基礎的・基盤的研究
 意図的・非意図的気象改変に関する研究
   (副課題1)意図的気象改変に関する研究
   (副課題2)エアロゾルの間接効果に関する研究

研究期間  平成21年度〜平成25年度 (5年計画 第4年度)
研究代表者 村上正隆 (物理気象研究部)
担当研究部 物理気象研究部、予報研究部、気象衛星・観測システム研究部、環境・応用気象研究部

目 的  人工降雨で代表される意図的気象改変技術の確立および雲・降水の数値予報精度の向上や気候変動に影響を及ぼすエアロゾルの間接効果(非意図的気象改変)の解明を目的とする。


目 標  エアロゾルの雲・降水過程に及ぼす影響に関する実験・観測的研究に基づいたエアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーションの開発・改良を中心として、研究手法や対象とする物理過程の観点からも密接な関係にある意図的気象改変とエアロゾルの間接効果の研究を総合的に実施し、人工降雨で代表される意図的気象改変技術の確立を目指すとともに、エアロゾルの間接効果の解明を通して降水短時間予報および気候変動予測の精度向上に資することを目的とする。

(副課題1)
@ リモセン観測による有効雲の出現頻度把握とシーディング効果の物理的評価
A S/N 比の高いシーディング効果の統計的評価法の開発
B シーディングエアロゾルによる雲粒・氷晶発生過程の定式化
C 人工降雨・降雪の水資源確保および渇水対策技術としての有効性評価

(副課題2)
@ 雲核(CCN)・氷晶核(IN)のモニタリング観測
A 大気中エアロゾルによる雲粒・氷晶発生過程の定式化
B 大気中エアロゾルによる雲粒・氷晶生成過程に関する観測
C エアロゾルの間接効果の解明

(副課題1と副課題2に共通)
@ エアロゾルの物理化学特性とCCN・INの活性化スペクトルの直接測定法の確立
A 各種リモセン技術を用いたエアロゾル・雲・降水の微物理構造の遠隔測定法の確立
B 詳細雲物理ボックスモデルの確立
C エアロゾル・雲・降水統一雲物理パラメタリゼーションの開発・改良と非静力学モデルへの組込


研究の概要 (副課題1)
@ 多波長レーダ、多波長マイクロ波放射計、暖候期には2 波長偏光ライダーからのデータを組み合わせて、エアロゾル・雲・降水の微物理構造を推定するアルゴリズムを開発し、人工降雨・降雪に適した雲の出現頻度をモニタリングする。航空機などを用いたシーディング実験時に、種々のリモートセンシング技術を用いて雲の内部構造の変化を測定し、シーディング効果を評価する。

A 降水量および降水の微物理に関する地上観測を実施する。また、ダム集水域降水量の風上側一般気象要素・雲物理要素への依存性をリモセン観測データを用いて明らかにする。これらの基礎的な知見を用いて、S/N 比の高いシーディング効果の統計的評価法を開発する。

B 雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用いた実験から、吸湿性フレアや混合フレアからのシーディングエアロゾルの物理化学特性と雲核・氷晶核としての活性化特性の関係を解明し、定式化する。

C ドライアイスや吸湿性粒子等によるシーディング実験も取り扱える高精度な雲の数値モデルを用いて、人工降雨・降雪に適した雲の出現予報実験を実施する。並行してシーディング実験を実施し、両者を比較することにより増雨・増雪効果の定量化を行う。積雪融雪流出モデルや水管理モデルと組み合わせた総合的水資源予測システムを開発し、人工降雨・降雪の水資源確保・渇水対策としての有効性を定量化する。人工降雨・降雪による広域の環境影響評価を行う。

(副課題2)
@ 雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計、各種エアロゾル測定装置等を用い、エアロゾルの物理化学特性、CCN・IN の活性化スペクトルに関するモニタリング観測を実施する。

