フィージビリティスタディ
意図的・非意図的気象改変に関する研究

研究期間 平成20年度
研究代表者 村上 正隆 (物理研究部)

担当研究室 物理研究部第1研究室 
予報研究部第1研究室 
環境・応用気象研究部第4研究室 
気象衛星・観測システム研究部第3、第4研究室 

目的・目標  (目的)
日々の天気予報、気候変動予測、そして渇水・霧、降雹・集中豪雨などの顕著現象による被害緩和や水資源管理の一手法としての気象改変などに関する技術の向上に大きな期待が寄せられている。雲・降水に関わる諸過程の多くは、これら天気予報・気候変動・気象改変の分野に共通する重要課題として、早急な解明が求められている。
 意図的・非意図的気象改変に関する研究は、その研究手法や対象とする物理過程の共通性から、表裏一体の密接な関係にある。意図的気象改変は非意図的気象改変を理解する上で、準実スケールの実験と見なすことが出来る。一方、非意図的気象改変は大気環境の変調を通して、意図的気象改変(シーディング効果)にも大きな影響を与える可能性がある。
 本研究では、エアロゾルの雲・降水過程に及ぼす影響に関する実験・観測的研究に基づいたエアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーションの開発・改良を中心として、研究手法や対象とする物理過程の観点からも密接な関係にある意図的・非意図的気象改変の研究を総合的に実施し、人工降雨で代表される意図的気象改変技術の確立および降水短時間予報精度の向上、気候変動予測の解明に資することを目的とする。

 (目標)
 本フィージビリティスタディ(1年間)では、以下に挙げた項目から成る意図的・非意図的気象改変に関する総合的研究を効率的・効果的に推進するための研究手法・研究体制を検討すると共に、エアロゾルが雲・降水過程に及ぼす影響に関する予備的な実験・観測データを用いて、エアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーションの開発・改良に関する5年後、10年後の達成目標を明確にし、そのために必要となる実験・観測的研究のアプローチを検討することを目的とする。

 
研究内容
  • 人為起源エアロゾルおよびシーディングエアロゾルが雲・降水分布などに及ぼす影響を統計的手法を用いて解明する。
  • エアロゾルの物理化学特性とCCN・INの活性化スペクトルの直接測定法の開発・改良を行う。
  • 間接測定法を用いたエアロゾル・雲・降水の微物理構造の測定法の開発・改良を行う。
  • 直接・間接観測データを解析し、色々な雲の条件下におけるエアロゾルから雲粒・氷晶生成過程の解明を図る。
  • 雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用いて、色々な大気環境の下で、エアロゾル粒子の物理化学特性と雲核・氷晶核とし ての活性化特性の関係を解明する。その結果を用いて詳細雲物理ボックスモデルを開発・改良する。
  • 室内実験の結果と詳細雲物理ボックスモデルの結果の比較から種々のエアロゾルからの雲粒・氷晶発生過程を定式化する。その結果を取り込んだ、エアロゾル(雲核・氷晶核)・雲・降水を統一的に扱う新しい雲物理過程パラメタリゼーションを組み込んだNHMを開発・改良する。
  • エアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーション(改良型バルク法、ビン法)を組み込んだNHMによる数値シミュレーションと観測結果を組み合わせ、人為起源エアロゾルやシーディングエアロゾルが種々の雲の微物理構造・寿命・雲量・地上降水量などに及ぼす影響(エアロゾルの間接効果・シーディング効果)の解明を図る。
 
今年度
実施計画
(1) 観測的手法を用いた意図的・非意図的気象改変に関する研究
  • 観測用航空機・特殊ゾンデ(雲粒子ゾンデ・エアロゾルゾンデ)・地上からリモセンなどの観測データを用いて、自然エアロゾルおよびシーディングエアロゾルから雲粒子が生成する過程において鍵となるパラメーター(エアロゾル・雲粒子の粒径分布、雲の力学・熱力学構造、エアロゾル化学組成)を解析し、エアロゾルの間接効果およびシーディング効果に関する予備的研究を実施する。
(2) 室内実験手法を用いた意図的・非意図的気象改変に関する研究
  • 雲生成チェンバーや雲核計・氷晶核計等を用い、色々な大気環境(気温・上昇速度・大気エアロゾル組成等)の下で、エアロゾル粒子の物理化学特性と雲核・氷晶核としての活性化特性に関する予備的実験を行う。その結果に基づき詳細雲物理ボックスモデルを改良する。
(3) 数値モデル手法を用いた意図的・非意図的気象改変に関する研究
  • エアロゾル・雲・降水を統一的に扱う雲物理パラメタリゼーション(改良型バルク法、ビン法)を組み込んだNHMを開発し、種々の雲システムにおけるエアロゾルの間接効果およびシーディング効果に関する予備的数値実験を実施する。