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気象研究所研究開発課題評価報告

大気化学環境変動とそのメカニズムの解明に関する研究

中間評価

評価年月日:平成24年3月21日
  • 副課題1:温室効果ガスの時空間変動の実態把握に関する観測研究
  • 副課題2:温室効果ガスの変動メカニズムの解明に関する解析研究
  • 副課題3:高度化陸域生態系過程を導入した気候モデルによる大気―陸面相互作用に関するモデル研究

研究代表者

松枝秀和(地球化学研究部 第一研究室長)

研究期間

平成21年度~25年度

中間評価の総合所見

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研究の動機・背景

炭素循環の解明が、地球温暖化予測の精度向上において重要な研究課題の一つになっている。現在、大気の観測データに基づくトップダウン・アプローチによって、地球規模の二酸化炭素等の温室効果ガスの発生・吸収量の見積りが行われているが、その結果には依然として大きな誤差が含まれている。より確度の高い炭素収支の評価には、さらに多くの観測データを長期にわたって蓄積することが必要とされている。

本研究では、航空機を利用した立体的な観測や連続測定による高時間分解能観測による時空間変動の実態把握とその変動要因の解析を通して、陸域や海洋における地域別の発生・吸収源を再評価することを目的とする。また、炭素循環変動に対する気候要因を解析するために、陸域生態系モデルの高度化とそれを導入した気候モデルを開発する。

研究の成果の到達目標

定期航空機や地上大気観測所における温室効果ガスの連続測定を継続し、これまでにない高密度(~数分/数10km)な長期観測データベースを構築する(副課題1)。観測データベースを用いて様々な時空間スケールの変動を把握し、その輸送メカニズムを解明するために、気象データ解析・輸送モデル実験等による診断解析手法を確立する。また、本研究で得られた観測データを炭素循環モデルに導入して地域別の発生・吸収源の分布と変動を再評価する(副課題2)。炭素循環変動に対する気候要因を解析するために、陸域生態系モデルの高度化とそれを導入した気候モデルを開発する。(副課題3)。

(副課題1)温室効果ガスの時空間変動の実態把握に関する観測研究

①温室効果ガスの長期観測

定期航空機による上空大気と鉛直分布の観測及び気象研究所構内における接地境界層大気の連続観測を継続し、地表から上空までの二酸化炭素を中心とする温室効果ガス(CH4,N2O等)とその関連微量気体(CO,H2等)の濃度分布を高頻度で収集する。これによって、これまでにない高密度(~数分/数10km)な長期観測データベースを構築し、WMO/WDCGG等の世界データセンターによる公開を通して関連分野(モデルやリモートセンシング観測等)との共同研究を推進する。

②大気ラドン濃度の長期観測

アジア大陸の人為発生源からのアウトフローによる変動の実態を把握するために、気象庁の綾里、与那国島、南鳥島の3箇所の大気観測所において、高精度高時間分解能の新型ラドン測定装置を用いた大気中ラドン濃度の連続観測を継続する。これによって、長期にわたる高密度な観測データを収集してデータベースを構築する。

③観測技術の標準化と高度化

観測データの国際標準化とその検証のため、気象庁との標準ガス検定比較実験を定期的に継続し、測定精度の長期的維持を図る。また、従来型の個別測定装置による煩雑な観測監視手法を改善するために、多種類の温室効果ガスを同時に測定できる新たな精密測定装置の開発を進める。

(副課題2)温室効果ガスの変動メカニズムの解明に関する解析研究

①温室効果ガスの時空間変動の解析

観測で得られた高分解能のデータベースを利用して、温室効果ガス濃度の時系列解析を行い、数日スケールの短周期変動から季節変動及び長期的な増減傾向を評価する。特に、航空機観測で得られる二酸化炭素濃度の変動については、境界層から自由対流圏及び下部成層圏までの高度別の時系列解析を行い、濃度変動の地域的特性とその年々変化を明らかにする。

