開発を継続して行うことにより、最新の知見や技術を取り入れた研究ができるようになり、また現業利用されている放射コード(RTTOV)の検証や問題点の抽出が可能になる。

③アクティブセンサーによるデータの同化技術の開発

衛星搭センサーを対象としたOSSEは、JAXAやNICTなどの衛星・センサー開発機関が計画している衛星プロジェクトを評価するための重要な判断材料を提供することが可能である。そのため衛星搭載風ライダーは、JAXA・NICTと共同研究を結び、同化・センサシミュレータ・衛星運用情報をお互いに交換しながら、OSSEを実施している。

2.今後の研究の進め方

  

本研究課題は、今年度をもって終了する。

H26年度から開始される気象研究所次期中期計画の「台風の進路予報・強度解析の精度向上に資する研究」サブ課題1:全球及び非静力領域モデルを用いた台風進路予報の精度向上に関する研究の一部として引き継がれる予定である。

3.自己点検

(1)計画に対する進捗度

気象研のスパコンの縮退運転のため、NAPEX関係の研究で、若干の遅れを生じている部分もあるが、全体としてほぼ達成されている。

(2)研究手法の妥当性

データ同化手法の高度化に関する研究と衛星データ同化技術の高度化に関する研究の2つの副課題に沿って研究を推進した。本研究計画のために本庁数値予報課から研究所に「全球大気データ同化実験システム」(MRI-NAPEX)を移植したことにより、研究成果を現業数値予報システムに業務化して解析・予報精度の向上に直接的に寄与させることが可能になった。

(3)成果の施策への活用・学術的意義
(副課題1)データ同化手法の高度化に関する研究

全球大気データ同化は、気象研究所が取り組む新しい分野の研究課題でありその学術的意義は大きい。研究成果は現業数値予報に実用化できるレベルの研究を継続することが重要な意味を持つ。

全球アンサンブル同化システムを用いることにより,アンサンブル計算から得られた各種統計値を用いた誤差分散の推定といった同化システムの高度化,感度実験を通した数値モデルの改善への貢献が期待できる.また,アンサンブル同化システムではアジョイントモデルの構築が不要なため,比較的容易に観測システムシミュレーション実験を行うことができ,衛星を含めた観測計画の立案にも大きく寄与することができる.

予報誤差の原因を特定する場合、原因が予報モデルにあるのか、初期値にあるのか、区別することが困難である。これに対し、他の数値予報センターの初期値から気象庁の全球モデルを実行することにより、予報誤差の原因をある程度区別することができる。このような研究のアイデアは独創的であり、同様の先行研究は少ない。また予報が大きく外れる原因の調査は、THORPEX研究等が進めている予測可能性研究に貢献している。

(副課題2)衛星データ同化技術の高度化に関する研究

静止衛星搭載の赤外イメージャの雲域での輝度温度同化手法は、適用可能な大気条件は限られるものの、異なるタイプの赤外センサーでの有効性が確認できた。手法を高度化し適用範囲を広げ、現業データ同化システムに導入していく。

(4)総合評価

データ同化手法の高度化に関する研究と衛星データ同化技術の高度化に関する研究の2つの副課題に沿って研究を推進した。全体として当初の目標に沿った研究を遂行し、一部に遅れは見られるものの概ね期待した成果が得られた。また、本庁数値予報課から研究所にMRI-NAPEXを移植したことにより、研究成果を現業数値予報システムに業務化して解析・予報精度の向上に直接的に寄与させる「全球大気データ同化実験システム」ことが可能になった。

本研究課題では、これまでのところ概ね期待した成果が得られており、この成果を生かし、台風進路予報の精度向上に重点的に取り組むため、平成25年度をもって本研究課題を終了し、新たな重点研究の一部として平成26年度から開始することとしたい。

4.参考資料

4.1 研究成果リスト
(1)査読論文 :11件

Bauer, P., T. Auligne, W. Bell, A. Geer, V. Guidard, S. Heilliette, M. Kazumori, M.-J. Kim, E. H.-C. Liu, A. P. McNally, B. Macpherson, K. Okamoto, R. Renshaw, L.-P. Riishojgaard, 2011: Satellite cloud and precipitation assimilation at operational NWP centres. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., 137: 1934-1951, doi: 10.1002/qj.905.

