2-1 世界の気温

 過去150 年間の測器による観測結果によれば、地上気温は世界的に上昇しています。世界平均すると、地上気温は過去100 年間(1906〜2005 年)に約0.74℃上昇しました(図2-1)。しかしながら、気温上昇の割合は一定ではなく、季節や場所によっても異なっています。20 世紀の昇温は、1910 年代から1940 年代にかけて(0.35℃)と、1970 年代から現在まで(0.55℃)のより強い昇温の2 段階で起こりました。また、近年のより短い期間になるほど傾きが急で、気温上昇が加速しています。記録上の最も暖かい12 年のうちの11年が1995年〜2006年の間に起こりました。なお、ヒートアイランド現象と呼ばれる、土地利用や人工排熱により都市付近で気温が上昇する現象はとても局地的であるため、地球規模のこれら値に与える影響は無視できるほど小さいと考えられます。

 図2-2は気温変化の地理的分布を示しています。気温の上昇幅は世界的に一様というわけではありません。1979年以降のデータでは、陸上の地上気温は、海洋の2倍の速さで上昇しています。これは地面が熱を下に伝えにくいのに対し、海では混合などによって熱が深くまで吸収されることに加えて、海面で水温が上昇しようとすると蒸発が盛んになって気化熱を奪うためであると考えられます。また、北半球高緯度の昇温が特に大きくなっています。これは海氷や積雪の面積の減少と関係していると考えられます(2-6節を参照)。一方、対流圏(地上から高度約10kmまで)の気温は地上気温よりも空間的に一様に上昇しています(図2-2右)。
図2-1
図2-1 観測された年間の世界平均気温(黒点)。左縦軸は1961〜1990 年平均からの偏差を、右縦軸は気温の推定値(℃)を示す。直線近似は過去25 年(黄)、過去50 年(橙)、過去100 年(紫)、過去150 年(赤)の値を与えており、それぞれ1981〜2005 年、1956〜2005 年、1906〜2005 年、1856〜2005 年の期間である。青い曲線は、十年規模の変動をみるために平滑化された曲線である。10 年間で5〜95%の誤差幅(淡灰色)を示している(従って、年ごとの値はこれらの幅を超越する)。(気象庁, 2007b)

図2-2
図2-2  地上(左)及び対流圏(地上から高度10km まで)(右)において推定された、1979〜2005 年の直線近似による10年あたりの気温上昇傾向の分布。(気象庁, 2007b)