気象庁気象研究所 台風研究部
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科学研究費補助金基盤研究C (平成27-29年度、3年計画)

台風強度予測精度向上のための台風強化停止プロセスの解明

研究代表者 気象研究所台風研究部第1研究室 和田 章義

連携研究者 気象研究所予報研究部第2研究室 国井 勝

連携研究者 気象研究所台風研究部第2研究室 沢田 雅洋

研究目的

数十年もの間、台風強度予測精度の顕著な向上が見られなかった原因の1つに、台風急発達及び強度変化過程が十分に解明されていないことが挙げられる。特に数値モデルによる台風強度予測においては、台風急発達の遅れ及び成熟期における過発達という問題が解決されないまま依然として残されている。この問題は大気・波浪・海洋を結合した数値モデルを単純に導入しただけでは改善することはできない。そこで本研究では、台風の急発達過程だけでなく、これまで注目されてこなかった強化停止プロセスに着目する。台風と海洋の相互作用を含む大気・海洋の力学・物理過程を考慮した包括的な視点から、そのプロセスを解明し、強度予測精度向上に貢献することを目的とする。

研究計画

    本申請課題の主たる研究方法は、台風内部構造と台風直下の海洋変動の両方を表現することが可能な大気波浪海洋結合モデルを用いた理想数値実験及び現実台風の数値シミュレーションである。
    また、局所アンサンブルカルマンフィルターを用いたデータ同化手法を兼ね合わせることにより、現実台風の数値シミュレーションをより現実的なものにする。

    平成28年度の研究計画:
    台風強化停止に対して重要な役割を果たすプロセスを明らかにするため、台風と海洋の相互作用を含む力学・物理過程に着目した解析及び、数値モデルによる感度実験を実施する。
  • 海面における摩擦の効果及び海洋から大気へ輸送される乱流熱フラックスを決定する大気海洋間の交換係数が台風強化停止に与える影響を解明する。
  • 大気境界層における動径風の構造及びその変化が台風強化停止に果たす役割及び台風域での降水が台風強度変化に与える影響を明らかにする。
  • 台風の眼の壁雲域における対流バーストの出現頻度と台風強化停止の関係を明らかにする。
  • 台風域内の力学・熱力学的構造、特に慣性安定度と静的安定度分布と台風の大きさ及び構造変化の関係及び移動速度による違いを明らかにする。
  • 海洋表層貯熱量と対流圏下層水蒸気フラックス及び対流バーストとの関係を解明する。


  • 平成27年度の研究計画は、
    1)台風強化停止プロセスを数値モデルによる実験・シミュレーションにより表現する。
    2)台風強化停止プロセスを台風と海洋の相互作用を含めた力学・物理過程に着目した解析及び、数値モデルによる感度実験を実施する。
    3) 解明されたプロセスを他のモデルや別の台風事例で検証する。
    台風強化停止プロセスを数値モデルによる理想実験・シミュレーションにより表現することを実施する。
    ・ 理想実験については水平解像度1-3km にて、Wada(2009)と同等の渦を初期値として、その時間発展をスーパーコンピュータで計算する。
    ・ 次に2014 年台風第8号等、台風強度の予測が難しかった台風事例を抽出し、高解像度非静力学大気波浪海洋結合モデルによる数値シミュレーションを実施する。
    ・ シミュレーション結果を検証するために、全球大気海洋結合モデル及びNHM-LETKF による数値実験も併せて実行する。
    ・ 以上の数値実験を実施することにより、研究に必要なデータを取得する。

    平成27~29年度までの研究実施期間において計画通りに進まない時は、 非静力学大気波浪海洋結合モデルによる理想実験及び数値シミュレーションについては、すでに先行して実施していることから、計算機事情により計画通り数値実験ができない場合、既存のデータを用いて解析する。また全球大気海洋結合モデルを用いた数値実験が実施できない場合は、全球大気モデルのモデル面データセットを用いて、プロセス研究を実施する。

平成28年度研究の実施内容

  • サイエンスQにて、「台風と防災」をテーマとした中学生対象の授業の中で、本課題の成果を話しました。
  • 対流バーストをテーマとした共著論文S3、台風の眼の壁雲域における対流バーストの出現頻度と台風強化停止の関係に着目した共著論文S1、 大気境界層における動径風の構造や台風域内の力学・熱力学的構造、特に慣性安定度と静的安定度分布と台風の大きさ及び構造変化の関係に着目した共著論文S4、海洋表層貯熱量S8に着目した筆頭論文が平成28年度に出版されています。
  • 局所アンサンブルカルマンフィルターを用いたデータ同化手法を台風海洋相互作用研究に適用しました S5

