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〒305-0052
茨城県つくば市長峰1−1
気象庁気象研究所
予報研究部 (6階)
第四研究室
 
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雲物理学に関する研究

 当研究室では、これまで雲粒子ゾンデ(HYVIS)、研究観測用航空機、ドップラーレーダなどを用いて種々の雲の内部構造とその降水機構を調べてきました。

Contents 関連項目

日本海降雪雲

 発達した低気圧後面の気圧傾度の強い場に出現した背の低い(2.7km)筋雲の移動する雲に相対的な気流系を見ると、上昇流域は直立しており、ほぼ左右対称となっていた。最大上昇流(6秒平均)は3〜4m/sで、高度2km付近に存在し、それより上方では上昇流は弱まり、水平発散が見られた。筋雲の走向は、雲層内のシアーベクトル(いずれの場合もその絶対値は小さいが)にほぼ平行であることが示された。上昇流域(コア)では氷晶、降雪粒子の数濃度は低いが、5〜6mmの大粒のアラレが存在し、上昇流域と高dBz域が対応するというデュアルドップラーレーダー観測の結果と一致した。また、上昇流コアの雲底付近に落下速度の大きさが上昇流の大きさより小さな降雪粒子が多数存在した。これらの観測事実は、降雪粒子のリサーキュレーションが浅い雪雲の中で大粒のアラレ形成に重要な役割を果たしていることを強く示唆した。

筋状降雪雲
筋状降雪雲の走行に直行する鉛直断面図内のシステムに相対的な風のv'w成分(a),雲水量(b),雲粒数濃度(c),氷晶数濃度(d)と降水粒子の数濃度(e).
2D-Pイメージ
左図中のA1〜C3地点で観測された2D-Pイメージ.

JPCZに伴う降雪雲

 朝鮮半島のつけ根付近から南東に直線的にのびる帯状雲は,高度1kmより下層における比較的暖かい西北西の気流と冷たい北北西の気流の水平収束によって形成されていた。

 帯状降雪雲の南西縁では,西北西から進入した比較的暖かい空気塊が上昇流を作り,比較的背の高い対流雲を形成した。その一部分は高度2.5〜3.0km付近の強い南西風に流され,Tモードの層状雲を形成していた。背の高い対流雲の北東側には南西−北東の走向を持つ背の低い筋状対流雲が広がっていた。帯状降雪雲を構成する対流雲中には最大で1g/m3程度の過冷却雲水を含んでおり,降水粒子の形状もあられや濃密雲粒付き結晶が大半であることから,雲粒捕捉成長が主な降水粒子の成長メカニズムであったと考えられる。

JPCZに伴う降雪雲
雲頂上方(高度5.6km)から実施した雲レーダー観測によって得られたレーダーエコー(受信電力値;右下),その時の松江レーダーの高度2km CAPPIと航空機で測定した水平風(右上)と航空機から撮った雲のスナップ写真(左)

日本海小低気圧

 航空機観測等から得られた水平風及び相当温位などの分布から,能登半島と佐渡島の間で発生した小低気圧の鉛直スケールは〜3km,水平スケールは100km〜200kmであった。下層の中心気圧は周囲より〜2hPa低く,低気圧性循環は下層ほど顕著であった。暖気核(warm core)は高度1.5km付近でもっとも顕著で,周囲との温度差は2〜3度であった。低気圧性循環もwarm coreも,高度3.5km以上では顕著ではなかった。

 観測結果から,暖気核の成因は,1)総観規模低気圧(南岸低気圧)の循環に伴う高相当温位気塊の移流,2)凝結に伴う非断熱加熱,3)下降流による断熱昇温によると考えられる。

 ポーラーローの循環に伴って生成された余剰水蒸気の大部分は,南岸低気圧に伴う上層雲からnatural seedingされた氷晶の昇華凝結成長に消費されたため,雲水域は下層の限定された部分にのみ存在し,雲水量も最大で0.1〜0.2gm-3と比較的低濃度であった。雲システム全体からみると,主な降水形成メカニズムは昇華凝結成長で,雲粒捕捉成長は副次的であったと考えられる。