②気象データによる物質輸送メカニズムの解析

観測された温室効果ガス濃度の変動に対する物質輸送の寄与を評価するため、気象庁再解析気象データを利用した解析や流跡線解析及び化学トレーサー(ラドン等)解析等の手法を適用して、圏界面付近の大気交換、対流圏内の長距離輸送、及び接地境界層内の鉛直混合等の輸送メカニズムを解明する。

③モデル実験による発生・吸収源の解析と再評価

観測された温室効果ガスの変動を導く発生・吸収源の影響を評価するため、全球化学輸送モデルを用いた地域別の放出実験を行い、広域拡散分布の解析を行う。また、本研究で得られた高密度な観測データを全球炭素循環モデルに使用して、地域別のフラックスの分布と変動を再評価する。

(副課題3)高度化陸域生態系過程を導入した気候モデルによる大気―陸面相互作用に関するモデル研究

①陸域生態系モデルの高度化

現存の陸域生態系モデルに対して、動的植生変動過程や森林火災などのバイオマス燃焼過程等を新たに導入し、モデルの高度化を図る。

②気候モデルの検証

高度化された陸域生態系モデルを導入した3次元全球および地域気候モデルについて、大気の温室効果ガス観測、生態系フラックス観測、及びリモートセンシング観測等との比較検証を行う。

③気候モデルを用いた炭素循環変動要因の解析

気候モデルを用いた数値実験の結果を解析し、地域別の炭素収支の変動とそれに影響を与える気候要因を評価する。

研究の現状

(1)進捗状況

(副課題1)温室効果ガスの時空間変動の実態把握に関する観測研究

① 温室効果ガスの長期観測

定期航空機を利用した二酸化炭素連続観測とフラスコサンプリングによる毎月2回の観測を継続し、それらの測定値に対する品質評価手法を確立して、データベースの高精度化を進めた。また、気象研究所鉄塔の3つの高度(25m、100m、200m)と露場の高さ1.5mの温室効果ガス濃度の連続観測も継続し、境界層内の高度別の測定データを取得した。但し、鉄塔の撤去に伴い鉄塔を利用した観測は2010年の夏季に終了した。鉄塔の観測データは、GOSAT観測や地上FTS観測の検証にも活用し、共同研究を推進した。

② 大気ラドン濃度の長期観測

気象庁の綾里・与那国島・南鳥島の3つの大気観測所において大気ラドン濃度の連続測定を継続し、一年を通してほぼ欠損なく観測データを蓄積した。また、3つの観測所に設置されたラドン測定器の相互比較を行い、高精度測定が維持されていることを確認した。さらに、ラドンと気象庁で取得している微量気体の濃度変動を比較解析するために、各観測所で得られるすべての微量気体成分の測定値を含めた統合データベース化を進めた。

③ 観測技術の標準化と高度化

気象庁との標準ガス及びオゾン計の比較検定実験を年に2回定期的に実施した。一方、従来型の測定手法とは異なる新たな分光型測定器を導入し、CRD型の二酸化炭素・メタン測定装置とVURF型の一酸化炭素測定装置について流量制御機能を組み込んだ精度試験を実施した。


(副課題2)温室効果ガスの変動メカニズムの解明に関する解析研究

① 温室効果ガスの時空間変動の解析

定期航空機で得られたデータベースを利用して、圏界面付近の二酸化炭素濃度変動を把握するために、気象庁再解析気象データ(JCDAS)を用いた渦位(PV)による上部対流圏と下部成層圏の分別解析の手法を整えた。一方、対流圏内の二酸化炭素濃度の高度別の変動に対しては、JCDASを用いたバルクリチャードソン数による境界層(PBL)の上下層を分別して時系列解析する手法の有効性を検討した。

② 気象データによる物質輸送メカニズムの解析

定期航航空機観測のデータベースを利用して、二酸化炭素の全球規模の循環を把握するために、JCDASを用いた等価緯度解析の手法の導入し、それを用いた高度ー緯度断面の全球マッピング図の作成を進めた。一方、ラドン濃度変動と流跡線解析及び天気図を組み合わせた解析を適用して、アジア大陸から流出する微量気体の長距離輸送メカニズムの解析を実施した。

