成層圏



左括弧 はじめに 右括弧

季節予報では、人間の生活圏であり多くの生命体が棲息する 対流圏(地上から8〜18kmまでの層)での予測を 高精度で行なうことが必要です。 このために、対流圏での気象現象を把握するだけではなく、 成層圏(対流圏の上に位置し地上から約50kmまでの層)の現象 が対流圏に及ぼす影響を知ることも(特に冬季に)季節予報にとって、 海洋のエルニーニョ現象と同程度に 大事であることが分かってきました。以下にこのことの紹介をします。

左括弧 成層圏から対流圏へ 右括弧
第1図にある等値線は、 対流圏から成層圏にかけての、経度平均した東西風の 南北断面 (北緯20度から北緯80度)の風速偏差 (気候値からの風速のずれ)の時間変化の典型例を月別に示したもので 左から冬の1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目を示しています。 縦軸は気圧 (ヘクトパスカル;hPa) で示されており、 おおむね200hPa以高のところが成層圏、それ以下が対流圏です。

冬最初の1ヶ月目には (左端の図)、対流圏では特別大きな風速偏差が 見られませんが、北緯40度から60度にかけての成層圏上部で大きな負の 偏差が存在しています。 この風速偏差は2ヶ月目には(中央の図)、北向きに移動すると共に 対流圏まで広がって全体としては対流圏から成層圏までつながった 南で正、北で負のパターンになっています。 3ヶ月目(右端の図)には、負の風速偏差域がさらに下方へと移動し 変動の中心の場所が対流圏から成層圏下部へと移っています。

このように成層圏上部に存在していた風の偏差は対流圏へと降りて くる傾向があるのです。 図中の矢印は、大気中の波動伝播の方向とエネルギー 強度の偏差(気候的な伝播からのずれ)を表しています。 図を見ると、矢印は負の風速偏差の大きなところに向かっている事が分かります が、このことは、風速偏差は大規模な波の伝播によって維持されている事 を示してます。 図中色をつけた領域は、風速偏差が十分に大きく 統計的に有意である場所を表しています。

第1図
第1図.


第1図と同様のものを、対流圏の高度約5km (500hPaの高度に相当) で見たものが、 第2図です。各図の中心が北極で、日本は右上になります。 成層圏から下りてきたシグナルが、平面的にみるとどうなっているのかに注目する と、2、3ヶ月目には(中央と右端の図)、北極を中心とした変動の大きなところが現れ ています。 これと反対の符号をもつ場所が、東アジア域や北大西洋域にみられます。 図の2ヶ月目に見られるような北極を中心とした丸いドーナツ状の変動は現在「北極 振動」とよばれ北半球全域に強い影響をもたらす重要な変動と考えられています。

第2図
第2図.


以上紹介した変動は、 対流圏と成層圏の間の波伝播を通した相互作用の結果 引き起された変動であると考えられています。

ここで示した、「成層圏での発生したシグナルが、 約1ヶ月かかって対流圏まで下りてきて北極周辺の大気へ伝播する」という 性質を利用すれば現時点での成層圏の状態を把握する事によって 長期予報的な利用が可能になることが考えられ、 そのような観点からも現在研究が進められています。

参考文献

Kuroda, Y. and K. Kodera, 1999: Role of planetary waves in the stratosphere-troposphere coupled variability in the northern hemisphere winter, Geophys. Res. Lett., 26, 2375-2378. Click here for Full Paper
Kuroda, Y. and K. Kodera, 2001: Variability of the polar night jet in the northern and southern hemispheres, J. Geophys. Res., 106, 20,703-20,713. Click here for Full Paper

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