平成27年度研究の実施内容

  • 水平解像度1-3kmの渦の理想実験については、気象研究所スーパーコンピュータの更新後、数値モデルの移植作業において実施しました。
  • 2013年台風第18号及び第30号及び2014年台風第8号の台風数値シミュレーションを実施しました。
  • サイエンスQにて、中学生を対象に、2013年台風第18号と平成27年9月関東・東北豪雨の数値シミュレーション結果などのお話しをしました。
  • 2008年台風第13号について、NHM-LETKFによる解析実験を実施し、第17回非静力学モデルに関するワークショップにて発表しました。
  • ES特別推進課題により、全球非静力学大気モデル(海洋結合実験を含む)を台風第18号について実施し、2015年度日本気象学会秋季大会及び第17回非静力学モデルに関するワークショップにて発表しました。
  • 水平解像度の違いが台風の強度変化や最大強度に与える効果について、JSMJにまとめました。JASの論文と併せて、強化停止よりは急発達プロセスに関連する報告になっています。
  • 研究に必要なデータセットとして、海洋再解析データセットからTCHPデータセットを作成し、現場データも併せて取得し、検証を行いました(JOに発表)。またTCHPの算出方法に関する研究を実施し、2015年度日本気象学会秋季大会にて発表しました。
  

研究発表(印刷)

研究発表(口頭等、筆頭のみ)


    F4. Wada, A., and M. Kunii, Regional Coupled Atmosphere-Ocean Assimilation System Based on NHM-LETKF, 97th American Meteorological Society Annual Meeting, 2017年1月, アメリカ, シアトル
    F3. Wada, A. and M. Sawada, Numerical simulations of Typhoon Haiyan in 2013, 2016 JpGU annual meeting, 2016年5月、千葉県、千葉市美浜区
    F2. Wada, A. The relation of tropical cyclone heat potential to tropical cyclone intensity in the western North Pacific and the simulations by an atmosphere-wave-ocean coupled model, 2016 Ocean Sciences Meeting, 2016年2月, アメリカ, ニューオーリンズ
    F1. Wada, A., S. Kanada, Unusually Rapid Intensification of Typhoon Man-Yi in 2013 Under Pre-Existing Warm-Water Conditions Near the Kuroshio Front, Asia Oceania Geosciences Society 12th Annual Meeting (AOGS2015), 2015年8月, シンガポール, シンガポール
    J9, 和田章義, 台風海洋相互作用が台風予測可能性に及ぼす影響, 低気圧と暴風雨に係るワークショップ2017, 2017年2月, 福岡県福岡市
    J8. 和田章義, 非静力学大気波浪海洋結合モデルを用いた台風海洋相互作用研究, 平成28年度台風研究会, 2016年11月, 京都府宇治市
    J7. 和田章義, 台風の発達における海洋の役割:新しいTCHPの提案, 第14回環境研究シンポジウム, 2016年11月, 東京都
    J6. 和田章義, 海洋環境場が台風数値シミュレーションに与える影響, 日本気象学会2016年度秋季大会, 2016年10月, 愛知県名古屋市
    J5. 和田章義, 国井勝 , NHM-LETKF大気波浪海洋結合システムにおける海面水温の制御変数化, 日本気象学会2016年度秋季大会, 2016年10月, 愛知県名古屋市
    J4. 和田章義, 国井 勝, NHM-LETKFによる台風予測研究, 第17回非静力モデルに関するワークショップ, 2015年12月, 沖縄県那覇市
    J3. 和田章義, 沢田雅洋, 吉村裕正, 中野満寿男, 那須野智江, 大西領, 渕上弘光, 川原慎太郎, 佐々木亘, 入口武史, 山口宗彦, 川合秀明, 新藤永樹, 竹内義明, 複数の次世代非静力学全球モデルを用いた高解像度台風予測実験, 第17回非静力学モデルに関するワークショップ, 2015年12月, 沖縄県那覇市
    J2. 和田章義, 金田幸恵, 2013年台風第18号(MAN-YI)の急発達に関する数値シミュレーション, 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市
    J1. 和田章義, 碓氷典久, 台風や大気擾乱の発達に対する新しい表層海洋熱容量, 日本気象学会2015年度秋季大会, 2015年10月, 京都府京都市

last update : 2017-2-17
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