わたしたちが研究している「気候」とは?

 

1.用語の違い

「今日の○○は晴れです」、「最近は不順な○○が続いています」、「冬の日本海側と太平洋側で○○は異なります」と言うとき、○○には「天気」「天候」「気候」のどの用語が適切でしょうか?

 「気象の事典(平凡社)」によると、「天気」は「ある時刻または時間帯の気象の状態。時間帯としては、数分からせいぜい23日程度」、「天候」は「数日間以上にわたって,同じような天気状態の移り変わりが続くとき」、「気候」は「通常は数十年間という大気の総合した状態の移り変わり」と説明されています。つまり、「今日の○○は晴れです」の○○は今日1日程度のことを表す「天気」が、「最近は不順な○○が続いています」の○○はここ数日間のことを表す「天候」が、「冬の日本海側と太平洋側で○○は異なります」の○○はもっと平均的な状態を表す「気候」がそれぞれ最適な用語だということになります。ちなみに、「気象」という言葉は、先の「気象の事典(平凡社)」では、これらをまとめた「大気の状態や大気中でおこる全ての現象」と説明されています。

 

2.気候の比較

では、6月は、東京と札幌ではどちらが暖かいでしょうか?

ほとんどの人は「東京の方が暖かい」と答えるでしょう。それはふだんの生活や経験を通して、札幌よりも東京の方が南に位置し、暖かいことを知っているからですね。このとき、わたしたちは「気候」の1要素である「6月の平均気温」を無意識に比較したことになります。

もちろん、ある特別な日や時刻における気温を考えると、札幌の方が暖かいことがあります。例えば、2009625日の最高気温は札幌で31.2℃、東京は28.2℃と、札幌の方が高くなっています。しかし、この日1日を平均した気温は札幌で23.5℃、東京で24.9℃と、東京の方が高くなっていますし、この年の6月全体を平均した気温は札幌で17.5℃、東京で22.5℃でした。

このように、短期間ではなく長期間平均して比べてみて初めて「東京は札幌よりも暖かい」という20096月の「気候」の違いが分かるのです。

 

3.平年値

しかし、それでもこの年の6月がたまたま東京の方が暖かかっただけ、もっと長い期間で調べると逆なのかもしれません。

そこで、札幌と東京の「気候」をより厳密に比較するためには、両者のさまざまな気象要素における基準値を定義しなければなりません。気象庁は、この基準値のことを「平年値」といい、30年分の値を平均した値として定義しています。個々の年の値だけを見ると、暑いとき、寒いときと、年によって関係がばらつくことがあるのですが、30年分を平均してしまうと、このようなばらつきが消えて、そもそもその場所に現れ得る本質的な値が見えてくるのです。この「30年分」ですが、現在は「1971年から2000年までの30年分」と決められています。また、10年ごとに期間を更新することになっており、2011年には「1981年から2010年までの30年分」として定義されます。

つまり、6月の平均気温の場合、平年値として1971年から2000年までの30個の6月の平均気温の平均値が6月平均気温の平年値となるのです。この6月平均気温の平年値は、札幌で16.3℃、東京で21.8℃ですので、これでようやく「6月は、東京は札幌よりも暖かい」という「気候」の違いが確認されました。

 

4.「気候」の特徴

さて、このような「気候」は、1か月間だけでなく、5日(半旬)、10日(旬)、季節、1年、数年、10年、30年と、さまざまな期間で平均され、使い分けられています。また、要素も、気温や降水量といった地上で観測されるものだけでなく、海面気圧や500hPa高度、海面水温など大気や海洋の状態を表すものまでさまざまな種類があります。これらの「気候」を調べることで、短期的な影響を取り除き、期間をとおしてより持続的であった特徴や影響などが分かるのです。

また、長期間平均した状態である気候は、太陽の活動、地球上の地形、植生分布、火山の噴火など気象外による現象・状態や、北極振動やエルニーニョ現象など待機や海洋に内在する変動による現象の影響を大きく受けます。また、森林伐採、砂漠化、都市化、大気汚染物質の排出など人間活動も気候に大きな影響を与えます。地球温暖化はその一例であると言えます。

図:気候に影響を与えるさまざまな要素の概要

出典:IPCC4次評価報告書第1作業部会報告書 概要及びよくある質問と回答(気象庁,2007b

http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/ipcc_ar4_wg1_es_faq_chap1.pdf