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マルチモデル力学的ダウンスケーリング

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季節予測に用いられている大気・海洋結合モデルの水平解像度は、 200km〜250km程度です。これは、季節予測の性質、即ち、カオス理論 における、初期値鋭敏性のため、数十の異なる初期値から予測を開始し、 各初期値から計算された結果の集合(アンサンブル)を見なくては いけないこと、そして数ヶ月〜1年程度積分をしなくてはいけないこと など、計算機資源によって制約されています。

この解像度で日本はどう表現されるでしょうか。北海道と九州1グリッド、 本州は太平洋側と日本海側の区別なし、四国は本州と結合、と言った具合です。 しかし、実際の気候は異なっています。冬季は日本海側では多雪ですが、 太平洋側は乾燥した天候が続きます。水平解像度の粗い大気・海洋結合 モデルで予測された結果から、このような解像度の細かい情報を、 抽出できないのでしょうか。

大気・海洋結合モデルの結果を境界条件として、日本の地域に限って、 領域気候モデルを動かしたら、より細かい季節予測情報を提供できる 可能性があります。このような方法を力学的ダウンスケーリング (Dynamical Down-Scaling)と呼びます。 すでに、観測データを元に作成された日本再解析 ( Onogi et al. (2007)を、境界条件として、領域気候モデルを 走らせ、再現性が向上するかについて調べられてきました。 では、複数の領域モデルを使った場合、更に再現性がよくなるでしょうか。 そこで、ベイズ統計理論に基づいて、モデルの再現性で重みをつけると、マルチモデル の結果がどれだけ改善するか、気象研NHRCM、防災科研RAMS、筑波大WRFの3つの 領域気候モデルを用いて、降水量に着目して調べてみました。

左括弧 経年変動再現性の比較 右括弧

図1に各モデルの60地域における夏季(6月〜8月)平均降水量の 経年変動の相関係数が示されています。地域気候モデルは、 特に夏季の日本の中央部で再解析データと比べ再現性が向上しいるのが分かります。 これらの結果は、夏季における降水の経年変動を予測する際に、地域気候モデルに よるダウンスケーリングが非常に有効であることを示しています。 また、幾何平均(同じ重み)やベイズ統計理論に基づいた重み付け平均は、 単独モデル結果よりも成績が向上しています。特に、ベイズ統計理論に基づいた重み付け 平均で、向上が顕著です。

第1図

図 1: 夏季の降水量経年変動の再現性。再現性は時間相関係数。 上段は左から、再解析幾何平均、重み付け平均、下段は各領域気候モデル。 相関係数が0.46以上で、90%の信頼度で、統計的に有意。

一方、冬季に関しては、JRAは日本海側では若干成績が悪いが、全体的に良く再現してい ます(図 2)。単独地域気候モデルや、幾何平均や重み付け平均の結果は、再解析データと比べ 若干成績が向上していますが、夏季ほど大きく向上してはいません。 これは、冬季の降水量が、再解析データでも表現される大規模な場で概ね決まっており、 地域気候モデルで、力学的ダウンスケーリングを行ってもあまり精度が向上しないと 言えます。一方、夏季は積雲のような内部プロセスが重要であるため、経年変動の再現性が 向上すると考えられます。

第1図

図 2: 冬季の降水量経年変動の再現性。再現性は時間相関係数。 上段は左から、再解析幾何平均、重み付け平均、下段は各領域気候モデル。 相関係数が0.46以上で、90%の信頼度で、統計的に有意。

この研究では、JRAを境界条件とした3つの地域気候モデルの日本領域にお ける夏季と冬季の降水量を検証しました。また、それらの幾何平均と重み付け平均に ついても再現性を調査しました。 その結果、地域気候モデルは、気候値については、特に冬季に、経年変動については特に 夏季にJRAよりも再現性が向上しました。また、 幾何平均と重み付け平均は、単一の地域気候モデルの結果よりも一般的に成績が 良くなることが分かりました。特に、重み付け平均では、再現性の良いモデルに 重みが大きく付けられていることを反映し、多くの場合、最も再現性が良くなりました。 本研究により、季節予測や将来予測における、地域気候モデルと、マルチ領域気候モデル アンサンブルの有効性が示されたと言えます。

参考文献

Y. Ishizaki, T. Nakaegawa, and I. Takayabu, 2012: Validation of the precipitation simulated by three regional climate models and two multi-model ensemble means over Japan for the period 1985-2RCM Downscaling of Precipitation. Climate Dynamics. DOI: 10.1007/s00382-012-1304-5. Click here for Full Paper



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