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台風の強度推定
2. 気象庁の台風強度推定におけるドボラック法の適用

日本の気象庁はRSMC Tokyo-Typhoon Centerとして北西太平洋の台風の解析・予報に責任を持っています。しかし北西太平洋の台風については現在は現業的な航空機観測は行われておらず、強度推定にはドボラック法が主に使われています。

北西太平洋でも1987年までは米軍により台風の航空機観測が行われていました。気象庁の木場ほか(1990)は1981~1986年の航空機観測による台風の中心気圧観測値とドボラック法のCI数を用いた統計調査により、下の表の関係を見出しました。気象庁ではこの木場ほか(1990)の関係を用いて台風の強度推定を行っています。

上の表には比較としてDvorak(1984)による北西太平洋の台風の数値も掲載しています。
この表からは、特に比較的強い台風について、木場ほか(1990)の関係を使用すると、Dvorak(1984)の関係を使用した場合よりもやや弱めの台風として推定されることになることがわかります。
両者の違いの一部には、Dvorak(1984)は米国で通常用いられる1分平均風速を採用しているのに対して木場ほか(1990)は気象庁(及びWMO)で使用が定められている10分平均風速を採用していることも要因となっています。
このような差異はありますが、木場ほか(1990)の調査結果はDvorak(1984)よりも新しいデータを用いてきちんと統計的な解析を行ったものなので、信頼できるものと考えています。

ところで、上の表ではCI数と最大風速・中心気圧の対応については、実際にはかなり幅があります。下の図は木場ほか(1990)の統計調査におけるCI数と中心気圧の関係の散布図で、この手法にはもともとこの程度の幅があるものだという点には注意して用いる必要があります。

このようにドボラック法による台風強度推定には小さくない誤差があるのは事実なのですが、それでもこの方法が主として使われているのは、航空機観測の代替ということの他にも大きな利点があるからです。それは、この手法で用いる観測データである衛星赤外画像が、静止気象衛星の観測により、決まった時刻にいつも同じ品質で入手できるからです。現業解析・予報作業においては、確実に情報を発表することが必要で、そのためにはデータを確実に入手し解析できるということが非常に重要です。このため、静止衛星観測データを用いたドボラック法は、自動化や精度向上の努力を加えながら、台風強度推定の最も重要な手法として今後も使われ続けると考えられます。

参考文献

Dvorak, V. F., 1975: Tropical cyclone intensity analysis and forecasting from satellite imagery. Mon. Wea. Rev., 103, 420-430.

Dvorak, V. F., 1984: Tropical cyclone intensity analysis using satellite data. NOAA Tech. Report NESDIS 11, 47pp.

木場博之、萩原武士、小佐野慎悟、明石修平、1990:台風のCI数と中心気圧及び最大風速の関係。気象庁研究時報、42、59-67。


外国機関の台風強度推定値との違い

北西太平洋の台風については、ハワイにある米国合同台風警報センター(JTWC)も解析・予報を行っています。ここでも航空機観測等の実測値がない事情は同じで、ドボラック法等による強度推定を行っています。すると、台風の強度が気象庁の発表と一致しないことがあります。

この差異の原因としては、ひとつには、上に述べたように風速として日本では10分平均、米国では1分平均の値を用いていること、またもうひとつは、CI数と台風強度の関係として気象庁では木場ほか(1990)の関係を用いているのに対してJTWCではDvorak(1984)の関係を用いているということがあります。後者の理由で、特に強い台風について気象庁よりJTWCの方が強めの強度を出す傾向があります。

二つの機関の推定値にズレが生じる原因としてもうひとつ考えられるのは、CI数の決定の差異です。気象研究所台風研究部(当時)のNakazawa and Hoshino (2009) は気象庁とJTWCの現業台風解析におけるCI数を1987~2006年について比較し、1992~1997年と2002~2005年にJTWCの方が気象庁よりもCI数を大きめに解析する傾向があったことを示しました。これはCI数の決定に主観が入ることによるものと考えられます。

なお、米国のKossinほか(2007)は過去の台風の再解析を統一的な手法で行い、JTWCのベストトラックと比較していますが、そこでは北西太平洋では1990年代にはJTWCの解析では再解析より強い台風が多く(Kossinほか(2007)のFig.2)、JTWCではこの時期に台風が強めに解析される傾向があったことが示唆されています。
台風の強度推定値・解析値を利用する際にはこのような点に注意する必要があります。

参考文献

Kossin, J. P., K. R. Knapp, D. J. Vimont, R. J. Murnane, and B. A. Harpar, 2007: A globally consistent reanalysis of hurricane variability and trends. Geophys. Res. Lett., 34, L04815, doi:10.1029/2006GL028836.

Nakazawa, T. and S. Hoshino, 2009: Intercomparison of Dvorak parameters in the tropical cyclone datasets over the western North Pacific. SOLA, 5, 33-36. [pdf]


目次

  1. 静止気象衛星赤外画像による台風強度推定(ドボラック法)
  2. 気象庁の台風強度推定におけるドボラック法の適用
  3. 軌道衛星搭載マイクロ波センサーによる台風強度推定 ①マイクロ波放射計
  4. 軌道衛星搭載マイクロ波センサーによる台風強度推定 ②マイクロ波探査計
  5. 台風強度推定の例(2013年台風7号)

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Last update: 17 March, 2014

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