階層的な地球システムモデリングに関する研究


 数値予報モデル開発に関連して、地球の大気、海洋、陸面・雪氷、大気微量成分など地球システムを構成する各要素を総合的に扱うとともに、現象は時空間的に階層構造をもっていることから、それぞれの階層についてのモデル開発を行う「階層的な地球システムモデル」の考え方に基づいて研究を進めます。これにより、地球温暖化予測、季節予報、海況監視予測、大気微量成分の監視予測、台風や集中豪雨等の顕著現象等に用いられる数値予報モデルの予測精度を向上させることを目指します。

          
  • 副課題1:短期から長期予測課題に応用可能な地球システムモデルの開発に関する研究
  • 副課題2:海洋予測技術の開発及び海洋現象の機構解明に関する研究
  • 副課題3:海洋及び大気海洋結合系のデータ同化に関する研究
  • 副課題4:週間から季節予報のための予測システム開発に関する研究
  • 副課題5:大気微量成分の監視予測技術と気象・気候影響に関する研究

M課題 概念図


研究期間

2024年度~2028年度


研究代表者

全球大気海洋研究部長



研究目標

 地球システムの構成要素の関連性とそれらの相互作用を適切に扱い、地球システムの様々な時空間スケールの現象の予測への影響を評価するとともに、高解像度化や初期値化について利用可能性を検討する。また、地球システム要素のコンポーネント化や計算の効率化を図ることにより、現業数値予報モデルを改善するとともに、次世代の現業数値予報モデルの仕様に係る指針を得る。

副課題1 ① モデル気候値と過去気候変動の再現性の向上・検証、及び国際モデル相互比較 
・確信度の高い気候予測を行うために、必要なモデル開発を通じて、地球システムモデル(ESM)における現在気候の再現精度を高める。CMIP7等の国際プロジェクトへの参画等を通じて、気候変動予測の不確実性の低減と信頼性の高い科学的評価を目指す国際的な取り組みに貢献する。
② 詳細な地域気候と顕著な地球環境イベントを再現する高解像度 ESM 開発
・高解像度モデルを用いた気候実験を通して、地域規模の気候予測にも利用可能なプロダクト作成に向けた開発課題の整理を行う。
③ 短期〜10年規模変動を高精度に再現する多圏間相互作用の導入と評価
・地球システムモデルの各構成要素とそれらの相互作用を高精度に実現するモデルを構築する上で必要な開発を行う。モデル利活用の裾野拡大を図るため、地球システム各要素からの影響が適切に評価可能なモデルの構築を目指す。
副課題2 ① 将来の現業業務等に資する海洋予測技術の開発
・ 気象庁次期スパコンシステムにおける現業システム(季節予測システム及び日本沿岸海況監視予測システム)の更新に向けて、全球海洋モデル及び日本沿岸海況監視予測システムの改良を行う。
・ダウンスケーリング等の手法により、様々な時空間スケールや極端現象の情報提供を可能にする海洋予測技術を開発する。
・大気海洋結合モデルを用いた、大気及び海洋の短期予報等への結合効果の影響調査のための研究を実施する。
② 海洋モデルの安定性、利便性、精度、及び速度の向上
・ 水塊等の保存性の向上や、海氷の精緻化などによりバイアスを低減するとともに、より現実的な海洋物理過程を再現可能にするために、物理プロセス及びパラメタリゼーションを改良する。
・多様なユーザーによる海洋モデルの円滑な実行、活用のために、前処理・後処理・解析環境の整備や出力の拡充等の利便性向上を行う。
・海洋モデルの開発効率を向上させるため、他機関及び本庁との連携も見据えた海洋モデル開発基盤の強化を行う。
・CPUの速度向上に頼らない高速化技法を取り入れて海洋モデルの高速化を図る。
③ 海洋熱波等の極端現象や長期変動の機構解明
・気候変動に関わる海洋循環や海面水位等の変動プロセスを解明する。
・海洋熱波等の様々な時空間スケールの極端現象の検出、同定、メカニズム評価を行う。
副課題3 ① マルチスケールに対応する新たな海洋データ同化手法の開発
・弱拘束条件の導入や高解像度衛星観測データの有効活用などにより、日本近海から全球海洋及び大気海洋結合系に適応できる統合的なデータ同化システムを開発する。
② 大気海洋結合系のデータ同化と数値予測に関する研究
・大気海洋結合同化システムについて、海面水温変動の再現性向上等を目指した改良を行い、解析性能を評価して、気候データ同化(長期再解析)への利用可能性、及び、初期値作成手法としての結合予測へのインパクトを評価する。
③ 海洋観測の活用と海洋変動のメカニズム研究
・海洋観測の効率化や最適化に向け、海洋観測データのインパクト評価を実施するとともに、観測システムの評価に関する国際協力を継続し、国連海洋科学の10年プロジェクトSynObsに貢献する。
・海洋長期再解析データなどを用いて、海洋変動のメカニズムを明らかにする。
④ 現業海洋同化システムの共同開発
・気象庁次期スパコンシステムにおける現業システム(季節予測システム及び日本沿岸海況監視予測システム)の更新に向けて、全球海洋データ同化システム及び日本沿岸海況監視予測システムの改良を行う。
副課題4 ① 地球システム要素を含む週間・季節予測システムの技術開発とフィジビリティ研究
・地球システムモデルを使用した週間から季節予測システムの構築・開発を行う。
・オゾン・エーロゾル・波浪等の地球システム要素の週間から季節予測での利用に向けたフィジビリティ研究を行う。
② 週間から季節スケールの台風・極端現象の予測可能性評価と予測改善のための開発・研究
・台風・極端現象の予測可能性の評価を行う。
・アンサンブル予測、確率予測の改善に資する研究を行う。
・モデル高解像度化による、予測への影響評価を行う。
③ 海洋観測・初期値の週間から季節予測への影響評価
・海洋同化システム、大気海洋結合同化システム、海洋観測システムの予測への影響評価を行う。
副課題5 ① 化学輸送モデルの精緻化及び統合化
・エーロゾル、オゾン、温室効果ガス等(大気微量成分)の動態をシミュレートする化学輸送モデルを高度化するとともに、地球システムモデルの構築を進めつつ、大気化学統合モデルの開発を継続する。
・季節予報モデルに導入するためのオゾン簡易モデルの開発を進める
・領域化学輸送モデルの改良を継続するとともに、エーロゾルと降水とのフィードバック過程の解明を進める。
② 大気微量成分データ同化システムの精緻化
・エーロゾルデータ同化システムの改良を行い、複数衛星観測データの導入などエーロゾルの監視・予測精度を向上させる。
・深層学習を用いた応用研究(オゾン代理モデル、ダウンスケーリング等)を行う。
・複数衛星観測データの導入など大気微量成分再解析(エーロゾル、二酸化炭素)の精度向上を目指す。


各年度の研究計画

研究計画の詳細は以下のファイルをご覧ください。

2024年度(PDF 300KB)