【プレスリリース】中緯度の大気と海洋の相互作用が東アジアの冬のモンスーンを強める

国立大学法人筑波大学
気象庁気象研究所

発表日

令和7年11月20日

ポイント

 東アジアの冬に吹く北西のモンスーンが強い年には、北西太平洋の中緯度域の海が冷やされ、冷えた海が更にモンスーンを強める仕組みを解明しました。 中緯度の大気と海の相互作用が日本の冬の年々変動に重要なことを示すもので、異常気象の要因解明や季節予報の精度向上につながると期待されます。

研究の概要

 東アジアの冬に吹く北西の季節風(モンスーン)が強い年には、日本各地で厳しい寒さや大雪が発生し、社会や経済活動に大きな影響を与えます。 これまで冬のモンスーンの強弱については、エルニーニョ現象やラニーニャ現象など熱帯域の海洋で発生する現象との関係が注目される一方で、中緯度の海洋との関係は十分に理解されていませんでした。
 本研究では長期間の解析データと、大気モデルを用いたシミュレーション実験により、東アジアの冬のモンスーンと中緯度の海洋との関係を調べました。 強い冬のモンスーンが発生すると、ユーラシア大陸から流れ出す寒気によって北西太平洋の中緯度域が冷やされます。 冷えた海は海面水温の南北の勾配を変化させることで風の流れに影響を与え、日本の東に低気圧性の風の変化を生じさせることが明らかになりました。 この風の変化は、大陸からの寒気を更に強め、結果として日本付近の気温を一層低下させます。 つまり、冷たい空気が海を冷やし、冷えた海が更に大気を冷やすという、大気と海の相互作用によって東アジアの冬のモンスーンが強まることが分かりました。
 この研究成果は、厳冬や大雪など冬の異常気象の要因を理解するうえで役立つとともに、季節予報の精度を向上する手掛かりにもなることが期待されます。

掲載論文

  • 題 名
     Midlatitude Atmosphere-Ocean Interaction Reinforces the East Asian Winter Monsoon
  • 著者名
     Reina Sakamoto(筑波大学理工情報生命学術院地球科学学位プログラム), Yuhei Takaya(気象庁気象研究所), Shoji Hirahara(気象庁気象研究所), Hiroaki Naoe(気象庁気象研究所), Satoru Okajima(筑波大学生命環境系), Hiroaki Ueda(筑波大学生命環境系)
  • 掲載誌
     Geophysical Research Letters

資料全文

中緯度の大気と海洋の相互作用が東アジアの冬のモンスーンを強める