気候・地球環境変動の要因解明と予測に関する研究


 大気と海洋の物理現象と温室効果ガスの挙動に関する様々な観測データや、気候の変化を再現・予測する数値モデルのシミュレーション結果などを多角的に解析します。 これによって気候や地球環境の変動とメカニズムをよりよく理解し、それらの将来予測の信頼性向上を促すとともに、観測や数値モデルの発展を推し進めます。

          
  • 副課題1:異常気象のメカニズム解明と季節予測可能性の評価
  • 副課題2:地球温暖化予測の不確定性低減
  • 副課題3:大気中温室効果ガスの変動要因・炭素収支の解明
  • 副課題4:海洋の生物地球化学循環と酸性化実態の解明

C課題 概念図


研究紹介

こちらから研究課題の説明をご覧いただけます。


研究期間

2019年度~2023年度


研究代表者

気候・環境研究部長



研究目標

・異常気象の実態解明、季節予測の可能性、地球温暖化、大気と海洋の炭素循環に関する長期かつ高解像度の観測及びモデル実験データベースを作成する
・それらの解析や数値モデリングにより、炭素循環や気候変動の実態とメカニズムの理解を深めるとともに、過去気候再現と将来気候予測の不確実性を評価・低減する。

副課題1 異常気象のメカニズム解明と季節予測可能性の評価
① アジアモンスーンと台風の予測可能性評価
・季節予測システムを用いた実験により、海洋・陸面と相互作用したアジアモンスーンの季節~数年の予測可能性を評価し、そのメカニズムを解明する。
・季節予測システムの再予報実験における台風の発生数等の予測精度を評価し、予測可能性の要因を解明する。
② 極端気象の実態と予測可能性の研究
・長期再解析などのデータ解析と季節予測システムを用いたモデル実験を通して、極端気象の実態と発生メカニズムを明らかにする。
・大気モデルの大規模アンサンブル実験(d4PDF)を用いて、熱波、旱魃、豪雨といった極端事象の発生確率の季節(内)予測可能性を評価し、季節予測システムを用いて大気・海洋結合がそれらの予測可能性にどのような影響を及ぼすかを調べる。
③ 異常気象の実態解明と要因に与える大規模場の影響評価
・長期再解析データ、地上観測データ、モデル実験等を利用して、今後発生する異常気象の発生機序の迅速かつ的確な情報提供に資するために、過去の異常気象の実態と発生機序、温暖化寄与評価について大規模場の観点から研究を行う。
④ 気候データに関する研究
・異常気象の実態と発生メカニズムの解析、予測初期値、予測精度評価に必要な、気候研究の基盤となる長期再解析データなどを整備し、品質評価を行う。 また、次世代の長期再解析の品質向上に資する同化インパクト実験や結合同化実験の評価を行う。
副課題2 地球温暖化予測の不確定性低減
① タイムスライス温暖化予測システム
・地球システムモデルを用いた高解像度モデルによる温暖化予測システムを開発し、アンサンブル実験を行い、地域スケールの温暖化予測の不確実性を評価・低減する。また、これをもとに海洋の将来予測プロダクトの検討を行う。
② 十年規模気候変動予測
・地球システムモデルに組み込む初期値化スキームを開発し、十年規模予測実験を行い、全球及び地域スケールの十年規模の気候予測可能性や変動メカニズムについて考察する。また、これにより、モデル開発、初期値スキームの開発、予測情報の不確実性の低減に結びつける。
③ 気候再解析
・気候モデルにより、歴史的観測データを整備・活用した長期気候変動再現システムを開発する。再現実験出力により長期気候変動の理解を進め、観測データに基づく百年スケールの気候変動研究領域を開拓する。
④ CMIP実験の実施と気候変動メカニズム解明
・世界気候研究計画(WCRP)の第6期気候モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)の各種温暖化実験を行い、国際比較のために実験出力をプロジェクトへ提出する。また、マルチモデル(CMIP6、CMIP5)等の各種データセット・実験を解析した結果をモデル開発にフィードバックするとともに、気候変動メカニズムの理解に役立てる。
副課題3 大気中温室効果ガスの変動要因・炭素収支の解明
① 化学トレーサーの時空間変動に関する観測研究
・気象庁の定常大気観測所(綾里、与那国島、南鳥島)や父島気象観測所の観測施設を利用して、ラドン、酸素や、二酸化炭素の炭素・酸素安定同位体比等の複数の大気化学トレーサーの連続観測を実施する。これらのデータと、定常大気観測所で収集されている温室効果ガス濃度のデータを統合して、多種類の微量気体を含む高時間分解能の観測データベースを作成する。
・温室効果ガス測定の標準ガス等の国内相互比較実験に参加し、観測基準や測定精度を評価する。また、実大気を用いた標準ガス調製システムを開発する。
・次世代のレーザー分光型分析計等を利用した観測・較正システムを開発する。
・代替フロンを含むハロカーボン類の連続測定技術を確立する。
② 化学トレーサー観測による炭素収支に関する解析研究
・観測データベースを用いて、ラドン(222Rn)を指標とした清浄大気のデータ選別手法を確立し、温室効果ガスの広域代表性の高い変動を再解析する。
・酸素や二酸化炭素同位体比を用いた解析を実施し、他の手法とも比較検証を行って温室効果ガス濃度の変動要因・炭素収支を定量的に評価する。
副課題4 海洋の生物地球化学循環と酸性化実態の解明
① 高解像度観測や高精度分析による海洋炭素循環と酸性化実態の解明
・水中グライダーによる観測方法と取得されたデータの品質管理技術を確立し、観測結果から時空間的に高解像度の海洋観測データセットを作成する。
・海水のpH 測定における不確かさ低減の手法や、アルカリ度の航走観測技術の確立により、海洋酸性化観測技術を改善する。
② データ解析による海洋物質循環の変動機構解明
・水中グライダーによる観測データから、中規模渦の物理・化学構造や、亜表層の酸素濃度の季節内変動など、海洋観測船では取得が難しい事象について知見を深める。
・気象庁観測船などによる北太平洋の長期観測データを解析することにより、この海域の表層及び中層における二酸化炭素など、生物地球化学パラメーターの変動実態を定量的に評価し、その変動要因を解明する。
・海洋モデルや地球システムモデルの結果を観測結果と比較することにより、これらのモデルの性能を評価する。また、モデルの結果から、観測された海洋への二酸化炭素蓄積や酸性化の進行の実態について理解を深める。


各年度の研究計画

研究計画の詳細は以下のファイルをご覧ください。

2023年度(PDF 929KB)

2022年度(PDF 467KB)

2021年度(PDF 255KB)

2020年度(PDF 563KB)

2019年度(PDF 308KB)