Calil, P. H. R., S. C. Doney, K. Yumimoto, K. Eguchi, and T. Takemura: Episodic Upwelling and Dust Deposition as Bloom Triggers in Low Nutrient Low Chlorophyll Regions, J. Geophys. Res., 116, C06030, 2011.

Eguchi, K., I. Uno, K. Yumimoto, T. Takemura, T. Y. Nakajima, M. Uematsu and Z. Liu: Modulation of Cloud Droplets and Radiation over the North Pacific by Sulfate Aerosol Erupted from Mount Kilauea, SOLA, 7, 77-8-, 2011.

Hara, Y., I. Uno, A. Shimizu, N. Sugimoto, I. Matsui, K. Yumimoto, J. Kurokawa, T. Ohara and Z. Liu: Seasonal characteristics of spherical aerosol distribution in eastern Asia: Integrated analysis using ground/space-based lidars and a chemical transport model, SOLA, 7, 121-124, 2011.

Ishibashi, T., 2011 : Tangent linear approximation based observation data impact estimation in 4D-Var.Q. J. R. Meteorol. Soc. , 137, 1898-1912.

Itahashi, S., Uno, I., Yumimoto, K., Irie, H., Osada, K., Ogata, K., Fukushima, H., Wang, Z., and Ohara, T.: Up/Down trend in the MODIS Aerosol Optical Depth and its relationship to the Sulfur Dioxide Emission Changes in China during 2000 and 2010, Atmos. Chem. Phys. Discuss., 11, 21971-21993, 2011

Itahashi, S., I.Uno, K.Yumimoto, H.Irie, K.Osada, K.Ogata, H.Fukushima, Z.Wang, and T.Ohara, 2012: Interannual variation in the fine-mode MODIS aerosol optical depth and its relationship to the changes in sulfur dioxide emissions in China between 2000 and 2010, Atmos. Chem. Phys., 12, 2631-2640, doi:10.5194/acp-12-2631-2012.

Okamoto, K., T. McNally and W. Bell, 2013: Progress towards the assimilation of all-sky infrared radiances: an evaluation of cloud effects. Accepted to Quart. J. Roy. Meteor. Soc.

Okamoto, K., 2012: Assimilation of overcast cloudy infrared radiances of the geostationary MTSAT-1R imager. Quart. J. Roy. Meteor. Soc., doi: 10.1002/qj.1994.

Uno, I., K. Eguchi, K. Yumimoto, Z. Liu, Y. Hara, N. Sugimoto, A. Shimizu, and T. Takemura: Large Asian dust layers continuously reached North America in April 2010, Atmos. Chem. Phys., 11, 7333-7341, 2011.

Yamaguchi, M., T. Nakazawa, and S. Hoshino, 2012: On the Relative Benefits of a Multi-Centre Grand Ensemble for Tropical Cyclone Track Prediction in the Western North Pacific. Q. J. R. Meteorol. Soc., 138, 2019-2029.

Yamaguchi, M., T. Nakazawa, and K. Aonashi, 2012: Tropical cyclone track forecasts using JMA model with ECMWF and JMA initial conditions, Geophys. Res. Lett., 39, L09801.

Yumimoto, K. and T. Takemura: Direct Radiative Effect of Aerosols Estimated Using Ensemble-Based Data Assimilation in a Global Aerosol Climate Model, Geophys. Res. Lett., 38, L21802, 2011.

(2)査読論文以外の著作物(翻訳、著書、解説):9件

Ishibashi, T., 2011 : Cloudy radiance assimilation with extension of control variables in 4D-Var. CAS/JSC WGNE Research Activities in Atmospheric and Oceanic Modelling, 41, 1.11-1.12.

