3-5 海面水位  
 21 世紀末(2090〜2099年)に予測される海面水位上昇量は、世界平均すると、B1 シナリオ +0.18〜+0.38 m、B2 シナリオ +0.20〜+0.43 m、A1B シナリオ +0.21〜+0.48 m、A2 シナリオ+0.23〜+0.51 mなどとなっており、気温と同様、温室効果ガスの排出が多いシナリオほど上昇量が増えています。また、すべてのシナリオにおいて、21 世紀の平均海面上昇率が1961〜2003 年に観測された平均海面上昇率を超える可能性が非常に高いと予測されています。予測される海面水位上昇の最大の要因は熱膨張であり、全体の上昇量の70〜75%の寄与があります。南極では、降雪が増加する一方、氷床の顕著な表面融解は起こらないため、南極氷床の質量は増加し、海面水位を低下させる寄与があると考えられています。しかし、南極氷床やグリーンランド氷床からの氷山としての流出については解明されていないことが多く、流出量の変化を正確に予測するのは難しいのが現状です。もし今後、氷床からの流出が大きくなるならば、さらなる海面水位の上昇をもたらすことになります。
 21 世紀の海面水位上昇は、地理的にかなり異なることが予測されています。予測された空間パターンの詳細は、海洋の熱吸収量の分布や海流の変化にも依存しており、気候モデルによってそれほど似通っているわけではありません(気候モデルの予測精度が高くない)。ただ、北極海の上昇量が大きく、明瞭な水位上昇域が南大西洋からインド洋にかけての細長く広がる、南極海では上昇量が低い、といった共通の特徴が見られます(図3-7)。
図3-7
図3-7 21世紀末に予測される世界平均海面水位からの差の地理分布。値は、SRES-A1Bシナリオに基づいた16種類の気候モデルで計算された1980〜1999年及び2080〜2099年の予測平均値から求めている。単位はm。点描している海域は変化傾向の信頼度が高い地域。(IPCC, 2007)