1-3 人間活動の影響


 人間活動は、温室効果ガスや微粒子(エーロゾル)の排出等により、地球の気候変化を引き起こしつつあります。温室効果ガスやエーロゾルが大気中に含まれる量や性質が変わると、地球に入射する太陽エネルギーや地球から宇宙空間へ出て行くエネルギーの流れが変わり、気候システムは温暖化したり寒冷化したりします。工業化の開始(1750 年頃)以降、人間活動が気候に及ぼした総合的な効果は温暖化の方向に働いています。この期間の気候に対する人類の影響は、太陽活動の変化や火山噴火のような自然要因による変化をはるかに超えています。

 図1-3は西暦0年以降約2千年間の主要な温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)の変化を示しています。いずれの気体についても、1750 年頃以降急激に増加しています。これら増加の原因は人間活動に求めることができます。温室効果ガスとして代表的な二酸化炭素は、運輸、製鉄、火力発電、建物の冷暖房などにおける化石燃料使用により増加しました。また、森林破壊にともない、木が燃やされたり微生物による有機物の分解が進むことでも二酸化炭素が排出されています。メタンは、畜産業、農業、天然ガスの漏洩、ごみの埋め立てなどの結果として増加してきましたが、最近は増加が頭打ちになっています。一酸化二窒素は、肥料の使用や化石燃料燃焼などが原因で増加しています。また、図には示されていませんが、ごく低濃度でも強い温室効果を持つフロンガス等は、自然界には存在せず、すべて人間が工業的に作り出したものです。

 大気に含まれる水蒸気も温室効果ガスとしては重要ですが、その濃度は、海面や地面から蒸発したり、雨や雪になって落下したりといった自然の過程によって調節されており、人間活動による直接的な影響は大きくありません。しかし、温暖化にともなって水蒸気量が増加すると温暖化を増幅させることになりますので、間接的にはとても大きな影響を持っています。

図1-3
図1-3 過去2000 年間の主要な温室効果ガスの大気中濃度の変化。メタン(CH4)濃度が右軸で、二酸化炭素(CO2)濃度と一酸化二窒素(N2O)濃度が左軸。濃度の単位は100 万分の1(ppm)あるいは10 億分の1(ppb)。(気象庁,2007b)