所長あいさつ

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 気象研究所は、気象業務に関する技術の改善・高度化のための研究・開発を行う気象庁付属の研究機関です。


 近年は毎年のように顕著な自然現象が発生し、様々な自然災害をもたらしています。
 昨年度を見ても、7月には梅雨前線などにより北日本を中心に記録的な大雨となり、秋田県や山形県では線状降水帯により土砂災害や河川の氾濫が発生しました。また、8月から9月にかけては動きの遅い台風第10号により西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨となりました。石川県能登では、令和6年能登半島地震による被害からの復興途上のなか9月に線状降水帯による豪雨災害が発生しました。
地震についても、8月には日向灘でマグニチュード7.1の地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて発表され、社会的にも大きな影響を与えました。
また、昨年は一年を通して気温が高く、年間の日本の平均気温は、1898年の統計開始以降で最も高くなりました。
 このような中、気象研究所は、地球科学分野の専門家集団として、自然災害の誘因となる気象・地象・水象に関する現象の解明及び予測の研究、ならびに関連技術の開発に取り組み、気象業務の技術基盤の高度化に貢献してきました。線状降水帯については、令和3年度から4年度にその機構解明を主題とする緊急研究に取り組み、その後も大学や研究機関等と協力して線状降水帯の観測を実施するとともに、数値モデルや観測データを用いて、線状降水帯の発生要因や発達・維持等のメカニズムに着目した事例解析を行っています。また、国内外の研究機関と積極的に連携してIPCCによる評価報告書の作成などの国際的な活動にも積極的に参画しています。さらに、令和6年能登半島地震に伴う津波の分析や、令和5年9月の緊急地震速報の改善にも取り組んでいます。


 また、国民の安全安心や社会・経済の健全な発展のために寄せられる国民の期待は益々高まっています。気象研究所においても平成30年に交通政策審議会気象分科会から提言された「2030 年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」の下、2030年に向けて数値予報精度向上をはじめとした研究開発を推進しています。また、令和2年には「気象業務における産学官連携の推進」、令和5年には「DX 社会に対応した気象サービスの推進」の提言をいただいており、気象庁は産学官の連携をいっそう緊密にしてDX 社会で多様化するニーズに的確に対応していくこととしています。


 このような背景のもと、当所におきましては、令和6年度から開始した中期研究計画のもと、①線状降水帯、台風等喫緊の課題への重点的な取り組み、②社会経済活動への貢献、温暖化への適応策などの課題への対応、③地震・津波・火山対策の強化に資する研究の遂行等、「2030年目標」の達成に向けて、研究開発を着実に推進しているところです。



 気象研究所では、気象業務の高度化に向け職員一丸となって取り組みますので、今後とも、ご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


気象研究所長 榊原茂記