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埋込式体積歪計のノイズレベル調査及び異常監視処理

(小林昭夫・松森敏幸, 1999, 験震時報, 62, 17-42.)


 気象庁地震予知情報課在籍時に、当時の吉田明夫地震予知情報課長と一緒に色々な調査を行った課題の一つ。 地震防災対策強化地域判定会委員打ち合わせ会で何度か報告したものをとりまとめたもの。 このノイズレベル調査の結果をもとに、それまで東海地震の判定会招集基準「体積歪計観測点のうち1箇所で3時間以内に 0.5×10-6以上の変化が発生し、ほぼ同時間帯において少なくとも他の3箇所以上で明瞭な変化が発生した場合」 というものから、「歪観測点のうち3箇所以上でそれぞれの地点の検出可能レベルの変化が観測された場合」 に改訂された(吉田, 1999, 験震時報, 62, 1-16)。また、実際の異常監視プログラムの改修を行った。
 この調査により、2004年に「東海地震に関する情報高度化チーム」の一員として気象庁長官表彰を受けた。


要旨
 体積歪データの異常監視処理では、一定時間(階差時間)前との差(変化量)を用い、変化量が基準値以上になったときに音声報知をしている。これまでの問題として、(1)基準値が観測点によらず共通、(2)降水時に大きな変化があるが、降水時でも頻繁に音声報知されない値を設定していた。そこで、調査期間内に1回発生する現象のみを検出する基準値をノイズレベルと定義し、降水の影響を受けていない期間(通常期間)と、全ての期間とに分け、観測点、階差時間ごとにノイズレベル調査を行った。  地殻内部での変動が広域で大きいほど多くの観測点で同時に観測される可能性が高い。ランダムに発生しているノイズの場合、大きな変化量が2点同時に発生する頻度は低くなると考えられる。このため通常期間については2点同時のノイズレベル調査も行った。

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図 階差時間とノイズレベルの例
 階差時間が長くなるとノイズレベルが大きくなるが、1440分は720分と大きな差はない。これは1440分が潮汐の主な周期である半日周期、日周期の整数倍で、 潮汐の影響が補正残差を含めて打ち消されるためと考えられる。