4 極夜ジェット振動と環状モードの関係

 それでは、PJOとAMとは一体どのような関係があるのであろうか。そもそもAM自体は成層圏とほとんど関係無いとされる夏でも対流圏に現れるので、対流圏主体の変動と考えるのが妥当であろう。他方PJOは成層圏極夜ジェットの変動であるから極夜ジェットが存在する冬季にしか存在せず従って対流圏主体のAMとは別の変動であろう。しかし、3章で見たように、冬季にはそれらはかなり強い相互作用を起こしているようである。そこで両者相互作用を起こしている冬季に両者がどのように関係しあっているかを調べてみることにする。

 そこで、3章で行った解析がいわばPJOの側に立ってそれに伴う各場の変動パターンを見たものであったことを踏まえ、今度はそれをAMの側に立って同様の変動を見てみる。北半球AMに関してはKodera and Kuroda (2000)はAOに対流圏型のものと成層圏まで伸びた対流圏成層圏結合型の二種類があることを示している。ここではPJOの解析と同様の手法で南北両半球を解析し両者を比較してみる。ここで興味があるのは、PJOとAMの結合過程であるので、環状期におけるAMの時間発展を調べた。環状期(北半球12/1月、南半球10/11月)のAMインデックスの回帰を図1と同様に示したものが図8である。図を見ると、北半球の環状期におけるAMの信号は高緯度側では中部成層圏付近、低緯度側も下部成層圏まで延びていることがわかる。しかも、この信号は前の月の上部成層圏まで広がっていた高緯度側の信号が降りてきているように見えるが、次の月にはほとんど信号がなくなっている。南半球側の環状期のAM信号を見てみると、こちらは高緯度側の信号は上部成層圏にまで達しているが低緯度側の信号は対流圏にとどまっている。時間的には、高緯度側の信号は2ヶ月前の成層圏にまでたどれるし、さらに1ヶ月後にまでも強い信号を持っていることは興味深い。つまり南半球環状期のAM信号は北半球よりさらに一段と持続性が良いと言える。

fig.8
図8、図1と同様。ただし環状期((a)北半球ではラグ1、(b)南半球ではラグ4)のAO/AAOインデックスに対する回帰図。(Kuroda, 2002より)

  さて、ここで環状期にはPJOとAMが良い相関を持っていたことを踏まえ、環状期のAM信号からPJO成分を統計的に除去して「純粋な」AMのみの立ち振る舞いを見てみることにする。PJO成分を除去した環状期のAM信号から得られた帯状平均東西風、E-Pフラックスの回帰を図9に示す。なおPJO成分の除去は次のようにする:規格化されたPJO 及びAMの時係数をs、rとするとPJO除去AMの時係数r’ は

r’=r -s

で定義される。ここに角括弧は時間平均を表す。このように定義されたr’とsには相関が無いことに注意する。なお、北半球では図1で示した第一モードのみならず時間遅れの成分である第二モードも除去した。

fig.9
図9、図8と同様。ただし図8のAO/AAOインデックスからPJOインデックス成分を統計的に除去したものとの回帰図。(Kuroda, 2002より)

 北半球をみると、環状期におけるAMにともなう風は図8のものに比べてずいぶん弱まり、また信号も低緯度高緯度とも下部成層圏までしか伸びなくなっている。しかし、対流圏のE-Pフラックスの極向きの振る舞いは以前とほとんど変わっていない。時間的な信号の変化をみると、前後の月での信号は非常に弱くなり持続性が悪くなりAMはほぼ環状期の月のみの変動となってしまった。実際、別の解析によってもPJOとの結合はAMの寿命を有意に延ばすことが示されている。他方南半球を見ると、環状期におけるAMに伴う東西風変動は高緯度側も弱まり対流圏内だけの物になってしまっている。また、時間的に前後の月に存在していた信号はほとんど完全に無くなってしまった。即ち、南半球環状期の(特に成層圏の)AM信号の持続性は、結合していたPJO信号のせいであったといえる。実際PJOとAMの相関がほとんど見られなかった月(北半球のN/D、南半球のA/S)に対してのAMのラグ相関を計算したところPJO除去のAM(図9)と同様の振る舞いが見られた。