1 はじめに

 太陽活動に伴う気候変動の研究については長い歴史がある。しかし、比較的合理的な研究がなされるようになったのは衛星データ等の観測データ自体の蓄積が比較的十分になってきた20世紀も後半以降になってからである。また、この研究には炭酸ガス増加等人間活動に伴う気候変動を見積もる際には純自然起源の変動を知る必要があるということも大きな研究上の動機づけになっている。

 衛星観測データによると太陽の11年黒点周期変動に伴う太陽放射エネルギー変動は0.1%程度と非常に小さいものの、紫外線域の変動は数パーセント程度と有意に大きいこともわかってきた。実際、紫外線吸収が大きい上部成層圏では太陽黒点周期変動に伴う温度変動は1K程度にも及んでいることがわかっている。大気の力学=放射結合変動が大きな役割を果たしている成層圏ではこのような上層大気場の放射変動が成層圏変動の変調を引き起こすことによって下層大気の変動を引き起こしている可能性がある。

 Kodera(1995)は比較的短い観測データから太陽活動の高い時期と低い時期の季節進行の違いについて調べた。その結果、北半球の東西平均風の偏差場が秋から冬にかけて極向き下向きに移動する形で伝播してくることを見出した。さらに、Kuroda and Kodera (2002) やKodera and Kuroda (2002)は南北両半球で共通して波の伝播の変化を伴って偏差場が極向き下向きに伝播することを見出した。これらは比較的短い観測データの解析によるものであり、これをより確かめるためには大気大循環モデルを用いたモデル実験も望まれるところであったが、このような実験もいくつかのグループによって実際になされ、観測同様に下層大気に上層の変化が伝播してくる可能性が強く示唆されるようになってきた(例えば、Shindell et al., 1999; Matthes et al.,2004)。

 さらに、上述の平均場からの変動自体が太陽活動の変化に伴って変化する可能性も指摘されるようになった。Kodera(2002,2003)は北大西洋変動(NAO)が太陽活動に伴って変化する可能性について調べた。その結果、NAOに伴う変動は太陽活動が低いときには通常言われる北大西洋域のみにとどまるにも拘らず、太陽活動の高いときには影響範囲がユーラシア方向に広がり半球的な、いわゆる北極振動(AO)的なものになることを見出した。また、これに対応し太陽活動の高いときには平均東西風変動が上部成層圏まで伸びることを見出した。太陽活動に伴うNAO信号の持続性に着目したOgi et al. (2003)は、太陽活動の高いときには冬季平均のNAO信号に伴う変動が夏にまでもその持続性を維持する(より正確には、夏にAO的な変動が復活して現れやすい)ことを見出した。

 本研究ではKodera(2002,2003)、Ogi et al. (2003)の見出したような関係が南半球ででも存在するかどうか、もし存在すればその原因が何であるかを解き明かす事を目的とした。