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台風と中緯度偏西風ジェット気流の相互作用

台風は周辺の風の弱い低緯度で発生し、その環境に適した構造で発達します。そのため、台風は風の強い環境では脆弱です。

台風が北上すると、中緯度の偏西風帯では上部対流圏で強いジェット気流が吹いています。このような、上層ほど風が強い(つまり鉛直シアの強い)環境では、台風は通常の構造が保てなくなり、一般には衰弱するのですが、その過程では特徴的な変化が現れます。最も目に見える変化は降水分布の変化ですが、それに伴い周辺の上層風の分布も変え、中緯度のジェット気流にも変化をもたらします。

このように、台風が中緯度の偏西風の影響を一方的に受けるのではなく、台風がジェット気流を強めるなどの形で中緯度の流れを変え、それが台風にフィードバックして台風のさらなる変化が生じるという点で、相互作用といいます。


【1】 はじめに、台風が低緯度で、中緯度の偏西風帯から離れた位置にあるとき、台風は軸対称的な構造を持っています。
中心付近では活発な対流に伴って水蒸気が凝結する際に放出される熱で暖気核が形成されています。この暖気核のために下層では低気圧となっていますが、上部対流圏では高気圧となっています。
そして、中心付近で上昇した空気は上部対流圏では台風から外へ流れ出す外出流となっています。

【2】 台風が北上し、中緯度の偏西風帯に接近すると、上部対流圏での台風からの外出流がジェット気流の方向へ流れやすくなることがあります。

【3】 上部対流圏で台風からの外出流の方向が北側へと偏ると、そこでは流出した空気を補うように下層からの上昇流が強まります。その結果、台風付近での上昇流も台風中心の北側に偏り、雲分布が非対称になります。

【4】 台風中心付近で生じていた活発な対流が台風の北側に偏ると、水蒸気の凝結に伴って放出される熱による暖気も台風の北側に偏るようになります。それで台風の上空の高気圧も北側へ偏りますが、このときは台風の北側は偏西風帯となっているので、上層の高気圧の北偏は台風前面のリッジの強化として観測されます。北向きの外出流も強まるので、台風接近以前からあったジェット気流が強まることになります。

こうして、台風に影響を与えたジェット気流が台風からの影響を受けて強まり、その一方で、ジェット気流の影響を受けて変形した台風がジェット気流を変形させることになります。


ジェット気流との相互作用に伴って起こるいろいろな変化

台風の強度の変化

台風に上空の偏西風・ジェット気流の影響が生じると、上層風の強まり(鉛直シアの増大)が台風を衰弱させる方向に働きます。

その一方で、台風中心の北側の上昇流や対流の活発化が台風の中心気圧を低下させる方向に働くことで、台風の衰弱が遅れることもあり、また変形しながらかえって発達することもあります。

雲の形が崩れてきたからといって、常に台風が衰弱するとは限らないので、注意が必要です。

台風の移動速度の変化

ジェット気流が台風に影響するということは、台風を流す風が強まることも意味します。このため、台風が中緯度に北上すると、北東へ進む移動速度が速くなります。

ところで、上で述べたように、台風がジェット気流を強める効果もあるので、それにより台風を流す風がさらに強まると、台風はさらに加速します。このために中緯度では台風が予想外に速い速度で移動することがあります。

ただし、温帯低気圧化の末期の段階では、上層の気圧の谷の影響で、台風(またはそれから変わった低気圧)の移動が急に遅くなったり止まってしまうこともあります。このような台風の急加速・急減速は予報が難しい現象の一つです。


中緯度で変質しつつある台風の周辺の下層風

上層にジェット気流が存在すると、その下層は多くの場合、気温の異なる気団の境界になっています。
この気団の境界付近に台風が接近すると、台風の強い風のためにその境界付近の気温差が増大し、前線が発生することになります。この前線の発生も台風の北側・北東側での降水の強化に寄与します。

台風の大きさ・強さと、中緯度の気団の気温・湿度によって、降水の分布や強度にも事例による差異が生じます。雨台風・風台風など、日本に影響する台風の性質が様々なのはこのためです。

この変化がさらに進むと、台風は温帯低気圧に変わります。この「台風の温帯低気圧化」については別の機会に説明しましょう。


台風付近で竜巻の起きやすい領域

近年、竜巻の発生や災害がよく話題に上ります。台風に伴って竜巻がおきやすいのも、ジェット気流が関連するので、付記しておきましょう。

竜巻が起きやすい条件のひとつとしては、発達した積乱雲が発生しやすい、暖かい湿った空気の流入があります。

またそれとは別の重要な条件として、上層と下層の風向・風速が異なる(鉛直シアが大きい)ということがあります。

台風の風の特徴は、下層では反時計回りの強い風が吹くことですが、中緯度では上層で西寄りの風が吹くことになります。

このため、台風の東側では強い南よりの風で湿った空気が流入し、上層では強い西寄りの風でどちらかというと乾燥した空気が吹くことになり、竜巻の起こりやすい条件がそろいがちです。


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Last update: 23 October, 2013

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