二重偏波ドップラー気象レーダー

ドップラーレーダーアンテナ

 気象レーダーは、アンテナから電波を発射し、雨や雪などの散乱体にあたって返ってきた反射波を受信する装置です。気象研究所の二重偏波ドップラー気象レーダーは、水平方向および垂直方向に振動する電波を、同時に送受信することができます。この二種類の受信信号を利用することで、雨の強さを高精度に推定できるだけでなく、散乱体の形や種類(雨、雹、竜巻の飛散物等)を判別できます。さらに受信した信号の周波数から風の分布も推定できます。このレーダーは、半導体の送信機を用いることで、高い観測精度を実現しています。このレーダーを用いて、降水粒子の自動判別や降水の元となる水蒸気情報の抽出等、新たな防災情報や気象予報の精度向上に寄与する技術の開発に取り組んでいます。

上の写真は、気象研究所の本館屋上のドーム内に設置された、このレーダーのパラボラアンテナ(直径4m)です。全方位を観測するために回転しながら電波の送受信を行います。2012年5月6日に発生した竜巻により、茨城県つくば市は北部を中心に大きな被害を受けました。下の2枚の図は、このレーダーで観測した竜巻の親雲の水平断面図です。竜巻は、反射波の強さを示す左下図中の、矢印の位置に発生しました。この位置における散乱体の形(右下図)は球状と解析され、竜巻によって巻き上げられ上空で激しく回転する飛散物の存在を示しています。

竜巻の親雲の水平断面図