A 雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用いた実験から、大気中エアロゾル(ダスト・無機炭素・有機炭素・海塩・硫酸アンモニウム)の物理化学特性と雲核・氷晶核としての活性化特性の関係を解明し、定式化する。

B 観測用航空機・特殊ゾンデ(雲粒子ゾンデ・エアロゾルゾンデ)・地上からのリモセンなどの観測データを用いて、色々な雲の条件下におけるエアロゾルから雲粒・氷晶生成過程の解明を図る。

C エアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーション(改良型バルク法、ビン法)を組み込んだNHM による数値シミュレーションと観測結果を組み合わせ、人為起源エアロゾルが種々の雲の微物理構造・寿命・雲量・地上降水量などに及ぼす影響の解明を図る。

(副課題1と副課題2に共通)
@ SMPS やOPC を用いたエアロゾル粒子の粒径分布(0.01〜10 ミクロン)、電子顕微鏡を用いた化学組成、雲核計や氷晶核計を用いたCCN の活性化スペクトル(過飽和度スペクトル)とIN の活性化スペクトル(温度・氷過飽和度スペクトル)の同時測定システムを確立し、雲生成チェンバー実験やモニタリング観測で使用する。

A 天頂観測用X-band、Ka-band、W-band ドップラーレーダ、2 波長偏光ライダー、多波長マイクロ波放射計等によるシナジー観測からエアロゾル・雲・降水の微物理構造の鉛直分布を推定する地上からの遠隔測定システムを確立する。

B 詳細雲物理ボックスモデルは現在、水粒子については水溶性エアロゾル(CCN)質量と水質量を変数とする2 次元ビン法、氷粒子については、それに粒子の軸比、バルク密度を加えた4 次元ビン法から成る。雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用いて、色々な大気環境の下で、エアロゾル粒子の物理化学特性と雲核・氷晶核としての活性化特性の関係を解明し、その結果を用いてCCN とIN を混合粒子として取り扱えるように不溶性粒子(IN)を変数として追加し、詳細雲物理ボックスモデルの拡張・改良を図る。

C 室内実験の結果と詳細雲物理ボックスモデルの結果の比較から種々のエアロゾル(大気中エアロゾルおよびシーディングエアロゾル)からの雲粒・氷晶発生過程を定式化する。その結果を取り込んだ、エアロゾル(CCN・IN)・雲・降水を統一的に扱う新しい雲物理パラメタリゼーションを組み込んだNHM を開発・改良する。


平成24年度
実施計画
(副課題1)
 ・雲生成チェンバー実験と詳細雲物理ボックスモデルの結果に基づき、混合フレアによる初期雲粒分布および氷晶発生の変調に関する定式化を行う。
 ・各種地上設置型リモセンを用いて、関東における暖候期の有効雲に関するモニタリング観測を実施する。
 
(副課題2)
 ・雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用い、色々な大気環境(気温・上昇流)の下で、ダストや炭素粒子、海塩粒子、硫酸アンモニウムから成る内部混合エアロゾルの物理化学特性とCCN・IN としての活性化特性に関する実験を行い定式化する。
 ・その結果に基づき詳細雲物理ボックスモデルを改良する。
 ・エアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーションを組み込んだNHMを用いて、種々の雲システムにおけるエアロゾルの間接効果に関する数値実験を実施し、観測から得られた検証データとの比較を通して、モデルの改良を行う。


波及効果
  • 渇水対策を講ずる際の科学的根拠の獲得は、国民の人工降雨・降雪技術への信頼を高め、経済社会への影響を考慮した総合的施策判断の一助となる。
  • 効果的かつ定量化された人工降雨・降雪技術は、水資源の確保・渇水緩和をもたらし、安心・安全で質の高い生活のできる国の実現に貢献する。
  • 観測・データ解析・モデル開発の成果を応用することで、より高精度で細やかな日々の天気予報や、より信頼性の高い気候変動予測が可能となる。
  • 国民の日々の天気変化や気候変動への注目意識が高まり、環境に配慮した社会活動や生活様式の改善を促す。