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台風の平均発生位置の予測

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台風は、東南アジアと東アジアに、豪雨や暴風、そして高潮など、 甚大な被害をもたらす典型的な気象現象です。 2011年9月の台風12号(タラス)は、日本に上陸し、 国土交通省観測点の大台ヶ原(奈良県上北山村)では9月4日に2433ミリ という、過去最高の総降水量を記録しました。 その一方で、台風がもたらす雨は、日本の水資源にとって、欠かすこ ことができないとも言われています。

現在、台風予報は、5日先まで進路を公表しており、防災に役立てられています。 もう少し先、例えば台風活動の活発な時期(6〜10月)の前に、台風に 関する予測ができれば、減災などに利用できる可能性があります。 そこで、大気・海洋結合季節予測予測システムで、過去の予測実験を行い、 台風の性質、毎年の発生数、平均的な発生位置について、 予測できるか調べてみました。

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まず、台風の発生数は再現できるのでしょうか。ここでは台風活動の活発な時期に 注目していますので、観測の平均発生数は、19.6個/年です。一方、予測では、 18.5個と良く一致しています。 図 1 に毎年の観測された台風発生数と予測された発生数の比較が示されています。 統計的に有意な相関はありますが、予測に使えるほどの精度はありません。 季節予測で、予測可能性の高い熱帯中央〜東部太平洋の海面水温変動、 エルニーニョ南方振動現象とあまり強い関係がないことが示唆されます。

第1図

図 1: 観測値と予測実験における毎年の台風発生数。対象とする期間は 台風活動が活発な6月〜10月。

左括弧 発生位置 右括弧

台風の平均的な発生位置は、エルニーニョ南方振動現象と密接に関係していることが、 Wang and Chanによって示されています。上で述べたように 、エルニーニョ南方振動現象は予測可能性が高い現象です。それと関係の深い 季節予報の位置は再現できるのでしょうか。図 2 は、台風の平均的な発生位置を 緯度と経度に分けて、毎年の観測値と予測値を比較したものです。いずれも、 相関係数は0.5を越えており、統計的にも有意です。また、発生平均緯度の方が、 平均経度よりも、相関が高く、予測スキルが高いと言えます。

第2図

図 2: 観測値と予測実験における毎年の台風発生平均経度と緯度。対象とする期間は 台風活動が活発な6月〜10月。

エルニーニョ南方振動現象と発生位置の関係を見るために、 エルニーニョ南方振動現象の指数であるNino3.4海域(経度190E〜240E, 緯度5S〜5N) 海面水温偏差と発生位置を図に描くと(図 3)、非常に良い相関があることが分かります。 Nino3.4海域海面水温が暖かくなるエルニーニョ年には、台風発生平均緯度は、 低緯度、赤道寄りに、平均経度は東寄りになります。逆に、 Nino3.4海域海面水温が冷たくなるエルニーニョ年には、台風発生平均経度は、 中緯度、日本寄りに、平均経度は西寄りになります。 この結果は、 Wang and Chanの観測に基づく結果と一致しています。

第3図

図 3: エルニーニョ南方振動現象の指数であるNino3.4海域海面水温偏差(平年値からの差) と発生位置の関係。

参考文献

  • Y. Takaya, T. Yasuda, T. Ose, and T. Nakaegawa. 2009: Seasonal prediction of mean location of Typhoon formation, JMSJ, 88(5), 799-812. Click here for Full Paper


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