MBSD
高度0.3,1.5,3.5kmにおける相当温位と水平風の水平分布

山岳性降雪雲

 日本の中央部に位置する標高2,000mの越後山脈上にかかる山岳性降雪雲の内部構造を、観測用航空機、雲粒子ゾンデ、XバンドおよびKaバンドドップラーレーダを用いて、6冬季間にわたって調査した。山岳性降雪雲の多くは、顕著な逆転層に抑えられ雲頂高度は3-4kmである。雲内の気流構造は、風上側では穏やかで鉛直流の最大値は±1~2m/s程度であるが、風下側では±5m/sを超える鉛直流が存在する。水平風は山頂を超えていくときに加速し、時計回りに風向も変化する。

 大きなフルード数の条件下では、弱い上昇流と過冷却雲水層が風上斜面から山頂までの比較的狭い領域に存在し、フルード数が減少するとともに山頂から20km程度風上側に広がる。氷晶・雪粒子の数濃度は山頂に向かうにつれて、若干雲頂高度の増加(雲頂温度の低下)によって若干増加傾向にある。風上斜面上で生成した氷晶は過冷却雲水を含む領域を落下しながら昇華凝結と雲粒捕捉で成長を続ける。大きなフルード数の条件下では、降雪粒子が強風で風下側に吹き流される効果と過冷却雲水域が山頂付近にシフトし、その中で風下斜面に降る雪粒子が十分な成長時間を確保できるようになり、結果的にSpillover Ratioが大きくなる。

orographic
航空機による観測高度と鉛直流(線の色;左上)、山岳性降雪雲内の鉛直流(右上)、相当温位(左下)、雲水量(右下)の鉛直断面

梅雨前線に伴う対流性降水雲

 梅雨前線に伴う降水帯は、下層の強い相当温位傾度を持つ2つの気流が収束することによって形成されていた。南側の湿潤な空気塊からなる強い西または西南西の気流と北側の冷たい北または東の気流の収束により、暖湿で対流不安定な南側の空気塊が持ち上げられることによって高度13kmを超える対流雲が発達し、降水帯が形成されていた。中層は降水帯の南北両側で乾燥しており、気温の水平傾度も小さかった。上昇流域では0.3 gm-3程度の過冷却雲水と0.5 gm-3程度の降雪粒子が共存していた。上層は比較的湿潤でアンビルや巻層雲が広がっていた。発達した対流雲の中心部では10ms-1近い上昇流で水物質が吹き上げられ最大数濃度1000/L、氷水量0.3 gm-3の氷晶雲が広がっていた。降水帯の両側には中層の乾燥域で発達を抑えられた雲頂高度5〜6kmの雲が形成されていた。融解層より下方では大部分の雲域で雲水量は0.3〜0.5 gm-3程度で、強い上昇流域では1 gm-3程度の値を示した。

 これらの観測結果から、今回観測した梅雨前線に伴う雲における降水形成メカニズムは、0℃高度より上方における氷晶過程(大部分の層状性の部分では昇華凝結成長、対流性の部分では雲粒捕捉成長が卓越)と、0℃高度より下方における雪粒子の融解によって生成された雨滴の雲粒捕捉成長であった。

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2002年6月22日12時の九州南西海上付近の静止気象衛星の赤外画像、
ドロップゾンデ投下地点および解析領域
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航空機で測定された東経130度線に沿った
水平風の鉛直断面図
baiu
東経130度線に沿った気温(赤)、
露点温度(青)、相当温位(緑)の鉛直分布
baiu
東経130度線に沿った雲水量(赤)、鉛直流(黄緑)、
2DC濃度(青)、2DP濃度(緑)の鉛直分布

温暖前線に伴う層状性降水雲

 雲粒子ゾンデ(HYVIS)とドップラーレーダから得られたデータと、気象庁のルーチン高層観測及び地上観測データを用いて、温暖前線に伴う層状性降水雲の微物理構造と降水機構を調べた。

 これらの雲では角柱状結晶が全層で卓越しており、一170C高度より下方では、その他に鼓状結晶や角板状結晶も見られた。これらの雪結晶はライミングも付着併合も示さなかった。厚い滑昇雲の融解層の中でのみ、これらの結晶が併合してできた湿った雪片が見られた。雲内に過冷却雲粒は存在しなかった。