③ モデル実験による発生・吸収源の解析と再評価

東アジア大陸の微量気体発生源の定量的な見積もりを行うために、ラドンの観測データを利用したラドン・トレーサー法の適応を検討し、放出量の評価を行った。

一方、全球の二酸化炭素の発生・吸収源の評価のために、3次元の二酸化炭素輸送モデル(NICAM-TM) を導入し、モデル比較実験を通して輸送の性能と特徴を調べた。また、NICAM-TMを用いたインバース手法の高度化のために、航空機観測データを初めて利用した予備実験とその結果の解析を実施した。


(副課題3)高度化陸域生態系過程を導入した気候モデルによる大気―陸面相互作用に関するモデル研究

① 陸域生態系モデルの高度化

陸域生態系モデルの高度化のために植生変動インパクト数値実験を実施し、動的植生変動過程導入の影響について検討した。また、陸域物理生物過程最新バージョンを組み込んだ3次元全球気候モデルにおいて、極域大気上層で生じていた不自然な二酸化炭素濃度変動について、力学的移流項および拡散項に関する取り扱いの見直しを行った。

② 気候モデルの検証

陸域物理生物過程モデルのバージョンアップによる精度検証を目的として、オフラインモデル化を行った。また、3次元全球気候モデル数値実験を行い、陸域諸要素に関する衛星観測データとの比較を通してモデル気候場の再現性の検証を行った。

③ 気候モデルを用いた炭素循環変動要因の解析

現実的な大気気候場における大気―陸域相互作用および炭素循環を再現した3次元モデル実験結果を解析して、炭素収支の変動とそれに影響を与える気候要因を調べた。

(2)これまで得られた成果の概要

定期航空機及び気象研究所鉄塔を利用した観測を継続し、高密度・高精度のデータベースを構築して、モデルや衛星観測の検証として関連分野との共同研究が進展した。一方、標準ガスの相互比較実験や、新たな分光型分析計の精度試験により、気象庁の観測業務の進展に貢献した。

気象庁の3つの観測所において大気中ラドンの高精度観測を実施し、東アジア大陸から流出する微量気体の輸送メカニズムを明らかにすると同時に、その発生量を定量的に評価する手法を確立した。

気象データを活用した航空機観測データの解析により、対流圏から下部成層圏にわたる温室効果気体の地球規模の輸送や循環を捉えることができた。また、航空機観測データを利用したインバース法により、熱帯の炭素収支をより精度良く評価できることが分かった。

陸域生態系モデルの高度化を進め、その検証を通してモデルが改善していることがわかった。


(副課題1)温室効果ガスの時空間変動の実態把握に関する観測研究

① 温室効果ガスの長期観測

定期航空機及び気象研究所鉄塔を利用した観測で収集された測定値について、品質評価を行い、高精度のデータベースを構築した。航空機データの一部は、直ちに気象庁が運営する世界気象機関のデータセンター(WDCGG)を通して公開し、モデルや衛星観測との比較研究に有効に活用された。また、鉄塔の観測データも、GOSATやFTS観測の検証として論文発表され、関連の研究分野の進展に貢献した。

② 大気ラドン濃度の長期観測

気象庁の綾里・与那国島・南鳥島の大気ラドン濃度観測の結果、数日スケールの変動と季節変化の特徴及び、それらの変動の地理的な違いを明瞭に把握できた。特に、数日スケールのラドン濃度が上昇するイベントでは、微量気体の濃度も同時に上昇し、東アジア大陸からの汚染空気塊の流出が寒冷前線の発生と移動によって起こっていることが明らかになった。

