環境・応用気象研究部で進められている研究



第1研究室

大気オゾンに関する研究

Atmospheric Ozone

 大気中にあるオゾンのほとんど(約90%)は上空の成層圏にあってオゾン層を形成し、太陽から来る有害な紫外線を吸収して地球上の生物を守っています。
 しかし、近年、人間が作り出したフロンガス等が成層圏に運ばれ、オゾン層を破壊する現象が起こっています。その顕著な例が南極のオゾンホールです。オゾン層の破壊をくいとめるため、フロンガスの規制が国際的な合意のもとで行われています。今後は、その効果を監視し、予測をすることが重要となっており、オゾン層に関する研究をさらに進めることが必要です。
 オゾン層の監視と予測の精度を向上させるためには、オゾン層に関する観測、データ解析、数値モデルの開発・改良等が重要です。このため当研究室では、オゾン層の精密な遠隔観測、南極オゾンホールのデータ解析、オゾン層変動に関する数値モデルの開発等を進めています。


全オゾン量(単位はドブソンユニット)の観測と数値モデルの結果の緯度-時間断面での比較。(上図)衛星観測(TOMS)、(中図)モデルの風に気象庁の客観解析によるナッジングした場合、(下図)ナッジングを行なわない場合。

(写真:北西太平洋上空でのPACE-7航空機観測)

エーロゾルの粒径分布に関する研究

Study of Aerosol Size Distribution

 エーロゾルの気候への影響評価のためには、エーロゾルの濃度・粒径分布の広域 的な空間分布の情報が必要ですが、まだその実態が解明されていません。このため、 航空機による対流圏での観測(メルボルンから仙台、サイパンからアンカレッジ等) を行い、地球規模でのエーロゾル濃度・粒径分布を調べています。2000年2月に は、アジア大陸からのエーロゾルが北西太平洋上空でどのように分布しているかを那 覇、硫黄島、サイパン上空11kmまでの高度で調べその実態を明らかにしました。ま た、バックグラウンド海洋大気でのエーロゾルの濃度・粒径分布を調べるため、夏期 に南鳥島での観測を行っています。これらの観測により、エーロゾルの濃度・粒径分 布の実態とその変動過程を解明することを目的にしています。


第2研究室

大気環境に影響する大気物質循環に関する研究

Transport Modeling of Atmospheric Constituents Capable of Forcing Change in Atmospheric Environment

 人間活動の拡大に伴い、大気中に様々な物質が排出されています。その結果、大気汚染や地球温暖化等の環境問題が発生しています。また、大陸の乾燥地域で発生するダストは社会経済に被害を与えるだけでなく、我が国を含むアジア地域の大気環境にも影響を与えています。大気環境を保全するためには、信頼性の高い大気環境に関する監視と予測が必要であり、これを支援する研究開発が重要です。二酸化炭素、オゾン、エーロゾル、大気汚染物質等の発生から、輸送中の変質、地表への沈着までの過程を取り入れた数値モデルを開発し、都市の汚染から地球的な環境汚染まで精度よく再現し、予測するための研究を行っています。大気中に排出される物質のなかには地表から高度約1kmまでの大気境界層の中で輸送、変質、沈着するものがあり、このような過程は都市汚染等では重要であるため、この過程の研究を野外実験や室内実験により進めています。


汚染物質の長距離輸送(モデル計算結果)
チェルノブイリ原子力発電所事故によって放出された沃素131の大気中濃度分布(1986年5月5日)

第3研究室

我が国の気候変化を予測する地域気候モデルの開発

Development of Regional Climate Model for Predicting Climate Change in Japan

 地球温暖化に伴う我が国の気候変化について信頼性の高い予測情報が求められています。精度よく予測するためには、地域気候モデルの高度化が必要です。高度化のためには、大気と地表面との間で起きる熱、水、二酸化炭素等の循環過程を明らかにし、信頼性の高い過程をモデルに導入する必要があります。二酸化炭素の循環過程を明らかにするため、二酸化炭素循環モデルを用いた研究を行っています。また、熱や水の循環過程を明らかにするため、野外観測やこれらの過程を正確に取り扱った陸面過程モデルや水循環過程モデルの開発等を進めています。このようにして得られた過程をモデルに導入し、地域気候モデルの高度化を進めています。  地域気候モデルは、また、気象災害を引き起こす霧ややませの研究や降水や積雪等の水資源の変動等に関連する研究にも利用されています。

夏期における大気中二酸化炭素の植生による吸収域


第4研究室

エーロゾルの組成に関する研究

Study of Aerosol Composition

 大気中に浮遊するエーロゾル(微粒子)は太陽からの光を散乱したり吸収したりします。また、雲の形成に必要な物質として働き、気候や気象に大きな影響を及ぼしています。エーロゾルは、海や土壌、工場や自動車等から発生し、その後大気中で種々な反応により変質を受けます。このため、エーロゾルは時間的、空間的に濃度、粒子の大きさ、物質の組成等が大きく変動します。このような変動はその複雑さのため、科学的にまだ充分には解明されていません。  信頼性の高い地球温暖化予測を行うためには、エーロゾルが気候に与える影響の評価が不可欠ですが、エーロゾルについては未解明な部分が多く、研究の推進が期待されています。エーロゾルの組成を明らかにするため、航空機による観測や孤島(南鳥島)や山岳(富士山山頂)での観測を実施しています。また、観測で得られた試料は電子顕微鏡を用いた分析により、粒子毎にその物質と組成が明らかにされつつあります。さらに、エーロゾルが水蒸気等との反応により変質する過程を明らかにするための室内実験を行っています。これらの研究により、エーロゾルが 気候に及ぼす影響が明らかになり、地球温暖化予測の高度化が期待されています。



大気と陸面間の物質・熱交換過程に関する研究

Study of Mass and Heat Exchange between the Atmosphere and Land Surfaces

 地表面と大気との間で起きる水蒸気(及び土壌粒子)及び熱の交換過程を明らかにするため、草地、森林、 沼地、砂漠等多様な地表面で観測的研究を行っています。平成12年度から は中国の乾燥域(タクラマカン砂漠等)での観測を集中的に実施しており、砂漠乾燥 地域の水収支、熱収支に加えて鉱物粒子の飛散などに関する成果が得られています。


(写真:タクラマカン砂漠に設置された自動気象観測装置)



研究部のページへ