太陽活動の気候への影響



左括弧 はじめに 右括弧

太陽は長年にわたりほぼ一定した明るさで地球を照らしているように見えます。 しかし、全ての気象現象のエネルギー源は太陽からのエネルギーです ので、太陽の明るさの変化は気候変動に非常に大きな影響を持っています。 しかし、最近の衛星観測によりますと、少なくとも衛星観測が始まって からのここ数十年では、太陽光度の経年変化は非常に小さい ということが分かってきました。しかし、細かく見ると、太陽からの全放射 エネルギーは11年の黒点周期変化で約0.1%程度変化していることが 分かってきました。このように小さな放射エネルギー変化ですが、この 11年周期の太陽活動変化に伴い、気候に大きな影響が現れると いうことが分かってきました。以下にこのことの紹介をします。

左括弧 対流圏成層圏変動 右括弧

第1図は、北大西洋振動と言われる、ポルトガルリスボンと アイスランドの地表面気圧偏差の差を、冬季12、1、2月で 平均して作った指数と全球東西平均した東西風の相関を、 太陽活動が高い年(上の図)と低い年(下の図)で分けて、 2ヶ月平均場を2ヶ月ごとに示しています。ここで図は、左から DJ(12月-1月)からJJ(6月-7月)までを示しており、さらに 一番右側に冬季平均したものも示しています。このそれぞれの図で 縦軸は気圧 (ヘクトパスカル;hPa) で示されており、 おおむね200hPa以高のところが成層圏、それ以下が対流圏です。 また、横軸は緯度であり、左端が北緯20度、右端が北緯80度です。

太陽活動については、11年周期の黒点周期変動に対応して変動する 波長10.7センチの冬季平均したマイクロ波強度を元にして、 平均よりマイクロ波強度が強い年を太陽活動が高い年、弱い年を 太陽活動が低い年として分けています。なお一般に、太陽活動が高い年 ほど黒点が多くなる傾向があります。 図中色をつけた領域は、相関が十分に大きく統計的に有意である 場所を表していており、特に等値線は、相関を表し、0.5から0.1ごと に引いています。

図を見ると、太陽活動が高い年には北大西洋振動に関係した東西風の変動 は、冬季には上部成層圏までも伸びること、それに対して太陽活動が低い年 は、その変動はせいぜい対流圏内にとどまることが分かります。 また、地表面気圧の変動についても、図には示しませんが、太陽活動が 高い年にはその変動が半球スケールに広がり、いわゆる北極振動的になる のに対して、太陽活動が低い年は変動域がほぼ北大西洋域のみに限定される ことが分かります。

他方、変動の違いはそれだけに留まらず、夏季の変動の違いにも現れている ことが分かります。実際、太陽活動が高い年は引き続く夏季(6、7月) にも極域に対流圏から成層圏に延びる強い信号が認められます。それに対し 太陽活動が低い年にはそのような信号は認められません。 この太陽活動が高い年の夏季に認められる信号は夏の北極振動と呼ばれる ものに非常に良く似ていることが分かりました。

第1図
第1図.


第1図と同様にして、10月11月平均した南半球対流圏下層 の高度場から抽出された、南半球環状モードと呼ばれる半球スケールの変動の 指数を使って南半球の全球東西平均した東西風の相関を示したものが図2です。 但し、図2では1ヶ月平均の場を10月から2月まで1月ごとに示しており、 縦軸は図1と同様に気圧で示した高度ですが、横軸は南半球の緯度であり、 左端が南緯20度、右端が南緯80度です。

図を見ると、北半球と同様に、太陽活動が高い年には南半球環状モードに 関係した東西風の変動は、12月までは上部成層圏までも伸びること、 それに対して太陽活動が低い年には、その変動は対流圏内にとどまる という違いが現れていることが分かります。

また、変動の違いは北半球ど同様に夏季の変動の違いにも現れている ことが分かります。実際、太陽活動が高い年は引き続く夏季(1、2月) にも成層圏を中心とした信号が対流圏まで延びていますが、 太陽活動が低い年にはそのような信号は認められません。

第2図
第2図.


この研究で用いた指数は、北半球では冬季平均した北大西洋振動指数、 南半球では10、11月平均した南半球環状モード指数と異なっていますが、 南北両半球のそれぞれの時期は、気候学的には「活動期」と呼ばれている、 対流圏と成層圏の結合が各半球では1年の間で最も強まる特別な時期に当たっており、 また、北大西洋振動、南半球環状モードはそれぞれの半球で対流圏成層圏 の結合の影響を特に強く受ける変動と考えられている特別な変動です。

以上紹介した太陽活動に伴う変動の違いは、紫外線強度の変化に伴う (太陽活動が高い年は、低い年に比べて紫外線強度はおおよそ5%程度強まる) 対流圏と成層圏の間の波伝播の違いや、下部成層圏のオゾン量の変動 に伴って生まれているものと考えられています。

ここで示した、太陽活動に伴う気候変動は、冬季から夏季への有用な 情報の伝播経路であり、光化学反応を含むモデルを用いることにより 長期予報的な利用が可能になることが考えられるため、 そのような観点からも現在研究が進められています。

参考文献

Kodera, K. (2002), Solar cycle modulation of the North Atlantic Oscillation: Implication in the spatial structure of the NAO, Geophys. Res. Lett., 29(8), 1218, doi:10.1029/2001GL014557. Click here for Full Paper
Ogi, M., K. Yamazaki, and Y. Tachibana (2003), Solar cycle modulation of the seasonal linkage of the North Atlantic Oscillation (NAO), Geophys. Res. Lett., 30(22), 2170, doi:10.1029/2003GL018545. Click here for Full Paper
Kuroda, Y., and K. Kodera (2005), Solar cycle modulation of the Southern Annular Mode, Geophys. Res. Letters, 32, L13802, doi:10.1029/2005GL022516. Click here for Full Paper
Kuroda, Y., and K. Shibata (2006), Simulation of the Solar-cycle modulation of the Southern Annular Mode using a chemistry-climate model, Geophys. Res. Letters, 33, L05703, doi:10.1029/2005GL025095. Click here for Full Paper

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