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【お知らせ】ハワイに接近するハリケーンが将来増加するとの予測結果が「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に掲載されました。



 国立大学法人筑波大学生命環境系(系長 白岩善博)、気象庁気象研究所(所長 瀬上哲秀)およびハワイ大学国際太平洋研究センター(所長 ケビン・ハミルトン)らは、最新 の気候モデルを用いて、ハワイ付近に接近するハリケーンが将来増加することを予測し、その成果が英国の国際的な科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」のオンライン 版で2013年5月6日03時(日本時間)に掲載されました。
 なお、本研究は文部科学省「気候変動リスク情報創生プログラム」の一環として実施したものです。

 掲載論文
 “Projected Increase in Tropical Cyclones Near Hawaii”
  Hiroyuki Murakami1, 2, Bin Wang2, Tim Li2, Akio Kitoh1*.
  1 気象庁気象研究所  2 ハワイ大学国際太平洋研究センター *現在の所属は筑波大学生命環境系(主幹研究員)

 ネイチャー・クライメート・チェンジ(オンライン版)掲載ページ

概要

 過去30年においてハワイ付近に接近したハリケーン(注)の数は8個と比較的少ないものでした。一方、1992年のハリケーン・イニキのように一旦ハワイ付近に接近すると社会 経済や生態系に大きな損失をもたらす可能性があります。これまで地球温暖化が進むと全球のハリケーンの数や強度がどう変化するかの研究は世界の研究機関で数多くなされてき ましたが、地域的なハリケーン活動の将来予測は不確実性が大きいためあまり議論されてきませんでした。
 (注)世界各地で発生する熱帯低気圧は地域毎に様々な呼び方をされています。ハワイ付近は東太平洋に属し、そこで発生した熱帯低気圧はハリケーンと呼ばれています。以下、便宜上、熱帯低気圧をハリケーンと記載します。

 気象庁気象研究所気候研究部の村上裕之客員研究員と鬼頭昭雄前部長は、ハワイ大学国際太平洋研究センターと共同研究を進め、最先端の高解像度全球気候モデルを用いて地球 温暖化が進んだ21 世紀末におけるハリケーン活動の将来予測に取り組みました。
 その結果、モデルの予測結果から2075年〜2099年にハワイ付近に接近するハリケーンの頻度が、1979年〜2003年の平均に比べて2〜3倍程度増加することを確認しました。

 この増加予測は地球温暖化による影響であることが示され、同グループはこの成果を、英国の国際的な科学誌である「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に投稿し、2013年5月6日03時(日本時間)にオンライン掲載されました。

 今回の研究は、高解像度気候モデルを用いた複数の将来実験設定による予測実験の結果で、どのような実験設定でもハワイ付近に接近するハリケーンの頻度が増えることを示し ており、将来予測の不確実性が小さいと評価されました。ハリケーンのような小さなスケールの予測には水平方向に非常に高解像な気候モデルを用いることが必要で、複数の実験 を行うには莫大な計算資源が必要です。今回の複数の実験は地球シミュレーターによって実行され、学術的に高い評価を得ています。

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