Ishibashi, T., 2011 : Effect of basic state update in the JMA global 4D-Var. CAS/JSC WGNE Research Activities in Atmospheric and Oceanic Modelling, 41, 1.13-1.14.

Ishibashi, T., 2012: Simplified basic state update in the JMA global 4D-Var. CAS/JSC WGNE Research Activities in Atmospheric and Oceanic Modelling., 42, 1.7-1.8.

Ishii, S., T. Iwasaki, M. Sato, R. Oki, K. Okamoto, T. Ishibashi, P. Baron and T. Nishizawa, 2012: Future Doppler lidar wind measurement from space in Japan, Proceedings of SPIE, Kyoto, Japan, 29 October - 1 November 2012.

Okamoto, K, T. McNally and W. Bell, 2012: Cloud information from high spectral resolution IR sounders, EUMETSAT NWP SAF Visiting Scientist Report, NWPSAF-EC-VS-022, http://research.metoffice.gov.uk/research/interproj/nwpsaf/vs_reports/nwpsaf-ec-vs-022.pdf, pp. 34.

石橋俊之, 2013: 観測システムシミュレーション実験(OSSE), 天気(受理)

上野充, 山口宗彦, 2012: 図解・台風の科学, ブルーバックス, 講談社, 238pp.

大野木和敏, 原田やよい, 古林慎哉, 釜堀弘隆, 小林ちあき, 遠藤洋和, 石橋俊之, 久保田雅久, 芳村圭, 三好建正, 小守信正, 大島和裕, 2012: 第4回WCRP再解析国際会議報告. 天気, 59(11), 1007-1016

笹野泰弘, 祖父江真一, 江淵直人, 岡本幸三, 佐藤正樹, 沢田治雄, 中村健治, 早坂忠裕, 本多嘉明, 2013: わが国の今後の衛星観測計画について, 天気, 60, 433-444. 

山口宗彦, 2011: 台風進路予報における初期値問題, 天気, 58, 1082-1082.

山口宗彦, 2013: ベータドリフト, 天気, 60, 133-134

山口宗彦, 2013: 台風の進路予報, 台風研究の最前線(下), 気象研究ノート, 227. 15-36.

(3)学会等発表
ア.口頭発表

・国際的な会議・学会等:13件

Aonashi, K. et al, 2012: New GSMaP Over-Land Precipitation Retrieval Algorithm, 18th AMS conference on Satellite Meteorology and Oceanography, New Oreans, USA, Jan. 22-26, 2012.

Ishibashi, T: Diagnosis of Data Assimilation Systems: Observation Impact Estimation, Error Covariance Matrix Optimization, and Analysis Error Estimation, 4th International Conference on Reanalyses, Silver Spring, Maryland, USA, May 7-11, 2012.

Ishibashi, T: Estimation of linear observation impact and its applications, 5th WMO Workshop on the Impact of various Observing Systems on Numerical Weather Prediction, Sedona, Arizona, USA, May 22-25, 2012.

Okamoto, K., T. McNally, W. Bell, 2012: Assimilation of cloudy radiances from satellite infrared imagers and sounders. AICS international workshop on data assimilation, Kobe, Japan, 26-27 February 2013.

Okamoto, K., Y. Tahara, and M. Kachi, 2012: JMA and Jaxa plans. 18th international ATOVS Study Conference, Toulouse, France, 21-27 March 2012.

Yamaguchi, M., 2011: Initial condition sensitivity of typhoon track prediction in the western North Pacific, WMO workshop on tropical cyclone ensemble forecasts, December 2011.

