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最近16年間の世界の海洋の顕著な温暖化を確認
〜海洋観測データを最新の手法で解析し「ネイチャー」に発表〜

報道発表日

平成22年5月20日

概要

気象庁気象研究所の研究官を含む、日、米、英、独の研究グループは、海洋が最近16年間で顕著な温暖化をしていることを過去の海洋観測データから確認し、英国の国際的な科学誌「ネイチャー」の5月20日号に発表しました。

本文

過去約50年余りの海洋観測データから、世界の海洋が温暖化していることが明らかになってきました。しかし、海洋の温暖化の進行を示す、海洋全体が蓄えている熱量(貯熱量)の変化量の評価には、評価する手法の違いから研究者によって食い違いがありました。

そこで、気象庁気象研究所気候研究部の石井正好主任研究官を含む国際的な研究グループ(気象研究所のほか、米国海洋大気庁(NOAA)、米国航空宇宙局(NASA)、英国気象庁、ドイツのハンブルク大学の研究者で構成)は、これまでに行われた研究結果を統合し、1993年から2008年の16年間における、海洋表層の貯熱量変化のより正確な推定に取り組みました。

その結果、1993年〜2008年の間の観測結果から、世界の海洋表層は確実に温暖化したことが確認されました。このことは、気候システムを過剰に加熱する原因である地球温暖化が進行していることを裏付けるもので、その加熱は本研究によって0.64±0.11W/m2(注)と、これまでよりも正確に見積られました。同グループはこの成果を、英国の国際的な科学誌である「ネイチャー」の5月20日号に発表しました。
(注)「0.64 W/m2 の加熱」とは、16年間にわたって全人類(約67億人)が一人ずつ100W電球500個を点灯し続けるエネルギーに相当します。

この研究の中で石井主任研究官(気象研究所)は、投下式水温水深計(XBT; 参考資料参照)と精度の高い観測船やアルゴフロートによる観測結果を用いて、アルゴフロートの既知の誤差および独自に推定したXBTの誤差を取り除いた上で厳密な解析を行い、海洋貯熱量の変化を客観的に見積もったデータセットを作成して共同研究に貢献しました。

今回の共同研究は、海洋貯熱量の推定精度を向上させたことに加えて、これまで計算されてきた海洋貯熱量の誤差の大きさを、XBT観測データの誤差に起因するものなどの要因別に評価したことで、学術的に高い評価を得ています。

海洋は、大気との間では莫大な熱の交換を通じて、気候変動に大きな影響をもたらすことから、海洋の貯熱量とその変化を正確に見積もることは、地球温暖化の全体像をより正確に理解することにつながります。また、この研究で得られた正確な海洋貯熱量データを地球温暖化予測モデルに取り入れることで、地球温暖化予測の精度をさらに向上できると考えられます。このように、今回の成果は、今後の地球温暖化研究の基礎データとして広く利用されることが期待されます。

図表等を含めた資料全文については、下記「資料全文」をご参照ください。

問い合わせ先

気象研究所 企画室
電話:029-853-8535

資料全文

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