高精度・高分解能気候モデルの開発 [人・自然・地球共生プロジェクト]

20-kmメッシュ全球気候モデルの開発に関する研究

     

20km格子全球大気大循環モデルによる地球温暖化実験における夏のアジアモンスーンの変化

(a)
(b)
図1 7月の降水量(色、ミリ/日)と850hPa風ベクトルの気候値分布。(a)モデルの10年間の現在気候。Reynoldsとith(1994)による観測された気候値の海面水温SST(1982-1993年平均)をモデル与えた。(b)将来実験から現在実験を差し引いた変化。2090年ころの10年間の将来実験では、IPCC SRES A1B 排出シナリオ(IPCC 2000)を仮定した。将来のSSTの変化は大気海洋結合モデルMRI-CGCM2.3による予測を採用し、現在気候実験で用いた観測値のSSTに加えた。

 20km格子の非常に高水平分解能の大気大循環モデルを用い、地球温暖化予測を行った。本研究の主な目的の一つとして、夏のアジアモンスーンの変化を選んだ。夏のアジアモンスーンの活動が、この地域に住む人々の生活と社会を大きく左右するからである。しかし今までは、全球気候モデルの水平解像度が不十分であったため、全球気候モデルは気候の再現実験や予測実験に信頼性を与えることが出来なかった。
図1aは現在気候の条件下でモデルによって再現された7月の気候値である。モデルは日本、韓国、中国上の梅雨前線良く再現しているが、韓国上での降水が過剰である。また、モデルはインド亜大陸上の降水を良く再現しているが、海上での降水は過大評価となっている。850 hPaの風の場については、モデルは亜熱帯高気圧上の時計回りの循環、インドシナから日本にかける北東向きの流れ、ソマリ・ジェットを良く再現している。
 図1bはモデルによって予測された7月の降水と850 hPaの風の場の変化である。揚子江流域、東シナ海、日本の南海上で降水量が増加する。亜熱帯高気圧上の850 hPa風の時計回りの循環の変化は、亜熱帯高気圧の強化を意味する。時計回りの循環の強化と共に、大気が暖まることにより水蒸気量が増加し、熱帯から東シナ海への水蒸気輸送が増加することになる。対照的に、韓国と北日本で降水量が減少する。ソマリ・ジェットが弱くなっているにもかかわらず、インド亜大陸上の降水量は増加している。その理由は、ソマリ・ジェットが弱くなったことによる水蒸気輸送の減少が、大気が暖まったことによる水蒸気量が増加によって補償されたからである。