1 はじめに

 対流圏と成層圏は、対流圏からのプラネタリー波の伝播が結果として成層圏の風の変化を作り、またそのような変化が対流圏から見たときの上部境界条件を変えるという意味で対流圏自体の場をも変化させる。このようにして対流圏と成層圏は結合しているが、最近このような力学的結合過程として北極振動(AO)、またはそれを南北両半球一般化した環状モード(AM)と呼ばれる変動モードの研究が盛んである(例えばThompson and Wallace, 1998, 2000)。この変動モードはその名が示すように、高度場で見た時に地表面から下部成層圏(または一説によると中間圏)までほぼ順圧的かつ帯状対称に伸びた変動モードであり、特に冬季には対流圏成層圏結合変動として強い振幅で現れると考えられている。Baldwin and Dunkerton (1999,2001)はこのような変動信号が冬季にまず上部成層圏に現れ、それが時間と共に下方へ伝播し、対流圏で北極振動を形成することを示している。このようにAMの理解には成層圏との関わり合いもまた重要である。

 ところで、南北両半球における成層圏の極夜ジェットの強度にはある種の規則的変動が見られる事が知られている(Kodera, 1995; Kuroda and Kodera, 1998)。実際、両半球ともに極夜ジェットの東西風偏差では時間と共に極向き下向きに移動していくような変動が卓越しており、この風変動には対流圏からの波伝播の変動が対応している。即ちこの変動も対流圏からの波による波平均流相互作用の結果としての変動と考えられる。北半球におけるこのような変動は準周期的な様相を示しているが、このような周期性は冬に固定した大気大循環モデルでもっと明瞭に示されている(例えばChristiansen, 1999)。興味深いことに、この以下極夜ジェット振動(PJO)とよばれる変動モードが時間発展していってあるステージになった時には南北両半球とも対流圏に環状モードが現れる傾向があることがわかった(Kuroda and Kodera, 1999; Kuroda and Kodera, 2001)。このことは、PJOもまた対流圏成層圏の相互作用にともなう変動であり、環状モードとPJOはお互い無関係な変動ではなく、何らかの意味で関係しあっている変動であることを示している。

 そこで、本論ではPJOがどのようなもので、どのようにAMと関係しあっているのかを最近の筆者らの研究(Kuroda and Kodera, 2001; Kuroda 2002など)をもとに論じることにしたい。