科学研究費補助金 基盤研究(B)
豪雨の力学的予測のための初期値解析と予測信頼性の評価に関する研究 

研究期間 平成17年度〜平成20年度(4年計画第3年度)
 
研究代表者 斉藤 和雄 (予報研究部)

研究分担者 原 昌弘、青梨 和正、瀬古 弘、小司 禎教、川畑 拓矢、大関 誠、柳野 健、永戸 久喜(予報研究部) 
中澤 哲夫、國井 勝 (台風研究部) 
村上 正隆 (物理気象研究部)
田中 博 (筑波大学) 
津田 敏隆 (京都大学)

(研究協力者) 露木 義、小泉 耕、西嶋 信、石川 宜広、本田 有機、田宮久一郎、藤田 匡、澤田 謙、三好 建正、経田 正幸、山口 宗彦 (予報部数値予報課) 
古本 淳一 (京都大学生存圏研究所)
劉國勝 (米国フロリダ州立大学)

 

研究目的  集中豪雨など局地的な激しい気象現象を力学的に予測するため、モデル初期値としての大気状態を観測データを用いて定量的に解析するための研究を行う。また、初期値に含まれる誤差成長を調べるなどアンサンブル予報の手法をメソ現象の短時間予測に適用する手法を研究し、数値モデルの予測結果の信頼度を定量的に見積もることを試みる。さらに、将来に向けて、最も進んだ初期値解析手法とされるアンサンブルカルマンフィルターを集中豪雨などのメソ予報に応用する方法を研究する。
これらによって以下を明らかにする。

  1. リモートセンシングデータなどの観測データを高分解能非静力学モデルの初期値に変分法で取り込む研究を行い、集中豪雨・豪雪の力学的な予測のための初期値解析の手法を明らかにする。

  2. 初期値やモデルの差による予測の時間的発展への影響を調べ、メソ現象へのアンサンブル手法の適用方法について研究し、数値モデルによる予測の信頼性を定量的に見積もる手法を明らかにする。

  3. アンサンブルカルマンフィルターのメソ気象現象への応用法を研究し、実用可能性を明らかにする。

昨年度までの成果の概要
  1. 非静力学モデルのための初期値解析手法の改良として、水蒸気・雲水・雲氷の摂動を考慮した接線形・随伴モデルを開発し、雲解像度非静力学4次元変分法への雲物理過程の導入を行った。またプログラムコードの最適化として、並列化を進めた。
  2. リモートセンシングデータ同化手法の開発として、雲解像度非静力学4次元変分法でモデル出力から計算したレーダー反射強度を同化する実験を行い、観測として与えたデータが再現されることを確認した。CHAMP衛星のGPS掩蔽データの特徴を調べるとともに、屈折率の鉛直相関や視線全体を考慮したノンローカル観測演算子を開発し、2004年7月の事例について同化実験を行い、観測に近い降水系が再現できた。
  3. 非静力学4次元変分法を用いた豪雨事例についての実データ同化実験として、1999年7月の練馬豪雨の事例に対してレーダー反射強度を雲解像度4次元変分法で同化するテストを行った。評価関数の収束性が悪く最小値探索法について課題を残した。特別観測データを用いた予測可能性実験として、全球特異ベクトル感度解析に基づく台風事例のドロップゾンデ観測データのインパクト実験を行い、高感度域の観測データが予報により大きなインパクトをもつことを確認した。
  4. 非静力学メソ4次元変分法のアジョイントモデルを用いて特異ベクトルを算出し、アンサンブル予報のテストを行った。また全球ターゲット特異ベクトルを用いたアンサンブル実験とBGM法の基礎開発を行った。
  5. アンサンブルカルマンフィルターの開発として、非静力学メソモデルのアンサンブル予報に基づいて衛星マイクロ波放射計データ地上降水強度を平方根フィルターによって同化する実験を行い、予報精度が向上することを確認した。また非静力学メソモデルによる局所アンサンブル変換カルマンフィルタの開発を行い、予報スプレッドの空間分布の確認を行った。

今年度計画  平成19年度は、平成18年度の成果をもとに、変分法初期値解析手法の改良、観測データ直接同化手法の研究、非静力学メソアンサンブル手法とアンサンブルカルマンフィルターについての開発を進める。
  1. 非静力学モデルのための初期値解析手法の改良(気象研究所)
    ・非静力学4次元変分法に雲物理過程の導入した場合に問題となる最小値探索手法の開発
    ・プログラムコードの並列化
  2. リモートセンシングデータデータ同化手法の開発(気象研究所・京都大学)
    ・レーダー反射強度、GPSデータ(視線遅延量・掩蔽データ)、マイクロ波放射計データ(衛星・地上設置型)、ウインドプロファイラ屈折率、等の直接同化手法の検討
  3. 同化予報実験(気象研究所・京都大学・地球環境フロンティア研究センター)
    ・非静力学4次元変分法を用いた豪雨事例同化実験実データテスト
    ・WWRP北京2008予報実証研究開発プロジェクト観測データの同化
  4. メソアンサンブル手法の研究(気象研究所・筑波大学)
    ・非静力学4次元変分法アジョイントモデルを用いた特異ベクトル算出
    ・全球ターゲット特異ベクトルを用いたアンサンブル計算とBGM法の開発
    ・WWRP北京2008予報実証研究開発プロジェクトアンサンブル予報実験と検証
    ・予測可能性についての理論的研究
  5. アンサンブルカルマンフィルターについての開発(気象研究所・筑波大学)
    ・アンサンブルカルマンフィルターを用いた雲解像モデルへの衛星マイクロ波放射計データの同化
    ・局所アンサンブル変換カルマンフィルターのテスト