科学研究費補助金 基盤研究(C)
能動型衛星センサーによる雲・エーロゾルの相互作用に関する研究 

研究期間 平成18年度〜平成20年度(3年計画第3年度) 
研究代表者 小林 隆久 (気象衛星・観測システム研究部)
研究分担者 増田 一彦、石元 裕史 (気象衛星・観測システム研究部)、青木 輝夫 (物理気象研究部)
連携研究者 井上 豊志郎 (台風研究部)

研究目的  地球温暖化予測において最も不確かな問題の一つに雲がある。雲は太陽光を遮り地球を冷却化する一方で地面からの熱赤外線が宇宙に逃げるのを妨げ地球を暖める効果がある。どちらの効果が卓越するかは雲の高度や微物理特性により決まる。特に最近注目されているのが、エーロゾルにより雲粒サイズが変わり放射特性も変質するといういわゆるエーロゾルの間接効果で、その影響は、二酸化炭素の放射強制力にも匹敵するとも言われている。しかし、この効果の観測は困難なこともありその実態はまだ良く分かっていない。
 本研究は、これまでなかった衛星能動型センサーを用いて雲・エーロゾルの相互関係を観測面から明らかにすることを目的とする。このために、衛星搭載の可視・赤外放射計やライダー等能動センサーを用いて、個々の雲の特性と共にエーロゾルを、詳細に観測し、雲とエーロゾルの相互関係を調べエーロゾルの間接効果の理解増進、そしてモデル化への一歩となるデータ、知見を得ることを目差すものである。

 
前年度までの
成果概要
 衛星搭載能動型・受動型センサーの複合利用により、エーロゾルの間接効果に関する知見を得るものである。エーロゾルは雲核として働くため、エーロゾル数濃度により雲粒サイズが変わり、太陽反射率が変化する。この効果は第1間接効果と呼ばれている。また、汚染大気のような高濃度エーロゾル地域では雲粒サイズが小さくなり、降水が抑制され第2間接効果と呼ばれている。この第2間接効果では、どの程度雲粒サイズが減少すると降水が抑制されるかを知ることが重要である。このため本研究では衛星搭載レーダーと可視・赤外放射計の複合利用により雲、降水の同時観測を行う。

 平成19年度は、衛星搭載レーダー並びに可視・赤外放射計の全球データの解析を行った。衛星搭載レーダーから降水強度を、可視・赤外放射計から雲の有効半径を抽出しその関係を調べた。雲粒サイズが降水を伴う雲と伴わない雲とで差があるか調べたところ、雲粒最大粒径に大きな差が見られるた。降水を伴わない雲では15-20μmであったのに対し、降水を伴う雲では30μmと急増、ジャンプすることが分かった。成長過程初めの雲粒は凝結により連続的に成長するが、あるサイズを超えると雲粒同士の衝突等により急速に、不連続的に発達すると言われている。この境となる雲粒の大きさは臨界サイズと呼ばれており、数値モデルの結果では15-20μmと言われている。エーロゾル第2間接効果に関連する重要なパラメータである。降水を伴う雲、伴わない雲での雲粒サイズの変化はこの臨界サイズが実際の大気でも存在することを示唆している。この結果について国内外の学会で発表した。また国際誌に掲載された。

今年度計画  前年度までに雲粒サイズが降水を伴う雲と伴わない雲で大きな差があることが分かった。これは雲から雨滴へと成長するには、雲粒がある臨界サイズを越える必要があること、逆にいうとエーロゾル濃度増大により雲粒がこの臨界サイズ以下になると降水が抑制されることを示唆している。本年度は、この臨界サイズに着目して雲の光学的厚さ、雲水量が雲粒サイズと共にどう変化するのかを衛星搭載レーダー並びに可視・赤外放射計を用いて全球的に調べ、エーロゾルの間接効果について理解増進、そしてモデル化への一歩となるデータ、知見を得、とりまとめを行う。