③ 観測技術の標準化と高度化

気象研究所と気象庁の標準ガス比較実験の結果、両者の観測基準に顕著な変化が生じていないことが検証できた。一方、新たな分光型分析計(WS-CRD、VURF)に精密な流量・圧力制御機能を組み、従来型のGC法に比べて大幅に測定精度を向上さることが可能となった。この新たな測定技術は、H22年度に気象庁で開始された航空機観測における新分析システムに導入され、定常観測業務の確立に貢献した。


(副課題2)温室効果ガスの変動メカニズムの解明に関する解析研究

① 温室効果ガスの時空間変動の解析

定期航空機観測で得られた圏界面付近の二酸化炭素データについて、渦位(PV)による上部対流圏と下部成層圏を分別して時系列解析を行った結果、両者の濃度変動の違いを明瞭に把握することができた。一方、対流圏内の二酸化炭素濃度の変動を従来の高度別に解析する方法ではなく、バルクリチャードソン数で求めた境界層(PBL)で区分する手法を導入し、自由対流圏の季節変動の特徴とその地域的な違いをより正確に捉えることができた。

気象データによる物質輸送メカニズムの解析

気象データ(JCDAS)による等価緯度解析の手法を導入して、定期航航空機観測のデータベースを解析し、月別の高度-緯度断面の全球マッピング図を作成した。その結果、北半球の陸上生態系で引き起こされる地表付近の二酸化炭素変動が、全球規模で上空へと伝播する様子を、観測データから明瞭に示すことに成功した。これまで、全球規模の循環については断片的な観測結果しか得られていなかったが、初めて、年間を通した毎月の全球分布の気候値を得ることができた。

③ モデル実験による発生・吸収源の解析と再評価

東アジア大陸における微量気体の発生源を見積もるために、ラドンの観測データを利用したラドン・トレーサー法の適応手法を確立し、発生量を定量的に算定した。その結果、不確実性の大きなアジアの発生源データベースを再評価するための有効な手法であることが認められた。一方、全球規模の二酸化炭素の発生・吸収源の再評価のために、NICAM-TMモデルを用いたインバース法の予備実験結果を取得した。その結果、航空機観測データを用いることによって、熱帯地域の炭素収支の見積もりの精度を向上できることがわかった。


(副課題3)高度化陸域生態系過程を導入した気候モデルによる大気―陸面相互作用に関するモデル研究

① 陸域生態系モデルの高度化

モデルシミュレーション結果への動的植生変動過程導入時のインパクトについての検証実験により、動的植生変動過程導入の効果と有効性について検討できるデータを取得した。また、力学的移流項および拡散項に関する見直しを行った結果、極域大気上層で生じていた不自然なCO2濃度変動を解消することができた。

② 気候モデルの検証

オフラインモデル化を行った結果、最新バージョンで用いている陸域物理生物諸過程のパタメータ値の妥当性の確認が出来た。また、3次元全球気候モデル数値実験の結果、降水量、地上気温、および短波放射量などの陸域物理生物過程の変動に強い影響を与える気候要素について、衛星データとの比較検証を行うに十分な精度の数値実験結果が得られていることがわかった。

③ 気候モデルを用いた炭素循環変動要因の解析

現実的な大気気候場における炭素循環を再現した3次元モデル実験結果を解析した結果、観測値に現われている大気中二酸化炭素濃度の年々変動の特徴を概ね再現できていることが確認できた。

(3)当初計画からの変更点(研究手法の変更点等)
  • 鉄塔の撤去に伴い、接地境界層内の高度別の観測は2010年の夏季に終了したが、地上1.5mの観測はこれまで通り継続して、長期データを蓄積し、年々の変動を解析する。
  • これまで大気中ラドンの観測は気象庁の3つの観測点で実施し、その観測結果がアジア大陸の発生源の評価に有効であることが認められたことから、さらに、父島においてもラドンの予備観測を実施し、長期観測地点として有効性の検証を進めることとした。
(4)成果の他の研究への波及状況