Yamaguchi, M., 2012: Dynamical mechanism of the growth of singular vectors for tropical cyclones, Seminar at the National Taiwan University, November 2012. (Taipei, Taiwan)

Yamaguchi, M., 2012: A study on typhoon track prediction using the TIGGE and YOTC data, Seminar at the National Taiwan University, November 2012. (Taipei, Taiwan)

Yamaguchi, M., 2012: Progress related to SWFDP in Southeast Asia, 9th Asian THORPEX Regional Committee Meeting, November 2012. (Nanjing, China)

Yamaguchi, M., T. Nakazawa, and S. Hoshino, 2012: On the relative benefits of Multi-Centre Grand Ensemble for tropical cyclone track prediction in the western North Pacific, 4th THORPEX Asian Science Workshop, November 2012. (Nanjing, China)

Yamaguchi, M., T. Nakazawa, and K. Aonashi, 2012: Tropical cyclone track forecasts using JMA model with ECMWF and JMA initial conditions, 4th THORPEX Asian Science Workshop, November 2012. (Nanjing, China)

Yamaguchi, M., T. Nakazawa, and K. Aonashi, 2012: New approach to diagnose tropical cyclone track prediction errors, 30th Conference on Hurricanes and Tropical Meteorology, April 2012. (Ponte Vedra Beach, USA)

Yumimoto K. and T. Takemura: Development and Preliminary Results of SPRINTARS/4DVAR Aerosol Data Assimilation System, 10th AeroCom Workshop, Fukuoka, Japan, October 3-6, 2011.

Yumimoto K.: Inverse Estimate of Chinese CO Emissions with Forward Sensitivity and Green’s Function Method, 3rd International Workshop on Emission Inventory in Asia, Yokohama, Japan, February 24-25, 2012, Invited. (予定)


・国内の会議・学会等:21件

青梨和正、石元裕史、劉國勝2011:新しい陸上のマイクロ波放射計降水リトリーバルアルゴリズムの開発(その2), 日本気象学会2011年春季大会予稿集,B154.

青梨和正2011:新しい陸上のマイクロ波放射計降水リトリーバルアルゴリズムの開発(その3), 日本気象学会2011年秋季大会予稿集,B111.

青梨和正, 2012:新しい陸上のマイクロ波放射計降水リトリーバルアルゴリズムの開発(その4), 日本気象学会2012年春季大会予稿集,B401.

石橋俊之, 2011:4D-Varにおける評価関数の2次形式を保持した基本場更新の効果.日本気象学会春季大会2011年度講演予稿集,B408.

石橋俊之, 2011:非線形性の強い観測データの全球大気解析での利用.日本気象学会2011年度秋季大会度講演予稿集,B206.

石橋俊之, 2012: 随伴演算子による観測データのインパクト評価とその応用, 日本気象学会2012年度秋季大会, 2012年10月5日, 日本気象学会, 札幌市

石橋俊之, 2013: 複数のOSSE手法による仮想観測システムの評価, 日本気象学会2013年度春季大会講演予稿集, C205.

上清直隆、2011:主成分を利用したAIRSデータによる気温・水蒸気プロファイルのリトリーバル, 日本気象学会春季大会2011年度講演予稿集,B405.

上清直隆、2011:主成分を利用したAIRSデータによる気温・水蒸気プロファイルのリトリーバル(放射モデルによる違い:MITRANとRRTTOVの比較), 日本気象学会秋季大会2011年度講演予稿集,B207.

上清直隆、主成分を利用したAIRSデータによる気温・水蒸気鉛直分布リトリーバル(全球データ同化予報実験にむけて),日本気象学会春季大会(つくば),2012年5月26日

上清直隆、主成分を利用したAIRSデータによる気温・水蒸気鉛直分布リトリーバル(全球同化予報実験による確認),日本気象学会秋季大会(札幌),2012年10月5日

岡本幸三他、2011: 全球数値予報における次期静止気象衛星の同化 日本気象学会春季大会2011年度講演予稿集,C457.

岡本幸三他、2011: 雲・降水域の衛星輝度温度データの同化に向けて(その2)日本気象学会秋季大会2011年度講演予稿集,B209.

岡本幸三他、2011: 数値予報データ同化における衛星搭載風観測データのインパクト ドップラーライダーによる宇宙からの風観測を考える研究会

岡本幸三, 2012: ECMWFにおけるマイクロ波イメージャの雲・降水域同化(all-sky同化), GSMaP研究会, 京都, 2012年9月10日

岡本幸三, 2013: 気象庁における地球観測衛星データの利用. 日本地球惑星科学連合大会, 幕張, 2013年5月20日

岡本幸三, 石橋俊之, 石井昌憲, Philippe Baron, 2013: 衛星搭載風ライダーの観測システムシュミレーション実験(OSSE). 日本気象学会春季大会2013年度講演予稿集,C458.

