3-3 気温  

 いくつかの温室効果ガス排出シナリオに対して予測された世界平均地上気温の上昇量を図3-4に示します。21世紀末の気温上昇量は、最も排出量が少ないB1シナリオに対する上昇量は、+1.8℃(可能性が高い予測幅は+1.1〜+2.9℃)、排出量が中程度のA1Bシナリオに対する上昇量は、+2.8℃(可能性が高い予測幅は1.7〜4.4℃)、排出量が増加し続けるA2シナリオに対する上昇量は、+3.4℃(可能性が高い予測幅は2.0〜5.4℃)と予測されています。二酸化炭素等の排出量を瞬時に大幅削減することにより、2000年の時点から大気中の濃度を一定に保つという仮想的な設定(図3-4の橙色の線)では、上昇量は+0.6℃(可能性が高い予測幅は0.3〜0.9℃)と計算されています。このように、温室効果ガスの排出量しだいで将来の温暖化の程度がはげしくも、おだやかにもなります。
 次に気温上昇量の地理的分布について示します (図3-5)。陸上の昇温量が大きく、地球平均の昇温量の2倍程度の大きさです。その中でも、特に北半球高緯度の昇温が目立ちます。これらの傾向は20世紀に観測された気温変化の特徴(2.1節参照)と一致しています。一部の気候モデルでは21世紀後半までに北極の海氷が夏に完全に消滅すると予測しており、そのような場合、北極域で非常に気温が上昇すると考えられます。一方、南半球の海洋と北大西洋では昇温量が小さくなっています。
図3-4図3-5
図3-4 実線は、A2、A1B、B1 シナリオにもとづく複数の気候モデルによる(1980〜1999 年平均を基準)世界平均地上気温の昇温を示す。陰影部は、個々の気候モデルの年平均値の標準偏差の範囲。2000年以前については(黒色の実線)、実際の温室効果ガス濃度等の推移にもとづく実験結果。橙色の線は、2000 年の濃度を一定に保った実験のもの。右側の灰色の帯は、6 つのSRESシナリオにおける最良の見積り(各帯の横線)及び可能性が高い予測幅。(気象庁, 2007a) 図3-5 気候モデルによる21世紀末の気温の変化量(℃)。1980〜1999 年平均を基準。上から順にSRESのB1シナリオ、A1Bシナリオ、A2シナリオに基づく複数気候モデルの平均。(気象庁, 2007a)