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人工衛星による陸水貯留量の年々変動推定


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人工衛星「ひまわり」の画像は雲の動きを明瞭に捕らえ、天気予報に活用されて います。また、MODIS等では地表面の情報を詳細に得ることができます。 しかしながら、季節予測精度を向上させる上で重要な初期条件である土壌水分を 推定することは、マイクロ波放射計や散乱計を利用する研究が行われてきました が、難問が山積しており、実用化には至っていません。 湿潤土壌では深さ10cmの情報を取り出すことさえ、難しいとされています。

2002年、従来とは全く異なった手法で、陸水貯留量変動を推定する ことができる人工衛星 GRACE (Gravity Recovery Climate Experiment)がNASAにより打ち上げられました。 従来、地球を観測する衛星は「ひまわり」、「MODIS」等は放射強度を計測して いました。この衛星は二つの衛星からなり、衛星間の距離を計測しています。

左括弧 距離から質量変化へ 右括弧

距離を計測して、どうして質量変化ー陸水貯留量ーが分かるのでしょうか。 重力加速度は9.87m/s2と習いますが、理科年表を見れば分かるように、 場所によって異なります。それは、ニュートンの万有引力の法則が示しているよ うに、重いものがあるところは、引力が強いことから来ています。重い鉱物があ る場所は重力が大きいのです。
こうした質量の地理分布は、時間的に変化しませんが、陸水貯留量は季節と共に 変化します。すると、質量が増加したところでは重力が増加し、人工衛星は加速 されます。二つの衛星間に働く重力は若干異なり、それによって衛星間の距離が 変化します。つまり、距離の変化は質量の変化によってもたらされるのです。
以上の話を逆に辿れば、陸水貯留量を推定することができます。ただし、一旦別 距離になってしまったので、推定するのは複雑な手続きが必要です。1ヶ月平均 で、25万km^2平均での推定誤差はおよそ10mmです。

図 1 は現在運用されているGRACEもしくは同等の設計精度の衛星によって、 陸水貯留量の年々変動がどれくらい推定可能か流域毎に示しています。値が 小さいほど推定が容易と言えます。年による違いは陸水貯留量が大きい年も 小さい年もあるので、比が大きいからと言って、全く推定できないわけでは ありません。例えば、比が1のところではおよそ3年に1回は推定可能です。
アマゾン河、アムール河、コンゴ河、メコン河などは毎年変動が推定可能です。 残念ながら、日本の河川流域では推定は極めて困難です。

図 2 も図 1 と同様だが、年平均に対するものを棒グラフで示しています。 時間平均が長くなると、推定精度は良くなり、この図でも推定精度が年々変動を 越える流域はオデール河だけになっています。

第1図

図 1: 陸面過程モデルで推定された月平均陸水貯留量の年々変動と衛星推定誤差の比。12ヶ月の 値を平均して示してある。ここで、陸水貯留量は陸面過程モデルの土壌3層の土壌水分量と 積雪水当量の和である。


第2図

図 2: モデルで推定された年平均陸水貯留量の年々変動(標準偏差;白)と 衛星推定誤差(灰色)。

参考文献



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