重点研究
緊急地震速報高度化のための震度等の予測の信頼性向上技術の開発
(サブ課題1) 緊急地震速報のための余震・群発活動・連発地震に対応した処理手法の開発
(サブ課題2) 震源・マグニチュードの即時推定精度および震度の予測精度の向上に関する研究

研究期間  平成21年度〜平成25年度(5年計画 第2年度)
研究代表者 干場 充之 (地震火山研究部)
担当研究部 地震火山研究部

目 的  緊急地震速報の処理の高度化に結びつく技術開発を行う。
 余震・群発活動・連発地震に対応した処理手法の開発や海底地震計を有効に利用する手法を開発し、また断層面の広がりに即時的に対応する手法の開発に関する研究等に取り組み、特に、東南海・南海地震等の海域に発生する巨大地震について、緊急地震速報における震源、マグニチュード及び震度の予測精度を向上させる。

目 標  緊急地震速報の第一報は、最初の地震波の検知から数秒程度(最終報でも、1分程度)で発信されるものであり、非常に短時間に、かつ、人手を介することなくすべて自動で処理されるものである。この緊急地震速報は、平成18年から高度利用者向け、平成19年から一般向けの提供が開始されたところであるが、これまで、連発した地震には対応できないことがある、主要動到達に間に合わない場合がある、震度に予測誤差がある、巨大地震の震源の広がりに対応できない、等の問題点があげられている。そこで、以下の2つのサブ課題に取り組み、連発地震への適切な対応や、より迅速かつ正確な震度予測、さらには、巨大地震時への対応などの課題解決に結びつく技術を開発することを目標とする。
(サブ課題1)
 地震が連発する余震活動や群発地震のような状況においては、適切に個々の地震を分離して自動的に認識できるかが 重要となる。特に、連発する地震の中で発生したやや大きな地震に対して、個々の地震を分離し適切に震源決定処理が できる技術を開発する。

(サブ課題2)
@ 海底地震計の活用による震源決定精度の向上
 緊急地震速報では、震源により近い地点で地震波を捉えることが迅速化につながる。海域で発生する海溝型地震に対しては、 ケーブル式海底地震計が有効である。そこで、海溝型地震の迅速な震源決定に結びつけるため、海域特有の特性を考慮する ことにより、ケーブル式海底地震計をより有効に活用する技術を開発する。
A 迅速かつ的確なマグニチュードの推定と震度予測における観測点補正等の導入
 正確な震度予測のためには、正確なマグニチュードの推定が重要である。緊急地震速報では、迅速化のために(通常の震源 決定よりも)少数の観測点でマグニチュードを決定する必要がある。そこで、マグニチュードの推定を迅速かつ的確化すること、 観測点ごとの補正値の適正化を図ること、により震度予測の手法の改良を行う。
B 巨大地震の断層面の広がりに対応した震度予測
 現在の緊急地震速報では、震源は点として捉えているが、巨大地震では、断層面の広がりが無視できない。このため、震度 予測が適切に行えない。そこで、巨大地震の震源の広がりの効果を取り入れることにより震度の予測精度の向上につなげる。

研究の概要 (サブ課題1)
 現在の緊急地震速報の処理では、地震が連発した場合には適切に対応できない課題がある。たとえば、大きい前震を伴った地震の場合や、発生直後にそれの余震が大きかった場合など、引き続いて発生した2つ以上の地震についてはイベントの分離が難しい。これは、現在の緊急地震速報では、個々の観測点での地震波の着信時およびその時点での振幅増幅率を用いて震源決定をしているので、地震が続いた場合には、前の地震の波に隠れてしまい、それらの情報が適切に使えないからである。このため、このような地震が連発した場合にも適切に個々の地震を分離し震源を推定する技術の開発を行う。余震・群発活動・連発地震等に特化した処理手法を構築し、適切にイベントの分離を行える技術開発を目指す。

