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四国西部において2005年に発生した小規模な長期的スロースリップ

(小林昭夫, 2010, 地震2, 63, 97-100)


 国土地理院のGPSは年々数が増え、それまで解析に用いていた直線トレンド、年周補正の係数(1998〜1999年のデータを基に山本氏が算出したもの)の改訂が必要になってきた。国土地理院の解析値もF3解になり、年周成分が格段に小さくなったため、とりあえず直線トレンドについて全国の観測点について調べなおした。そのデータ確認の過程で見つけたのがこの四国西部の長期的スロースリップである。地味な作業のちょっとしたご褒美のようなものだと思った。


要旨
 国土地理院GPSデータから一次トレンドを除去することにより、定常変動を除去し、2005年に四国西部で数点において非定常変位が存在することを見出した。隣接する豊後水道では2002年終わりから2004年初めまで長期的スロースリップが発生しており、今回の四国西部の変位もプレート境界上のすべりで説明できる。すべりの範囲は2003年の長期的スロースリップに隣接した範囲に求まり、両者の関係が注目される。

画像

図 (a)-(e)1年間の変位から推定したすべり分布と、そのすべりから計算した理論的な上下変位分布。 (f) Hirose et al. (2007)で報告されたフィリピン海プレート上面の深さ分布と低周波地震の震央分布。