科学研究費補助金 基盤研究(B)
巨大津波の発生原因を探る〜スマトラ北西沖巨大津波発生メカニズムに関する仮説の検証

研究期間 平成22年度〜平成24年度 (3年計画 第2年度)
研究代表者 平田賢治 (地震火山研究部)

研究目的  2004年12月26日スマトラ北西沖で生じた巨大な津波の発生メカニズムとして、現在のところ、世界各国の研究グループから次のような5つの作業仮説が提案されている
 (第1仮説)本震破壊がプレート境界を伝わり、付加体前縁部の変形フロント付近まで到達し、津波は基本的にプレート境界の断層運動によってのみ生じた。
 (第2仮説)本震破壊はプレート境界と主スラスト(分岐断層)で生じた.主スラストの運動により津波が大きくなった。
 (第3仮説)上部スラスト(分岐断層)が運動により津波が大きくなった。
 (第4仮説)西アンダマン断層の運動により津波が大きくなった。
 (第5仮説)中央スラスト(あるいは下部スラスト)の運動により津波が大きくなった。
 
本研究では第5仮説を検証することを目的とする。調査船を用いて海底地形調査および海上マルチチャンネル反射法探査などを通じ、スマトラ北西沖外縁隆起帯中に推定されている中央スラストなどの分岐断層を特定する。また2004年スマトラ沖地震直後の膨大な数の余震データに対して、地震主応力軸解析を実施し外縁隆起帯中の分岐断層およびその周辺の応力分布を推定することにより、本震時にどのような断層運動が発生したのか推測することを試みる。最後に、本震直後の海域調査および余震データの再解析によって構築された分岐断層モデルに基づき津波数値計算を行い、その計算波形を観測記録と比較することで、第5仮説の妥当性を評価する。


平成23年度
の実施計画
 昨年度(初年度)10月から11月にかけて、(独)海洋研究開発機構の学術研究船「白鳳丸」(2004年に東京大学海洋研究所から海洋研究開発機構に移管)に、東京大学大気海洋研究所の反射法地震探査システムなどを搭載し、スマトラ北西沖の、海溝海側〜変形フロント〜主スラスト〜下部スラスト〜中央スラスト〜上部スラスト含む範囲で、GIガンを用いた高分解能マルチチャンネル反射法地震探査を実施するとともに、船体固定の3.5 kHzのサブボトムプロファイラー(SBP)を用いた海底表層地層探査および海上重力・地磁気調査を実施した。
 調査終了後になされた予察的なデータ処理結果では、スマトラ北西沖の複雑な外縁隆起帯は、主として多数の逆断層運動および断層関連褶曲運動によって形成された褶曲−衝上断層帯であることを示唆するとともに、海溝から変形フロント付近にかけては、多数の海側傾斜の逆断層を確認することができた。これらの海側傾斜の逆断層は、日本の本州南岸の南海トラフに典型的に見られる覆瓦状構造を伴う逆断層群とは異なっておりスマトラ沖に特徴的な構造と考えられる。中央スラストおよび上部スラストと同定された断層トレースの下の地層は、逆断層的な変形を示しており、第5仮説および第3仮説の妥当性の評価の鍵を握る貴重な観測データを得ることができた。
 今年度は、東京大学大気海洋研究所(徳山)、産業技術総合研究所(荒井)、海洋研究開発機構(斉藤、中村)において高分解能マルチチャンネル反射法地震探査のデータ解析を継続するとともに、これらの機関に加えて、気象研究所と東海大学(馬塲)、富山大学(竹内)において、同時に得られた3.5kHz SBP地層探査データも検討し、スマトラ北西沖外縁隆起帯の地質構造の解釈を実施する。また、昨年度実施した調査データおよび、それ以前に実施したいくつかのの海域調査データの結果を統合し、総合的な解釈をおこなうために、研究代表者が、研究協力機関の米国コロンビア大学(研究協力者・Seeber教授)に数ヶ月滞在し、海域調査の成果をいったん取りまとめる。さらに、研究分担者および連携研究者など本研究参加者による国内・国際学会での成果発表を行うとともに、必要に応じ、招聘ないし渡航し、インドネシア協力機関との研究打合せを実施する。また、海洋研究開発機構は、インドネシア研究協力機関と研究協力協定を締結しているおり適宜、インドネシア研究協力機関との間で必要な事務・研究打合せを実施する。