 地上の温暖前線から北方約400kmの浅い層状雲(巻層雲)では、雪結晶は温暖前面の直下の乾いた(相対湿度〜30%)層で急速に昇華蒸発していた。

 地上の前線から北方約200kmの深い層状性降水雲では、0℃度より下方での雲粒捕捉成長による降水強度の増分は地上の降水強度の10%以下であった。0℃と一10℃高度にはさまれた層には低濃度のdrizzleが存在し、空気は水飽和であった。この層で、雪結晶は昇華凝結により急速に成長し、全降水量の約80%が生成された。このような湿潤な条件は、温暖前面上の強い南よりの風に伴う上昇流(最大で30cm/sec)によって形成されていた。

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雲粒子ゾンデ等による観測結果に基づいて得られた
関東上空を通過する温暖前線の内部構造と降水機構の概念図

暖候期の層積雲・積雲

 6月4日に観測した雲は、雲底高度600m、雲頂高度2,100m、全層南東の風が卓越し、鉛直流も±1m/s以下の層状性の雲であった。雲粒数濃度は、雲底付近で400個/cm3であったが、中・上層では100個/cm3程度であった。雲水量は高度と共に増加し、最大で0.7g/m3程度であった。高度の増加と共に30μm以上の大雲粒の数濃度が増加し、雲上部では700 個/Lに達した。雲の中・上層部では100μmを超えるDrizzledropsが形成され弱い降水をもたらしていた。

 6月22日には高知市の北に広がる山岳斜面上で、WarmRain Cloudの鉛直プロファイル観測を2回実施した。1回目の雲は、雲底高度1,200m、雲頂高度3,000m、全層南西の風が卓越し、鉛直流も最大で±5m/s程度の対流性の雲であった。雲粒数濃度は、雲底付近で600個/cm3であったが、上層では400個/cm3程度であった。雲水量は高度と共に増加し、最大で1.5g/m3程度であった。高度の増加と共に30μm以上の大雲粒の数濃度が増加し、雲上部では500個/Lに達したが、100μmを超えるDrizzle dropsは形成されていなかった。

 2回目の雲は、雲底高度1,200m、雲頂高度2,400m、雲水量の最大も0.7g/m3程度であった。30μm以上の大雲粒の数濃度も10個/L程度と低く、100μmを超えるDrizzle dropsは形成されていなかった。


 雲層が2km以下、最大雲水量が1.5 g/m3の雲でも、降水を伴う場合と、伴わない場合が観測された。これが層状性と対流性(雲の寿命)の違いによるのか、雲粒数濃度による衝突 併合成長速度の違いによるのか、今後詳細に調べる必要がある。また、人工降雨の観点からは、どのような条件下で降水効率の低い雲が出現するのか、またその出現頻度はその程度かを明らかにする必要がある。

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層積雲(左)と積雲(右)内部の雲粒(赤点)、霧雨(緑点)、雨滴(青点)の
数濃度と雲水量(黒線)の鉛直プロファイル

寒候期の層積雲

 工事中

巻雲

 気球搭載雲粒子ゾンデ(HYVIS)によって測定された中緯度域巻雲(総観規模の低気圧に伴う温暖前線や停滞前線上の雲)の氷晶数濃度は10-1〜102 個/L のオーダーに分布した。数濃度の中央値は温度や鉛直位置に因らず,典型的には数十個/L 程度であった。雲頂付近で数濃度が最大となる事例は時々あったが,雲底付近で最大となる事例もあった。雲底付近は昇華蒸発域に通常あたるので,昇華過程による氷晶の断片化によって数濃度が増加する場合があることが示唆される。
 雲内の最大氷晶数濃度の雲頂温度依存性は先行研究で報告されている値より弱かった。

warm
HYVISのクローズアップカメラ(上)
及び顕微鏡カメラ(下) で取得された巻雲内の氷晶画像。
warm
規格化した雲層の関数として表した巻雲内の氷晶数濃度。雲頂温度別に表示してある。
点線、太破線、実線は10、50、90パーセンタイル。