(サブ課題2)
 緊急地震速報における震度予測の精度向上には、まず、震源とマグニチュードの迅速かつ適正な推定が重要である。さらに、個々の観測点での特性を補正することが重要である。また、巨大地震では断層面に広がりが見られるが、この広がりの影響を震度予測に取り入れれば、精度の向上が期待できる。そこで、次のような緊急地震速報の改善に資する技術開発を目指す。
@ 海底地震計の活用による震源決定精度の向上  海域に設置したケーブル式海底地震計は海溝型地震の震源域近傍に設置されているため、より早い段階で地震波を検知することができる。特に、東海から東南海・南海地震の想定震源域には緊急地震速報対応のケーブル式地震計が設置(あるいは、設置予定)されており、期待が大きい。しかし、その特殊な設置条件のため、陸域に設置した地震計とは異なるデータの扱いが必要となる可能性がある。このため、まず、陸域の地震計で開発された従来の緊急地震速報の手法における適用性の吟味を行い、さらに海域特有の特性を加味することにより、ケーブル式海底地震計をより有効に利用する手法の開発(テリトリ法の改良、B-Δ法の改良等)を行なう。
A 迅速かつ的確なマグニチュードの推定と震度予測における観測点補正等の導入
 震度予測を向上させるためには、迅速かつ的確にマグニチュードを求める必要がある。これを解決するにはリアルタイムでデータを送り出す観測網を増強すること、および、震度の予測手法の向上が重要である。本研究では、このうち、震度予測を向上させる手法を考察する。緊急地震速報では、なるべく短時間に処理する必要があるため、きわめて少数の観測点でのみ地震波が 到達している段階でマグニチュードを決定することになる。このため、使える観測点は通常の(人手を介して験測する)処理よ りも少なく、このため決定誤差が大きい。この少ない観測点の状況でもなるべく迅速かつ的確にマグニチュードを求める手法を改良する。さらに、各震度観測点において補正を適切に加えることや震度の実況値を予測に活用することで、震度予測の精度を向上させることが期待できるため、この補正手法の改良を行う。まず、現在の緊急地震速報で用いられている手法における補正値を改良し、さらに、より精度の高い震度予測の手法への改良を図る。これらにより、迅速かつ的確なマグニチュードの推定と震度予測を目指す。
B 巨大地震の断層面の広がりに対応した震度予測
 巨大地震においては、震源は点ではなく 、断層面の広がりが無視できない。震度予測には断層面からの距離が重要であるが、現在の緊急地震速報では、震源を点として求めているのみなので、広がりのある断層面のには十分に対応していない。このため、このような断層面の広がりが無視できない場合には、適切な震度予測ができない可能性がある。そこで、断層面の拡がりが無視できない巨大地震においても震度予測が適切に行える手法を開発する。震度や震度に対応した高周波数帯の波形を利用し、緊急地震速報に活用できるような迅速性を有 する手法を考案する。

平成22年度
の実施計画
(サブ課題1)
 気象庁や他機関の過去の地震波形の収集および手法開発のための標準データセットの作成を行う。さらに、作成した標準データセットを用いて、地震多発時にも震源決定を行なうことができる処理手法の開発を行い、従来手法の解析と評価を継続する。また、研究対象となる地震が発生した場合には、地域を限定せず様々な機関からの地震波形収集に努める。

(サブ課題2)
@ 海底地震計の活用による震源決定精度の向上
 ケーブル式海底地震計に関して気象庁・他機関データ等の資料の調査と解析を継続し、現在の手法における適応性を吟味と業務化判断のための資料提供を行う。また、海底地震計を用いた震源推定手法の高度化を行う。
A 迅速かつ的確なマグニチュードの推定と震度予測における観測点補正等の導入
 現在の震度予測手法における観測点補正値の改良と業務化導入のための資料提供を行うとともに、震度やマグニチュードの推定手法の改良の検討を行う。また、マグニチュードの推定手法の改良の検討を行う。
B 巨大地震の断層面の広がりに対応した震度予測
 既往の震源域推定手法の調査と緊急地震速報への適応の検討を継続する。

波及効果  緊急地震速報における震源、マグニチュードの迅速な推定及び震度の予測精度の向上に結び付く。これは、ユーザにより的確な減災のための行動を取ることを可能とする。また、大地震発生後の余震活動時、避難・救出作業等に危険のある地震について、より適切に緊急地震速報を発表することによって、防災に一層資することを可能とする。