本研究で得られた観測データベースは、炭素循環研究に関連するモデルや衛星観測の検証に有効に活用され、それらの結果は論文として発表された。

2.今後の研究の進め方
  • 定期航空機及び気象研究所露場のおける微量気体の高密度・高精度の観測を今後も継続し、データベースを更新しつつ、その利用による関連分野との共同研究をさらに推進する。
  • 観測データの品質を長期的に維持するために、気象研究所と気象庁との定期的な標準比較実験を今後も継続する。一方、新たに導入された分光型分析計による運用が開始されたが、それらの長期的な精度維持についての検証をするために、測定データの品質管理の解析に着手する。
  • 現在実施しているラドンの観測をさらに継続して長期的にデータを蓄積し、確立したラドン・トレーサー法を適用して、東アジア地域の発生源の長期的増加や年々変動の実態を評価する。また、父島におけるラドンと微量気体の観測を開始して、データの空白地域を埋め、東アジア大陸の微量気体の放出とその流出メカニズムの実態をより詳しく調べる。
  • 定期航空気による観測を継続すると同時に、過去に得られた航空機観測データも併せて長期間にわたるデータセットを構築し、エルニーニョ・南方振動(ENSO)現象等の気候変化に応答する数年スケールの大規模なCO2循環の年々変動の実態を解明する。
  • 大規模なCO2循環の年々変動の要因を解明するために、航空機データを利用したNICAM-TMモデルによるインバース法の長期解析研究を実施し、地域別の発生・吸収源の変動とその影響を再評価する。

3.自己点検

(1)到達目標に対する達成度

おおむね順調に進捗している。

(2)研究手法の妥当性

定期航空機を利用した立体的な観測やラドンの連続測定等の高時間分解能観測による時空間変動の実態把握とその要因解析が順調に進んでおり、当初目的した地域別の発生・吸収源を評価する目標に向けて成果も着実に上がっていることから、本研究手法は妥当である。

(3)成果の施策への活用・学術的意義

本研究で取り組んできた新たな分光型分析計の精度試験や定期的な標準ガス比較実験の結果は、気象庁の環境気象業務の観測技術の高度化と観測データの長期的な品質管理に大きく貢献してきた。特に、H22年度の気象庁の航空機観測業務の開始に当たっては、本研究の航空機観測技術と最新の測定技術に関する成果が有効に活用され、定常観測業務として順調な運用に結びついた。

定期航航空機による高密度な高精度観測では、世界でも例のない極めて膨大な上空のデータが取得されている。本研究では、気象データを活用した観測データ解析による地球規模の二酸化炭素分布のマッピングを行い、これまで断片的であった上空の二酸化炭素循環に関する知見を大きく進展させ、学術的に意義ある成果と考えられる。また、これらの観測データが3次元の輸送モデルや衛星観測等の関連分野の研究にも有効に利用されており、今後も継続した観測データの収集が大いに期待されている。なお、航空機観測データの一部は気象庁の運営するWMOデータセンター(WDCGG)に提供し、その業務に貢献した。

大気中ラドンの観測はこれまでも西太平洋で実施されてきたが、微量気体の濃度変動と併せて観測した例は非常に少ない。また、本研究では、このラドンと微量気体の同時観測データを用いて、ラドン・トレーサー法を西部北太平洋域に初めて適応することによって、大陸の微量気体発生量の定量的な評価手法を確立した。これは、中国を中心とする東アジアの発生源評価に大きな不確実性が残されているが、それらを全く独立した方法で検証する手法を新たに導入した点で、この成果の学術的な意義は重要と考えられる。

(4)総合評価

ラドンの観測による東アジアの微量気体発生源の評価手法の確立や、航空機観測データの解析による大規模な二酸化炭素循環のマッピングなど特筆すべき成果が得られ、論文の投稿も進んでおり、次の目標である年々変動の実態把握とその変動要因の解明に向けた成果の達成が期待できる。

また、今後推進していく航空機観測データを導入したインバース法による全球の炭素収支の再評価については、従来の評価を改善できる結果も出始めており、本研究を実施する意義は大きい。

以上から、本研究を引き続き着実に遂行していく必要がある。



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