沢田雅洋, 山口宗彦, 2012: 非軸対称な熱源が台風進路へ及ぼす影響について, 日本気象学会秋季大会, 2012年10月 (札幌)

山口宗彦, 2011: 台風進路予報における初期値問題, 第5回気象庁数値モデル研究会・第5回日本気象学会THORPEX研究連絡会研究集会.

山口宗彦, 2012: 台風進路予報誤差の診断, 日本気象学会春季大会, 2012年5月 (つくば)

山口宗彦, 沢田雅洋, 2012: 南北方向に傾いた台風渦の移動, 日本気象学会秋季大会, 2012 年 10 月 (札幌)

弓本桂也,2011:グリーン関数法を用いた一酸化炭素排出量の逆推定,日本気象学会秋季大会2011年度講演予稿集,D172.

弓本桂也、板橋秀一:WRF-ChemモデルへのJoint-Simulatorの利用、Joint-simulator利用ワークショップ、東京大学、2013年1月.(Oral, Invited)

イ.ポスター発表

・国際的な会議・学会等:5件

Aonashi, K and Ishibashi, T: Passive Microwave Precipitation Retrieval Algorithm for AMSR2 Using JMA Reanalysis Data, 4th International Conference on Reanalyses, Silver Spring, Maryland, USA, May 7-11, 2012.

Okamoto, K., K. Aonashi, and S. Origuchi, 2013: Assimilation of microwave imagers and precipitation radars in the ensemble-based variational assimilation method. 2013 EUMETSAT Meteorological Satellite Conference, Vienna, Austria, 16-20 September 2013

Okamoto, K., 2012: Assimilation of cloudy infrared radiances of MTSAT-1R imager. 18th international ATOVS Study Conference, Toulouse, France, 21-27 March 2012.

Yumimoto, K and D. J. Jacob: Preliminary Results of the GEOS-Chem/LETKF Data Assimilation System, 5th International GEOS-Chem Meeting, Boston, MA, USA, May 2-5, 2011.

Yumimoto K., T. Takemura, K. Eguchi, and I. Uno: Ensemble based data assimilation with global aerosol climate model, The 8th International Conference on Acid Deposition: ACID RAIN 2011, Beijing, China, June 15-18, 2011.

Yumimoto K. and D. J. Jacob: Impacts of geostationary satellite measurements for CO forecasting: Observation system simulation experiments with GEOS-chem/LETKF, AGU Fall Meeting, San Francisco, CA, USA, December, 14-18, 2011.


・国内の会議・学会等:2件

石元裕史、岡本幸三、岡本 創 2012: AIRS輝度温度データを用いた対流圏中層水蒸気プロファイル推定,日本気象学会2012年秋季大会予稿集,P110.

岡本幸三, T. McNally, W. Bell, 2012: 雲・降水域の衛星輝度温度データの同化に向けて(その3), 日本気象学会秋季大会2012年度講演予稿集,P1a1.

山口宗彦、青梨和正他, 2012:マイクロ波放射計降水リトリーバルのための海上の輝度温度補正, 日本気象学会2012年秋季大会予稿集,P308

4.2 報道・記事

山口宗彦:台風の解説, 文化放送(大村正樹のサイエンスキッズ), 放送有り(平成24年10月6日)

山口宗彦他:台風の航空機観測について, フジテレビ(とくダネ), 放映有り(平成24年8月30日)

山口宗彦他:台風の航空機観測について, フジテレビ(リアルスコープZ), 放映無し(平成24年7月31日)

山口宗彦他:台風の全般的なはなし, 読売新聞, 記事掲載有り(平成24年7月17日)



All Rights Reserved, Copyright © 2003, Meteorological Research Institute, Japan