重点研究
「地殻変動観測による火山活動監視評価と噴火シナリオの高度化に関する研究」
(副課題1)活動的火山の地殻変動源推定の高精度化に関する研究
(副課題2)噴火シナリオに関する研究
1.研究期間
平成23年度 - 平成27年度
2.研究目的
気象庁の噴火予警報業務に資するために、地殻変動観測による火山活動評価手法および噴火シナリオの高度化を図る。
3.研究背景
気象庁は、火山活動の監視・評価に基づく防災情報として、全国の活火山について噴火予報及び噴火警報を発表するとともに、29火山(平成23年4月現在)については噴火シナリオに基づいた「噴火警戒レベル」の発表を行っており、今後その対象火山を増やしていく予定である。
火山活動を監視・評価する手法には様々なものがあるが、地殻変動観測は、マグマの蓄積や上昇を検出できる最も有効な手法のひとつである。気象庁ではGPS観測による火山の地殻変動監視を取り入れており、ボアホール型傾斜計等による地殻変動監視機能の強化も進めている。また気象研究所では光波測距や精密重力観測、干渉SARへの取り組みを行っている。これまでの研究で、伊豆大島や浅間山などでは、地殻変動の原因となっている圧力源がおぼろげながら見えてきているが、具体的にどのようなマグマの蓄積や移動が生じているのかまでは、まだよくわかっていない。噴火警戒レベルの迅速・確実な判定のためには、より高精度な地殻変動観測から、地殻変動の時空間変化の検出やより詳細なモデル化を行うことが重要である。
新たな火山への噴火警戒レベルの導入が今後順次進められると想定されるが、噴火等の異常現象を近年経験していない火山が数多くあり、そのような火山における防災情報の発信のために、地殻変動に基づいて火山活動を定量的に評価する手法の開発が必要である。噴火予警報業務の基礎となっている「噴火シナリオ」についても、地殻変動に関する定量的なシナリオを取り込む等、より高度化を図る必要がある。
4.研究目標
全国の主な火山を対象に、地殻変動源の推定によりマグマ等の蓄積状態を把握する。そして、地殻変動による火山監視手法及び定量的な評価手法を開発し、地殻変動データの時間的推移も含めたシナリオを作成する等、既存の噴火シナリオの高度化を行う。
(副課題1)活動的火山の地殻変動源推定の高精度化に関する研究
伊豆大島について、既に強化したGPS、光波測距観測等の稠密地殻変動観測網に加え、歪観測を開始し、マグマ蓄積・移動の検出と地殻変動源推定の高精度化を図り、マグマ供給系の詳細を解明する。伊豆大島以外の火山についても、既存の観測網データを活用するとともに、干渉SARによる地殻変動解析を用いることによって地殻変動源の位置や膨張量の高精度な推定を行う。
(副課題2)噴火シナリオに関する研究
内外の活動的火山における地球物理学的な観測結果等を収集して系統的に整理し、異常未経験火山も含め、噴火シナリオの定量化を図る。そのうえで、現在の観測網の検知力の検証や監視評価手法等の開発を行う。そのうち、特に、地殻変動に関しては、火山活動が活発化していくなかで想定される地殻変動を計算してシナリオの定量化を行うとともに、地殻変動データから圧力源の時空間変化をリアルタイムで監視・評価する手法を開発する。
5.研究概要
これまでの火山地殻変動に関する開発成果を基に、全国の主な火山を対象に、地殻変動源の推定を行うとともに、地殻変動による火山監視手法及び定量的な評価手法を開発し、地殻変動データの時間的推移も含めたシナリオを作成する等の既存の噴火シナリオの高度化を進める。
(副課題1)活動的火山の地殻変動源推定の高精度化に関する研究
活動的火山における地殻変動観測データからマグマ供給系に関する知見を得るため、地殻変動源推定の高精度化を行う。
特に、伊豆大島を重点的な研究対象火山とし、現在のGPS、傾斜、光波測距、重力による稠密地殻変動観測、地震観測を継続するとともに、次のような観測・研究により、マグマ蓄積・移動の検出と圧力源の位置及び変化量推定の高精度化を図り、マグマ供給系の詳細を解明する。
-
(1) 既に強化したGPS、光波測距観測等の稠密地殻変動観測網による圧力源の推定
GPS、光波測距観測データと地震活動データを合わせ、噴火準備期の深部のマグマ蓄積過程における膨張源の絶対的な位置や膨張量の推定等を行う。
-
(2) 歪観測装置の増設及び総合観測点の傾斜観測による、圧力源の時間変化の推定
歪計を増設し、既存の体積歪計や傾斜計と合わせて解析することにより膨張源や収縮源、すなわちマグマの相対的な深さ変化を検出する。
-
(3) マグマ蓄積・移動の検出に向けた精密重力の繰り返し観測
マグマ上昇に伴う地下の質量変化を検出することを目的に、GPSによる地殻の上下変動観測と合わせて精密重力観測を実施する。
伊豆大島以外の火山についても、既存の観測網及び気象庁総合観測点のデータを活用するとともに、干渉SARによる地殻変動解析を行い、必要に応じて観測を強化する。そのうち、浅間山については、中腹以上でのGPS観測を継続し、活動の盛衰に応じた地殻変動の詳細な解析を行う。
(副課題2)噴火シナリオに関する研究
観測データの定量的な時間的推移も含めた噴火シナリオの高度化を図るため、内外の活動的火山における火山異常時の地球物理学的な観測結果等を収集して系統的に整理し、現在の観測網の検知力の検証や監視評価手法等の開発を行う。そのうち、特に、地殻変動に関しては、地質学的な知見やこれまでの研究成果、副課題1の成果を踏まえて、火山活動が活発化していくなかで想定される地殻変動を計算するとともに、地殻変動監視評価手法の開発を行う。

図1.研究概要
6.波及効果
活動的火山のマグマ供給系に関する研究成果は、気象庁が発表する当該火山の噴火警戒レベルの判断基準の高精度化に資する。特に、伊豆大島では、高感度で時間分解能の高い地殻変動データの活用によって地殻変動監視機能が強化される。
伊豆大島や浅間山等における地殻変動観測結果は、逐次、気象庁や火山噴火予知連絡会における当該火山の活動評価に利用される。
噴火シナリオに関する研究成果は、過去の火山異常の観測経験に乏しい火山の噴火シナリオの改善に活用される。また、定量的な噴火シナリオの導入によって、現在の監視観測網の能力評価ができ、火山活動が活発化していった場合の適切な監視観測強化手法が明らかになる。
Last update: 2, May, 2011
地震火山研究部のトップページへ戻る