大気中には非常に小さな粒子状の物質が浮遊しており、地球の環境や気候に対して大きな影響を及ぼしています。 このような微小な粒子はエーロゾル粒子と呼ばれています。 エーロゾルの発生源としては、砂塵嵐による鉱物粒子の飛散、海面からの飛沫、火山噴火、森林火災、植物の生命活動などの自然によるものの他、化石燃料の燃焼などの人間の活動によるものもあります。 エーロゾルによる身近な現象としては、春によく観測される黄砂が挙げられます。 黄砂は、東アジアの砂漠域から強風により大気中に舞い上がった鉱物粒子がエーロゾルとして浮遊しつつ落下する現象です。 黄砂現象に見られるように、エーロゾルは視程の悪化や呼吸器疾患のような大気汚染問題を引き起こし、人間の社会と健康とに被害を及ぼす可能性があります。
またエーロゾルは大気放射を散乱・吸収することや、雲粒核として作用し雲の光学的特性を変化させることを通じて、地球の気候にも影響を及ぼします。 地球温暖化などの気候変動を予測するためには、エーロゾルによるこのような影響を評価する必要があります。
当研究室では、Model of Aerosol Species IN the Global AtmospheRe (MASINGAR) と呼ばれるエーロゾルの数値シミュレーションモデルを開発し、エーロゾルの調査や評価、気候への影響を研究しています。
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| 図1.MASINGARによってシミュレートされた2002年11月12日の東アジアにおける黄砂の3次元的な表示。黄色い部分は黄砂の濃度が高い部分を、オレンジ色の線は高度約3000mの風の流線を示す。 図の地形は海の部分は青、海抜高度約500m以下は緑、約2500m以上は 灰色で示している。 | |
気象庁では2004年1月から気象情報やインターネットを通じて黄砂現象に関する情報を提供しています。 この黄砂情報では、黄砂現象の観測された地点と、黄砂現象の数値予報結果が提供されています。 この黄砂の数値予測には、エーロゾル輸送モデルMASINGARが用いられています。
図1はMASINGAR による黄砂のシミュレーションの一例を示しています。 黄砂はゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの東アジアの乾燥地域で、強風によって舞い上がります。この事例では、低気圧に伴う強風によって黄砂が中国から日本まで運ばれる様子が示されています。
図2はシミュレートされたエーロゾルによる放射収支への影響の年平均値を示しています。 硫酸塩・有機炭素・海塩は地球を冷却する方向に、黒色炭素(すす)は加熱する方向に作用しています。 鉱物ダスト粒子は砂漠や雪氷、雲の多い地域など反射率の高いところでは地球を加熱し、 海上や森林など反射率の低いところでは地球を冷却する方向に作用しています。 硫酸塩や黒色炭素・有機炭素エーロゾルは工業など人間の活動に起因するものが多いため、ヨーロッパや北米、東アジア地域で影響が大きくなっています。 地球全体で見た場合、エーロゾルは合計すると地球を冷却することが示されています。 しかし放射への影響には顕著な地域差が見られるため、これが地域的な気候への影響の差異を引き起こす可能性もあります。
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| 図2.シミュレーションによる大気上端でのエーロゾルの放射への影響の年平均値 (単位は W m-2)。図中の括弧内の数値は全球平均値。 | |